風まかせ旅まかせ Vol.29 ケニア人スタッフ、フェスタスの勝利

弊社のナイロビオフィスで働くケニア人スタッフ、フェスタス。37歳、男性、大変まじめな性格。約束の時間に遅れることはまずない。仕事も慎重で、車やホテルの手配も間違いがない。陽気なケニア人には珍しく大変シャイ! 以前から日本語を勉強しているものの、恥ずかしくて日本語で話すことができない。従って社内での会話はいつも英語。ケニアの地方都市マチャコス生まれ。実際はマチャコスの町から未舗装の道をマタツー(乗り合いバス)に乗り30分、さらに歩くこと20分でやっと実家のある小さな村に到着する。結婚はしているが、故郷に奥さんと6歳の子どもを残して、単身赴任生活を送っている(生活環境の良くないナイロビの会社員にはよくある話)。週末にマタツーを乗り継いで約3時間、家族が待つ我が家に帰ることを何より楽しみにしている。小さな畑と近くには共同の井戸、ヤギやニワトリが身近にいるケニアの典型的な田舎だ。小さな家に電気は入っていない。ただし近くまで電気が来ているので、子どもの就学に合わせて早く電気をひきたいのだが、電気公社に頼んでも何年先になるか分からない。これが最大の悩みだ。
昨年の秋、ナイロビオフィスにケニア・トヨタが主宰する日本語スクールの生徒募集案内が届いた。フェスタスに「希望するなら月約3千円の講習費は会社で負担するけど、交通費は自己負担になる、どうする?」と聞いたところ、「ぜひ行かせてほしい」との返事。ただし、講義は土曜日の午後なので、楽しみにしている家族との週末が叶わないことになる。
3月に在ケニア日本大使館主催で、日本語弁論大会が開かれた。優勝者には日本での研修旅行がプレゼントされる歴史ある大会だ。ナイロビ大学の日本語学科の学生や、日本企業で働く若者が多く参加した。フェスタスもチカラ試しに参加すると、なんと優勝してしまった! 5分間のスピーチ、その後の質疑、すべて日本語で答えなくてはならない。あの恥ずかしがり屋のフェスタスがほぼ完ぺきな日本語で、それらの質疑にも答えたそうだ。人知れず地道に勉強してきたフェスタスの勝利だった。これで胸を張って人前でも日本語を話せるようになるだろう。日本で会うのが楽しみだ。

道祖神

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