昨年の8月、親しい友人達とユーコン川を旅してきた。バンクーバーよりホワイトホースへ。この町でカヌーをレンタルし、1週間分の燃料や食料の買出し、釣具やライセンス、熊よけのスプレーなどを購入し、カヌーと大量の荷物とともにチャーターしたセスナ機で50キロほどの湖を一気に飛び越えた。
ユーコンの川旅は2度目なのだが、川幅が広く、水量も多く、流れも安定しているので初心者でも楽しめる。時折釣りをしながら、流れにまかせて荷物の上に寝転んで雲を見ていると、鳥の鳴き声と川のせせらぎしか聞こえない。風に乗って遠く山火事の焦げた臭いが流れてくる。なんとも心地よい平和な時間が過ぎていく。
適当な時間になると、上陸できそうな岸辺を探してカヌーを乗り上げ、ランチの準備だ。バケツで川から水を汲み、湯を沸かしコーヒーを飲む。釣り好きなメンバーは上陸と同時に竿をだす。場所によっては30センチもあるグレイリングが掛かり、すぐさまホイルに巻かれ焚き火に投入され、絶品のおかずになる。時には50センチを越えるパイクが掛かる。夕焼けは10時過ぎ、日の出は4時頃なのでほぼ1日中明るい。キャンプ地では、思い思いの場所にテントを張り夕食の準備だ。釣り上げた魚と、持参のハムを焼く。もちろん米を炊くのも忘れない。水温6度の川で冷やしたビールが美味い。
5日目の夜、翌日のピックアップを依頼しているサポート会社に衛星携帯で連絡をすると、「山火事の影響で道がクローズされ、予定の村まで車が入れない。次のピックアップポイントまで進んで欲しい」とのこと。「エエッ、50キロも先!明日は70キロ漕ぐのかよ!」と皆で驚く。気合を入れて漕がないと、目的地に辿りつかない。昼食は弁当を準備し、いつもより2時間早く出発した。「今までラクをしすぎたんだよ!」と誰かが笑いながら言う。皆で力を合わせて漕いだお陰で、日没前に予定の上陸地点に到着。ビールで旅の終着を祝った。心地よい疲労が全身に広がっていった。
写真 : ユーコンの川旅 by Tobias Klenze from Wikimedia Commons