エジプトの『ギルフ・ケビール』に行ってきました。
ギルフ・ケビールってなに?という方のために少し説明しますと、エジプトの南西部の隅、リビア&スーダンとの国境付近に拡がる台地のことなのですが、人が暮らしているいずれの街からも遙か遠く、「世界の果て」ともいわれている地域です。大きさはスイスとほぼ同じという巨大な台地で、エジプト国土の3分の1にもあたる西方砂漠の、またその中で世界有数の砂の砂漠と言われている「グレート・サンド・シー」を越えた場所にある砂漠の最果ての地です。アカデミー賞8部門受賞の映画「イングリッシュ・ペイシェント」の舞台として有名になり、劇中にも登場して強烈な印象を残した岩絵「泳ぐ人」で知られることとなった場所です。
私自身、西方砂漠やグレート・サンド・シーの北&東の部分には足を運んだことがありましたが、このギルフ・ケビールには足を伸ばしたことがなく、初めての訪問となりました。エジプトと言えば古代遺跡であまりにも有名ですが、その遺跡にも負けない魅力がある、素晴らしく美しい砂漠があるとは思いませんでした。正直言って、私の想像をはるかに超える、魅力あふれる地域でした。「泳ぐ人」があまりにも有名なため、ツアーへのご参加者募集に際しては、岩絵を前面に押し出したパンフレット等を作成しましたが、もちろん岩絵は素晴らしかったものの、実際の見所は砂漠そのものという感があります。
私の経験から、砂漠はニジェールのテネレかチャドの北部が極めつけ、と思っていたのですが、エジプトのグレート・サンド・シー、特にその核心部はそれに勝るとも劣らない雄大さと美しさを湛えていました。しかも砂丘だけが延々と、というような単調なものではなく、大砂丘の連なり、奇岩、そそり立つ岩山、ワジ(涸れ谷)に残された僅かな緑など、次から次へと変化し、飽きさせてくれません。なかには、3日間走りに走っても砂色と青空しかない、というような砂原もありましたが。今回のツアーでは砂漠のテント泊が10泊もあり、砂漠が初めてのお客様には飽きられてしまうかもしれない、という懸念もありましたが、その変化に富んだ道行は飽きる暇もなかったのではないかと思います。
メインが逆転して岩絵がおまけのように感じてしまいかねなかったのですが、2002年に発見されたフォッジーニ・ケイブのものは保存状態も素晴らしく、「泳ぐ人」を含め、ユニークな肢体と繊細な筆使いをじっくり堪能することができました。
その他、砂漠の石でもここでしか見つからない有名な天然ガラス、シリカグラスをはじめ、面白いものが多く、カンブリア紀から白亜紀の地層が剥き出しになっているこの台地ならではという感じがしました。
ギルフ・ケビールまで3日半、ギルフ地域滞在が3日半、グレート・サンド・シー3日という感じで、辿りつくまでかなり時間がかかるため、ツアー自体も長丁場になります。ですが、ドライバーさん、コックさんともにエキスパート揃い、かつエンターティナーで、食事も毎食美味しく、キャンプ自体もかなり楽しめます。砂漠ではキャンプ地のロケーションがとても重要なりますが、もちろんぬかりなく毎日素晴らしいキャンプ地で眠る機会を作ってくれました。
3月末からはハムシーン(砂嵐)が吹き荒れ始め、夏場は灼熱の地となりますので、安全&快適に旅行ができるのは11月~3月上旬の間。期間限定ですが、今年もツアーを設定しますので、砂漠好きの方は是非ご参加をご検討ください!瞳の色がサンド・ベージュ色になってしまったのか?と錯覚してしまうくらい、徹頭徹尾砂漠を堪能できること間違い無しのツアーです。
羽鳥