ご報告が半年近く遅くなってしまいましたが、昨年末から年始にかけて、弊社のツアーで最長の砂漠旅、『ギルフ・ケビール遠征隊』の添乗でエジプトに行ってきました。2011年1月に革命がおき、軍による臨時政府が政治を執り行っている状況で、デモが毎日のようにおきているエジプトでしたが、革命につながるデモの舞台となったカイロ中心部のタハリール広場付近を除いて、カイロの街は通常通り平穏でした。タハリール広場の周辺にはいまだに座り込みを続ける人や、拡声器でスピーチを行なっている人々など、TVで報道された革命を思い起こさせる光景も見られました。反面、西方砂漠は静寂そのもの。砂漠のど真ん中は人が暮らしていないので静かなのが当たり前ですが、オアシスでもいつもどおりの人々の暮らしがありました。
2010年の11月以来、2度目のギルフ・ケビール訪問でしたが、年末年始のエジプトの砂漠は非常に寒く、日中も車外に出ると冷たい風を浴び、長く外のとどまることができないほど。朝晩の食事の際も冷え込んで星空の下で皆さんと談笑、とはいかないくらい寒かったです。
それでもサービス精神旺盛な砂漠の男たち(ドライバーやコック)のお陰で、毎晩焚き火を囲み、ポリタンクを太鼓に見立ててのショータイムを楽しんだり、年越しを花火とともに祝ったりして楽しめました。私は砂漠のスタッフ達の顔が、砂漠に入った瞬間に生き生きとし始めるのを見るのが、毎回楽しみでなりません。おそらく何百回も訪れている砂漠ですが、カイロに比べるとはるかに静かなオアシスも彼らに言わせると「街はうるさい、静かな砂漠はいいもんだよ」ということになるようです。そんな現地スタッフ達とは正反対に、警備のために同行する警察官と軍人さん達が「仕事とは言え、砂漠には長くいたくない、早く街に帰りたいよ」と話していたのは面白かったですね。都市部はデモのために治安が多少悪化し、観光客もかなり減っていましたが、砂漠は反対に観光客が増えているようで、ギルフ地域では轍を滅多に見ないのですが(一度轍ができると、消えるまで百年単位の時間がかかります)、今回はかなり多くの轍を見ました。
素晴らしい岩絵も相変わらずで、世界遺産に指定されるのも時間の問題でしょう。何箇所かある岩絵のうちワディ・スーラにある「泳ぐ人の洞窟」の岩絵は損傷と風化が激しく、早急な保護措置が必要と思われますが、2002年に発見されたフォッジーニ・ケイブの岩絵は、12000年前に描かれたとは思えないほど、躍動感に溢れ、鮮やかなオーカー(ベンガラ)の色もくっきりと残っています。一方、岩絵以外の目玉のひとつである天然ガラス「シリカグラス」は、おそらく訪れる観光客がどんどん拾って持ち帰ったのでしょう(禁止されてはいますが・・・)、見つけるのも一苦労なくらい減ってしまっていました。※日本で開催される「ツタンカーメン展」で、ここで拾われたシリカグラスをはめ込んだネックレスを見ることができます。
今年度も10月から3月にかけて、4回のツアーを設定しました。、西部&北部アフリカパンフレットの表紙写真もギルフ・ケビールで撮ったものです。エジプトでは6月に革命後初の大統領選が控えていますが、選挙が終われば完全に落ち着きを取り戻すでしょう。何より、観光業に携わる人々があまりにも多すぎて、早く安定させないと経済がどうにかなってしまうかもしれませんので盛んな観光の復活は時間の問題だと思います。
それにしても、昼食を取るために通りかかったピラミッド前は信じられないくらいガラガラでした。いつもは大型バスで渋滞しているのが普通の光景です。実際には見ていませんが、今エジプトに行ってピラミッド観光をすれば、朝早く並ばなくてもクフ王ピラミッド内部への入場券が簡単に購入できると思います。人でごった返すルクソールのハトシェプスト葬祭神殿、王家の谷なども、ゆったりと時間をかけて細かく見られるはずです。少々不謹慎かもしれませんが、エジプトをゆっくり・のんびり観光するのであれば、今が行き時かもしれません。
羽鳥