Africa Deep!! 60 30年ぶりに再訪したカメルーンで山に登る

カメルーン山に登ってきた。西アフリカ最高峰4095メートル。カメルーンは1987年に訪れて以来の訪問だから、実にちょうど30年ぶりということになる。あのときも山に登るつもりで山麓のブエアという街にやってきた。ところが季節は雨季の真っ只中だったので、朝から晩まで豪雨。安宿の屋根がトタン板だったものだから、一晩中ドラムを叩いているような轟音が鳴り響き、ほとんど眠ることができなかったと記憶している。結局、何日か滞在したものの、登山は断念した。だから30年ぶりのリベンジというわけだ。今回はちゃんと乾季にやってきた。でもカメルーン山は大西洋のすぐ近くに聳えているためか、ずっと白い靄がかかっていて全貌を望むことができない。
山麓にはプランタンバナナとアブラヤシとお茶のプランテーションが広がっていた。カメルーン・ティーというブランドの紅茶も売られている。道路がよくなりビルも増えていたが、しかし田舎の方では家の前でおばちゃんがのんびりバナナを売ったり、何をするでもない男たちが昼間からビールを飲んでいたりと、昔とあまり違わない光景が広がっていた。海岸沿いには油田がいくつも立ち並び、中国製のトラックが頻繁に出入りしていた。
ガイドとポーターを雇いさっそく登山開始。天を衝く板根が広がった巨木や、バナナの原種のような木、イチジクそっくりの実がなっている木などを観察しながらゆっくり登る。しばらく登ると朽ちかけた山小屋があり、持参のシュラフを広げた。ガイドが料理も作ってくれる。干した小魚で出汁をとり、人参やトマトピューレを加えてヤシ油で煮込んだソースを、パスタやごはんにかけて食べる。うまみがちゃんと出ていてなかなかのものだ。朝は食パンにジャムやマヨネーズを塗って食べた。
森林帯を抜けるとサバンナになるが、急登が続く。驚いたことに何人もの短パン姿のカメルーン人が走り抜けていく。しかも手ぶらだ。聞くと、年に一度、登山レースが開催されるのだが、そのトレーニングらしい。頂上までの標高差は3000メートルぐらいあるのだが、優勝者は往復4時間程度で完走するとのこと。カメルーン山は活火山で、現在でも山頂近くのクレーターから白煙が噴き出していた。かつて噴火した際に流れ出た溶岩で山頂付近の登山道はごつごつしている。転倒したら怪我では済まないだろう。高額な賞金が出るらしいが、山はやっぱり自分のペースで登りたいものだと思う。
写真・文  船尾 修さん

船尾修さん
1960年神戸生まれ。写真家。1984年に初めてアフリカを訪れて以来、多様な民族や文化に魅せられ放浪旅行を繰り返し、いつのまにか写真家となる。[地球と人間の関係性]をテーマに作品を発表し続けている。第9回さがみはら写真新人賞受賞。第25回林忠彦賞受賞。第16回さがみはら写真賞受賞。著書に「アフリカ 豊穣と混沌の大陸」「循環と共存の森から~狩猟採集民ムブティ・ピグミーの知恵」「世界のともだち⑭南アフリカ共和国」「カミサマホトケサマ」「フィリピン残留日本人」など多数。元大分県立芸術文化短大非常勤講師。大分県杵築市在住。
公式ウェブサイト http://www.funaoosamu.com/
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