料理は登山の重要なポイントなのですが、腕利きコックは煮物も焼き物もお手の物。日頃山の中でレトルトカレーを常用している日本の山屋さん達は上機嫌。参加者全員でコックに感謝の拍手をしてくれました。
キャンプ地のトイレは新しいもの、古いものとありますが、新しいほうは造りが立派です。古いほうは扉の蝶番が取れていたり屋根が飛んでいったりしていることがあるのであまり落ち着きません。
シラーキャンプの朝、空気は冷え込んで寒く、サミットには雪煙が舞っていました。登山3日目は4,500m付近まで高度を上げて、そこから3,950mのバランコキャンプまで谷沿いを下ります。谷沿いではガスに覆われ、なんだか過酷な雰囲気。所々ガレ場なので歩きも真剣です。雲の通り道である谷沿いにはジャイアントセネシオやジャイアントロベリアが群生していて、ガスの中で遭遇するその奇怪な姿はお化けの様。バランコキャンプもガスで真っ白。テントは一体どこ!?
約束事のように明け方はガスが晴れて、眼前には巨大なサミットが現れました。今やまさにキリマンジャロの懐の中にいる感があります。4日目はこのルート一番の急登であるバランコウォールを越えて、カランガキャンプまで3時間半の歩き。急峻な場所をものともせずに荷物を担ぎあげるポーターのラフな姿を見ていると、ゴアテックスやらUVカットやらの機能で身を包んだ自分たちの格好が逆に不自然に思えてきます。
カランガハットも夕時にはガスに包まれて寒い寒い。そんな時の鶏肉たっぷりのシチューが美味いのなんの。
登山5日目。一日中快晴で太陽が燦々。日焼けクリームを塗らないでいるとあっという間に肌が焦げそうです。標高の最も高いバラフキャンプまで3時間半の歩き。空気が薄くなり高山病の心配はあるけれど、氷河が形作った宇宙的な景観、大地を滑って行く雲を眺めていると気が晴れ晴れとしてきます。ようこそ4,000mの世界へ。
バラフキャンプについたらこれまでと雰囲気が違います。深夜0時にはいよいよアタックです。本当にやれるのか、自分の身体との対話が始まります。夕食をとって仮眠した後、装備を入念にチェック。新月の暗闇の中、空気はいよいよ冷え込んで、集合した参加者の表情は緊張気味。さあ勝負勝負!
事前に「証城寺の狸」でも歌いながらのんびり登ろうかという打ち合わせがあったものの、薄い空気と寒さが気分的にそれを許さず。他チームを抜いたり抜かされたりしながら少しずつ高度を上げていきます。眼が合うと二コリとしてくれる参加者の表情が固め。新月の夜は本当に寒く、カッパやザックの表面は霜で真っ白になるほどだった。
明け方にやっとのことで登頂。思わずハグ。嬉しくない訳がない。
その3へつづく
有冨