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2013.02.08発 エチオピア ダナキル砂漠訪問ダイジェスト10日間 前編

エチオピア北東部、アフリカ大地溝帯の海抜下一帯に広がるダナキル砂漠へ行ってきました。
砂漠というと、地平線まで続く砂丘と、ポツッと点在する緑のオアシスが真っ先に思い浮かびますが、ここではその既成概念が完全に覆されるのではないでしょうか。
地上で最も過酷と言われる灼熱の砂漠地帯では、今なお活発に地球の内部が溢れ出し、地上では驚異の光景が作り出されています。
そして遥か遠い昔から、この地で塩の交易を続けている砂漠の遊牧民、アファールの人々。彼らのラクダのキャラバンが延々と続く様子に、今も昔も変わらない、日々の繰り返しを彷彿とさせる世界を垣間見ることができるのだと思います。

ダナキル砂漠への旅の起点地は“メケレ”。標高2000m、高原のさわやかな風が心地よいエチオピア第2の都市です。ここから半日かけて一気に海抜マイナスエリアへ駆けくだります。

メケレのマーケットを見学し、点在するティグレの人々の家を見学させてもらいながら車を走らせると、点々と見えていた木々が徐々にまばらに、そして風がジワジワと生暖かく埃っぽくなり、いくつものラクダのキャラバンを見かけるようになってきます。風景や人々の営みの移り変わりが、砂漠に近づいていることを教えてくれます。
この旅では途中の村々で、入域許可申請や警官同行の手続き等が必要になってきますが、昨今まで、この地が天然資源開発や隣国との政情問題等のため、観光客が踏み入ることのできない地であったことを考えると致しかたないのでしょう。その点でも、ダナキル砂漠は文字通り、未知の世界であることを裏付けられているのだと実感します。

最初のベースキャンプ、アーメド・エラに到着。岩と砂だけの殺伐としたアファールの人々の村です。見どころの一つ、ダロール火山と塩の奇岩群、塩の切り出しのために何日もかけてやってくるラクダのキャラバンだけが行き交う“不毛の地”です。日本から、はるばるこんな所までやって来てしまったかぁ、そんなことを思わせる何もない静かな場所。日が暮れるとただただ風の音しか聞こえません。しかしそれが、翌日からの3日間に期待を膨らませるのです。

朝食をしっかり取った後は、高さ50mほどの溶岩からなるダロール火山の登山に出発です。登ると言っても緩やかな丘陵をゆっくり歩いていく感覚なので、辛くはありません。ただ、陽が高くなるにつれて暑さだけが堪えてきます。水分補給は必須。さまざまな不思議な地球の産物を見学しながら30分ほど歩くと頂上に到着します。
頂上と言っても海抜マイナス45m、地上で最も低い火山です。山頂部分はクレーターになっていて、その箱庭には、赤から黄色、緑までの極彩色な驚異の景観が広がります。まるで毒々しい花畑のような派手やかな蛍光色の世界。ここはどこか他の惑星か?と錯覚してしまうくらいの異様な色彩を放っています。砂漠でこんな光景を見るなんて…。

常時、フツフツと熱湯の水蒸気が噴出していますが、そんな状況でも、1ヶ月前とは確実に色彩が異なります。今回私が訪れた2月は乾季も終盤を迎え、水分が蒸発しきって赤や茶色の褐色が目立つ時期でした。しかし、たった1ヶ月前では緑色がもう少し目立つ、瑞々しい景観だったのです。

この辺りは海抜下ということもあり、過去数回、紅海から海水が流れ込んだことがありました。そして、水分が蒸発し塩の大地が形成され、その層は約1000mにも及ぶと言われています。雨季に降った雨は塩分と共に地中に染み込み、地熱で熱せられることによって地球内部の硫黄、カリウム、その他ミネラルを吸収しながら地表へ噴出、火山活動とミネラルが相まってこのような極彩色で不思議な形の大地を作り上げています。草木以外で、自然であって自然では考えられないような奇抜な色合いの地球の産物。人類の歴史をずっとさかのぼった時代から繰り返されているサイクルなのです。

こちらは、ソルト・ビルディングと呼ばれる塩の奇岩群。厚い塩の層が隆起し、長い年月をかけ風化、浸食され残った部分がまるでビル群のようにそびえたちます。高さ50mほど。これで明りが灯れば、まさに摩天楼です。

日中45℃の炎天下、アファールの人々が塩の採掘に精を出していました。切り出した塩の塊は、全て同サイズの長方形に整えられていきます。サイズを計ることなく、感覚として身に付けてしまっているのが驚きです。1ブロックは10kg近くあり、それをラクダ1頭に20個以上積み、何百メートルも続く列を成し、数日かけて町へ移動していきます。このような過酷な塩の運搬は、ラクダだけがなせる業。道路事情が多少整ってきた現在では、途中からトラック等での運搬も行っているようですが、それでも塩の切り出しから道なき道を運ぶメインの作業は、アファールとラクダだけに許された特別な仕事なのです。

そして、こちらは観光客である我々のキャラバン。
厳しい自然の中では、人間一人では生きていけない、そんなことをアファールの人々とラクダの姿に思い知らされたひと時でした。

今野

道祖神