2010年に亡くなられたマリ共和国・バンバラのブルースマン『ロビ・トラオレ』
数年前にこのコーナーで、彼がバマコ現地のクラブでライブ録音した『Bamako Nights』という作品を取り上げたことがあるのですが、今回の作品は『ロビ・トラオレ』が生前に残した最後の一枚です。
曲は全編トラディショナル。ギンギンのエレキギターでマリのブルースを聞かせるのが持ち味の彼ですが、この1枚ではアコースティックギター1本でオーバーダビングも一切なし。
渾身の一発録音で、芯まで響く力強い“バンバラ・ブルース”が収録されています。
マリを流れる大河、ニジェール川流域の都市セグゥーのそばの村で生まれたロビ・トラオレは生粋のバンバラ人。
小さなころから、バンバラの文化、そして音楽に育まれて育つ一方で英米のブルースやロックを聞いて育ち、自身の音楽性に消化してきました。
先にも紹介した1995年のバマコ、地元クラブのBARボゾでのライブ音源『Bamako Nights』を筆頭に、激しいギタープレイとこぶしのききまくった“バンバラ・ブルース”を世に送り出してきたロビ・トラオレさんですが、49歳という若い人生の最後に残した作品が、この静かな一枚でした。
『Rainy Season Blues』。
このアルバムは死の数ケ月前、2009年8月にマリの首都バマコのボゴラン・スタジオで録音されました。8月はマリの雨季。国中が緑に溢れ、バオバブも白い花を咲かせる季節です。緑あふれる雨期の景色は、茶褐色のイメージが強い西アフリカの内陸国のイメージが覆されます。
以前のように気軽に行くことが難しくなってしまったマリですが、この作品を聴くと、ギター1本と歌声だけであの美しい季節のニジェール河のほとりまですぐに連れて行ってくれます。
日本の梅雨と西アフリカの雨季は、全くもって似て非なるものですが、雨の季節になるとつい手に取りたくなる1枚です。
by 生野

道祖神