ケンテクロス
アフリカの布の中でもその鮮やかさが際立っているのがアシャンティ族のケンテクロスとエウェ族のエウェクロスである。この布は肩から足首まで体を包む衣装として用いられる。西アフリカ特有の10cm位の細幅の布を縫い合わせて一枚の大きな布にしたもので、そこには幾何学文様や動物、人などのさまざまな文様が織りこまれている。素材は、綿や絹、また最近ではレーヨンも使われている。絹の布は王様やチーフだけが着るものであるがその絹は日本からも輸入されたという。細幅の布の織りは、中央アジアのステップからコーカサス地方、アフリカ北西部に至る地域で2000年以上の歴史を持つ。イスラム教の勢力拡大とともに、サハラ砂漠を越えて西アフリカに伝わったという。西アフリカのほとんどの地域で、布を織るのは男性の仕事である。布を織ることはとても神聖な作業だった。職工は一日の仕事を終えると、儀式的な事をして仕事場を去った。機織りの道具で人をたたいたりすると悪病をもたらすと信じられた。また機織り機は、その持ち主が死ぬと壊され、他の人に引き渡されることはなかったという。
小川 弘さん 1977年、(株)東京かんかん設立。アフリカの美術品を中心に、アフリカ・インド・東南アジアの雑貨、テキスタイルなどを取り扱っている。著書にアフリカ美術の専門書「アフリカのかたち」。公式ウェブサイト http://www.kankan.co.jp/