40年近く前の話。最初にアフリカを旅したい、と思ったきっかけは一冊の本との出会いだった。著者はオートバイを駆ってサハラ砂漠を縦断しアフリカ大陸を一周する。こんな旅もあるんだ、と強烈なインパクトがあった。その文中にケニアで青年協力隊として活躍するYさんが登場する。
数年前、一本の電話を受け取った。「Yと申しますが、実は40年以上前にケニアに滞在していた頃に一緒に働いた仲間や、体育を教えた生徒に会いたい。70歳になった今、体が動くうちに是非もう一度ケニアを訪れたい」そんな内容の電話だった。私は、「ひょっとしてKさんの書かれた旅行記の中に登場するYさんではないですか?」と聞くと、「そうです。その通りです。40数年前に協力隊の隊員としてナイロビの郊外で体育を教えていました」とのことだった。不思議な再会(?)を感じながら、詳しく話を聞き、駐在員経由で色々調べてみると、当時働いていた組織も建物も既になくなっており、近くに住む住人に尋ねても関係者を探し出すことはできなかった。
ダメかな、残念な連絡をしなくては…と思っていたとき、駐在員の三輪から「新聞の人捜し欄に出してみたらいかがでしょう?ケニア人はわりと新聞を読む人が多いし、ひょっとしたら当時の関係者から連絡が来るかもしれませんよ。掲載料も安いし…」との提案があった。早速Yさんの了解をもらい、日刊紙の人捜し欄に掲載すると、2-3日後に弊社の事務所に数名の方から電話連絡があった。いやはや嬉しかった。
急いでYさんに連絡すると、「いや~そうですか、その男は私の同僚で、一緒に…」と言葉が止まらない。早速、航空機の予約、ビザの取得や予防接種を済ませ、3週間ほど後に大量のお土産とともにケニアへ出発した。
何週間かが過ぎた頃、長い手紙とともに1枚の写真が届いた。ケニア人のじいちゃん達と肩を組んだ、満面笑みの日本人じいちゃんの写真だった。
豊かな人生のお裾分けにあずかったような幸福な気持ちになった。この仕事をしていて良かったと思った。2012年も幸福な旅のお手伝いができますように!
写真 : 高台から望むナイロビ市街