15世紀半ば、ポルトガル人のディエゴ•カオンがヨーロッパ人として初めて西アフリカの海岸地域を調査し、コンゴで象牙製品といくつかの木製品を持ち帰り、ここで初めて黒人の仮面文化が知られるようになった。18世紀半ばを過ぎて植民地政策が盛んになるや、現地に出かけた船乗りたちが仮面や彫像を珍しい土人のお土産として競って持ち帰るが、野蛮な原始人の奇怪なものとして珍しがられるのが関の山だった。19世紀後半になり大規模な民族博物館がヨーロッパ各地に創設され、まとまった収集が行われるようになったが、それでもまだ美術的評価を受けることはなかった。それが評価を得るようになったのは、ようやく20世紀に入ってからである。また、コピーが作られるようになったのはアフリカ諸国の独立後、1950年代以降である。

ヤウレ族 仮面

ヨルバ族 母子像

ゼラ族 儀礼用イス

私がこの仕事を始めた1980年代には、アフリカ各地のマーケットで売られるほとんどの仮面や神像はコピーだった。民具以外に本物を見つけることは稀であった。それでは本物とコピーはどこが違うのか。端的に言うなら本物とは本来の土着儀礼に使われる、または使われた仮面や神像である。古いから本物、新しいからコピーというわけではない。近年の儀礼では本来の伝統的なしきたりを忠実に守って行われるものは非常に少なく、旅行者用の見世物としても仮面舞踏が行われている。本物の儀礼が少なければ、作り手も祖先に対する敬意や願いを込めて製作することは希薄になる。近年の仮面や神像にアフリカ美術の大きな魅力であるスピリチュアルな力を感じられるものが少ないのは当然である。このような現状なので美術オークションでは、来歴と古さが最重要視される成り行きとなった。しかし来歴のはっきりしたもの、古い歴史を持ったもののほとんどは既に美術館や博物館に収蔵されている。だから、たまにマーケットに出てくる希少な作品の取引額は大変高額で1点が億単位の作品もままある。
アシャンティ族 儀礼用イス

バミレケ族 イス

この際、私はアフリカ美術を取り扱うプロの業者として、それに魅せられた者として、来歴などにあまりとらわれるなと言いたい。本来作り手は無名の職人たちである。本来収集とは投資ではない。作品と出会い、何らかの魅力を感じ、時にその作品に癒され、時に創作の新しいヒントを得る、そこに意義がある。3万円のものと300万円、3000万円の違いは当然理由がある。しかし自分で楽しめる金額の中で自分なりに楽しめばそれも良い意味での収集ではないだろうか。
写真提供/小川 弘さん

小川 弘さん
1977年、(株)東京かんかん設立。アフリカの美術品を中心に、アフリカ・インド・東南アジアの雑貨、テキスタイルなどを取り扱っている。著書にアフリカ美術の専門書「アフリカのかたち」。公式ウェブサイト http://www.kankan.co.jp/
道祖神

Share
Published by
道祖神