『クロヒョウ』、遺伝子の異常(欠落?)が原因で生まれる、正常体では黄色の体毛に斑点模様が特徴のヒョウの「黒変種」のことですが、ヒョウが生息している場所であればどこでも、いつでも出現の可能性はあり、有名なのはインドやスリランカで、植生が密で太陽光が遮られることの多い、どちらかというと薄暗い自然環境、いわゆる森林や密林の環境で発生率が高くなると考えられているようで、サバンナや比較的ひらけた疎林帯の多いアフリカでは非常に稀なケースでした。
ケニア中央部のやや北寄りに位置するライキピアで、このクロヒョウの出現が確認されたのが2019年、当時からケニア国内のみならず、野生動物が好きでそちら方面にアンテナを張っている世界中の人々の間では大きなニュースとして取り上げられていました。ただ、色々と調べてみると、当然クロヒョウの生息個体の数は少なく(当時は1頭ないしは2頭といわれていました)、テリトリーを強固に保持するヒョウの生態特性上、チーターやリカオンのようにあちこち縦横無尽に動き回ることはなく、ライキピアの中の限られたエリアに留まっているであろうことは予想できましたが、それでも広大なエリアの中で1~2頭という希少なクロヒョウを探して、観察し、撮影するなんていうことをメインの目的に据えて、果たしてツアー化できるだろうか?という点が大いに疑問で、ツアー化することはなく、しばらく様子見ということで静観していました。
風向きが変わったのは2023年頃、ツアー担当の私のサファリガイド時代の個人的友人や当地のロッジのスタッフ自身からの情報提供により、どうやら同エリアには最低でも6頭、最大で8頭のクロヒョウが生息しており、そのうち1頭は人間やサファリカーにかなり慣れており、サファリカーのエンジン音を聞いて逃げることもなく、人前に姿をさらすことに対してもあまり神経質ではなく、遭遇できる可能性はかなり高いらしいという情報を得て徐々に真剣にツアー化を考えるようになりました。ケニアといえば弊社の創業当時からサファリツアーを手掛け、最も多くのお客様をお送りし、現地事務所を置いているアフリカでの本拠地であることから、パイオニアを自負している身としては、やはりツアー化すべきという考えの元、2025年の特別企画として企画したのがこのツアーです。
ライキピアという場所自体、有名なマサイマラ国立保護区やアンボセリ国立公園と比較して圧倒的に知名度も低く、日本からのお客様が多く訪れる場所ではありませんが、昔から野生動物の生息密度が高いことは知られており、エリア内には個人や自然保護団体が所有する私営保護区が点在し、南アフリカのクルーガ-国立公園周辺の私営保護区やボツワナでと同じようなスタイルの、最低限のオフロード走行やナイトサファリを含むサファリが可能なことは知られていました。今から30年近く前に何度か足を運んだことはありましたが、日本からのパッケージツアーの行き先として選択するという考えは長い間頭に浮かばず、クロヒョウの出現をきっかけとしてこのライキピアに加えて、赤道以北に位置するサンブル国立保護区を組み合わせてツアー化できたのは、弊社としても大きな収穫でした。
さすがにケニアを代表するマサイマラ国立保護区と比較しますと、野生動物の生息数や種類の多さは劣りますが、それでも印象的には僅かなもので、代わりによく知られた野生動物の別種、赤道以北に生息している種の個体がいくつも見られ、サファリカーですごく混雑しているということもなく、比較的ゆっくりと野生動物観察を楽しむことができる地域です。標高が低いため、暑さと乾燥、ホコリっぽさが最大の敵といったところでしょうか。
初めてのツアー企画でしたが、結果的にライキピアではGIZA MUREMBO(スワヒリ語で「美しき黒」という意味)と名付けられたメスのクロヒョウとは何度も遭遇、闇夜のハンティングを複数回目撃し、今年生まれた2頭の子ヒョウたちにも出会えました。それにとどまらず、ケニアでは滅多に遭遇することのなくなったリカオンの群れ、陽の光の元では滅多に遭遇できないシマハイエナ、クロヒョウ以外のオス・メスの普通の色と柄のヒョウ数頭、ライオン、グレービーシマウマ、アミメキリン、長大な牙を持ったゾウとその群れとの遭遇など、非常に大きな収穫でした。せっかく赤道以北に足を伸ばすのであればと組み合わせたサンブル国立保護区では、ライキピアで見ることのなかったチーター、オリックス、ゲレヌク、また両地域を通じて数多くの美しい鳥たちも観察・撮影でき、私自身ケニアを訪問するのは2018年以来7年ぶりでしたが、訪問前の期待をいい意味で思い切り裏切る、非常に実りの多いサファリとなったと思います。
前置きが長くなりましたが、以降はツアー中に撮影した写真をご覧いただいて、添乗員レポートに代えさせていただきたいと思います。
行程はナイロビから軽飛行機でケニア山の西の麓のナニュキへ空路移動、そこから陸路ライキピア(正確にはオルドイニョ・レンボロ)のロッジに移動。ここではクロヒョウ探索をメインに4泊して私営保護区でのサファリを楽しみ、その後再び陸路ナニュキへ移動。ナニュキでナイロビからのサファリカーに乗り換えて北上し、サンブル国立保護区のロッジに移動し2泊、最後は陸路で一気にナイロビへ戻る、という行程です。
まずは、まだあまり日本からの観光客に走られていないライキピアのオルドイニョ・レンボロから。
オルドイニョ・レンボロの絵私営保護区でたっぷりサファリを楽しんだ後は、サンブル国立保護区へ移動。ここでの目当てはオルドイニョ・レンボロではほぼ見られないチーターです。
弊社が長年手掛けているケニアを目的地にしたものでは、珍しく初めての試みとなったツアーでしたが、結果的にサファリの内容としては大成功となったのではないかと思います。ライキピアのキャンプ(テント式ロッジ)はクロヒョウを一目見ようと世界中から訪問客が殺到している状況で、かつ雨季はクローズしますので比較的狭き門となっています。来年も同時期にツアーを企画しており、既にキャンプのお部屋は押さえていますが、現段階で残室1となっています。
2027年の予定はまだありませんので、クロヒョウに限らずケニアでボツワナのようなサファリがしてみたかった、赤道以北のちょっと珍しい亜種も見てみたい、という方はぜひこちらのツアーへのご参加をご検討ください。
道祖神 羽鳥