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メルー国立公園

2004年9月27日出発のツアーにご参加された渡壁 大 様から頂いたレポートです。
ルート
NAIROBI~(国道A2号線)約1時間30分~ EMBU ~(国道B6号線)2時間~ MERU ~約2時間~ Meru N.P. ~約30分~ エルザ・コプジェ(Elsa's Copje)所要時間約6時間
NairobiからEmbuまでは快適な舗装道路をひた走る。途中水田地帯などを走り、ちょっと東南アジアっぽい風景が楽しめる。Embuからは山間部に入り、山の谷間を見下ろしながら豪快なルートを走る。相変わらず舗装が行き届いた快適なルートで、 バナナ畑や山間の小さな集落を見ながら走りぬける。

Meruを出てからMauaへ向かうルートを取り、しばらくすると舗装が途切れる。 最初は比較的整備された砂利道だが、舗装が途切れてから15分も走ると左右に体が大きく揺すられるような極悪路に入る。この極悪路はかつてのNamanga~Amboseliの悪路(現在はきれいに整備されているが)よりひどく、 いつまで続くのかと途方に暮れるが、この極悪路は約20分程度で終わり、再び整備された砂利道に戻る。厳しい悪路はゲート手前のこの区間、約20分程度のみ。整備された砂利道に戻ってからは約10分でメルーのMureraゲートに着く。
休憩は往路はMeruのMeru safari Hotelで一度だけ取ったが、Nairobiから一気にMeruまで行くとちょっと厳しい。Meruまで約3時間半とはいえ、結構な距離があり、車もかなり飛ばしての時間。途中、Embu、Meru以外では他に休憩が取れる所もないので、Embuで一度休憩を取りたいところ。(帰路ではEmbuのIzaak Walton Innでも休憩を取ったところ、大変楽だった)
メルー国立公園
Nairobiの東北東約100キロ(走行距離は約350キロ)の地点にあり、面積は約870k㎡ある。(参考:アンボセリNP:392k㎡)
標高が低いためサンブルと同様、とても暑い。年間を通じて雨が多く、公園内には大小の川が流れており、草原の他に森林に囲まれた地帯もある。全体的な光景はサンブールによく似ているが、山や丘に囲まれるサンブールと違い、メルーは広大な大サバンナが広がり、 そこに沈む夕陽の美しさには思わず息をのむ。公園内のゲーム・サーキットは非常によく整備されいる一方で、ブッシュが高く、また動物も非常に警戒心が強いため、動物になかなか近づくことができない。
Nairobiから遠いためか訪れる人も少ない(サファリ中に他のサファリ・カーに出会うことがほとんどない)が、これが「本来の姿」と言えるのかもしれない。見られる動物はサンブールに似ており、種類も多い。グレーピー・シマウマ、レッサー・クドゥ、アミメ・キリンなどを見ることができる。
メルー国立公園はジョイ・アダムソンの著書「野生のエルザ」の舞台となったところでもある。ジョイ&ジョージ夫妻が活動したこの一帯は1968年にメルー国立公園としてオープンしたが、90年代後半まで密猟者が横行。動物が激減し、シロサイは全滅、ゾウも壊滅的となった。この密猟はつい最近まで続き、果てはキリンなど草食動物まで激減したが、KWSの取り締まり強化により密猟もなくなり、他の国立公園・保護区からも動物を移住させ、2000年以降は動物の数も徐々に回復している。

サファリ
ブッシュが高く動物の警戒心が強いとはいえ、動物の種類は多く「探検的」サファリが楽しめる。メルー国立公園は飛行機で来る人が多く、基本的にサファリはロッジの車になる。広大なメルー国立公園内で、サファリで回るのはほんの一部だが、ウォーキング・サファリ、ナイトサファリなどのバラエティ溢れるオプションも用意されている。
Elsa’s Copjeのサファリカーは屋根はもちろんのこと、窓はおろかドアもないランドローバーのフルオープンで、座席に座るとすぐ横はもう地面、という状態。「ライオンが来たら闘ってください」とドライバーにジョークを言われるほどだ。それだけに臨場感もありとても楽しい。 密猟によって激減した動物も移住によって回復してきたとはいえ、基本的に最小限の移住で、後は自然繁殖に任せている状態なので、その数はまだまだ少ないようだ。だが、レッサー・クードゥやツチブタなど、普段はなかなか見られない動物に出会えたり、ブッシュからウォーターバックが飛び出してきたりと、エキサイティングなサファリである。動物がすぐに逃げてしまったり、動物との距離が少し遠いため、フォト・サファリは難しい。ここでは血眼になって動物を探すよりも、双眼鏡を片手にメルーの風を全身に受けながら、アフリカの大地を感じるサファリを楽しみたい。

サンセット・バー&ブレックファースト・サファリ
夕方からのサファリでは、美しい日没の時間に合わせて夕陽が美しく見えるポイントにクルマを停め、ドライバーが「サンセット・バー」を設営してくれる。バーとはいえ、クルマのボンネットにマサイブランケットを広げ、その上に数種類のツマミと希望のドリンク(事前にロッジで希望を伝えておく)が用意される程度だが、美しい夕陽に今日の感動を感謝しつつ乾杯するのは至福の時間である。また、早朝のサファリでは「ブレックファースト・サファリ」ができる。朝食をお弁当にしてサファリに出かけるというものである。
途中、川沿いの美しい森に囲まれたポイントにクルマを停め、そこで朝食をいただく。朝の涼しい川沿いの空気を吸いながら、鳥のさえずりを耳にしながらいただく朝食。非常に贅沢で楽しい時間である。

オプショナル・ツアー
ロッジにて申し込むと「ウォーキング・サファリ」と「ナイト・サファリ」を楽しむことができる。(ただしこれらはエキストラ料金が必要。それぞれ1人15ドルで、これはKWSに支払われるとのこと)今回はウォーキング・サファリとセットで申し込み、ウォーキング・サファリ終点でピックアップしてもらい、そのままナイト・サファリに出発した。
ウォーキング・サファリ
夕方16時にロッジの玄関に集合。まずはガイドをしてくれるロッジのマネージャーから注意事項の説明がある。「ライオンに出会った場合」「バッファローに出会った場合」などを大マジメな顔をして説明されるので、こちらも大マジメな顔をして拝聴する。ウォーキングサファリでライオンに出会えることなどあるのだろうか、会えたらラッキーだな、と思う反面、出会うことが無いとも限らないので、ちょっと緊張する。ガイドをしてくれるマネージャーはかなりの「役者」で、こうした盛り上げが非常に上手い。(ちょっとクサい演技もあるが)説明後は同行のレンジャーと共にサファリカーに乗り込み、スタート地点で降ろされて歩き始める。ライフル銃を肩に下げたガイド役のマネージャーを先頭に一列縦隊になって歩くのだが、これがなかなか楽しい。
結局ライオンはおろか、見ることができた動物はグレーピー・シマウマとガゼル程度。しかし動物たちと同じ地面に立ち、シマウマと視線が合うというだけで非常に楽しいし、そもそも自分の足でサバンナを歩いているだけでも満足感がある。
動物を間近には見られなかったものの、途中で「足跡当てクイズ」「アリ地獄掘り」などをしてくれたり、落ちている糞の説明をしてくれたりして、なかなか楽しめたウォーキング・サファリ。終盤は川沿いを歩き、最後はピックアップ地点でサファリカーに拾ってもらう。所要時間は1時間半程度。

ナイト・サファリ
サンセット・バーの時間までは通常の夕方のサファリを楽しみ、日没後からが本格的なナイト・サファリとなる。ナイト・サファリといっても、ドライバーは運転をするだけ。サーチライトを照らし、動物を探すのはお客さんの役目。
今回は同行していただいた道祖神の三輪さんにサーチライト役という重責(?)を果たしていただいたが、このサーチライト役はかなりエキサイティングで夢中になってしまうらしい。後ろから夢中になっている三輪さんを眺めていると、それがまたナイト・サファリの光景の一部となって楽しい。
サーチライトに反射して光る目をまず探し、動物を同定するのだが、闇に光る目を探すのはワクワクする。一番多く見られたのがブッシュ・ベイビー。 1時間半近くのナイト・サファリ中に25匹のブッシュ・ベイビーを確認。その他、バッファロー、カバ、ヒョウ(?)を発見することができた。
暗闇の中、バッファローやカバを間近に見るのは、日中と違い、異様な雰囲気で少々怖い。(もちろん、ドライバーが安全を確保してくれているから安心なのだが) ロッジへの帰路出会ったヤマアラシが、針を立ててカサカサと音をたて、ヒョコヒョコと逃げて行く姿が愛くるしく、緊張が続いたナイトサファリの最後を和ませてくれた。
KWSとは・・・KENYA WILDLIFE SERVICE ケニア全土の国立公園を管轄している組織
ロッジ【エルザ・コプジェ】
小高い丘の上に、岩と地形を上手に利用して建てられた9棟の戸建てロッジと、センターハウスから成る小規模な高級ロッジ。それぞれが完全に独立している。サバンナに面した方角には壁がなく、目前に広がる大サバンナとの一体感が感じられる。
部屋は非常に広く開放感に溢れている。洗面所、シャワーブースも広々としており、設備も充実しているが、お湯は一日あたり180リットルまでという制限があるし、夜23時から翌朝6時までは停電となる。限られた水と電力ゆえのことだが、節約して使えばお湯を180リットル使い切ることはまずないし、夜の停電後に、壁の無いベットルームから月明かりにうっすらと浮かび上がるサバンナを眺めるのも、非常に美しく感動的で、そのまま夢路につくのも悪くない。
部屋のタイプは9部屋すべて内装が違う。4部屋のみバスタブがついている。一部屋はファミリースイートで最高5人が泊まれる部屋である。各部屋にある無線(トランシーバー)でレストランなど共有スペースから離れた部屋にいてもロッジスタッフと連絡が取れるようになっている。
食事は非常に美味しい。ディナーは日によって魚料理と肉料理が交互に出てくるようで、どちらも満足できる。ロッジによくあるブッフェスタイルではなく、各テーブル毎にサービスをしてくれるので、温かいものは温かく、冷たいものは冷たくいただける。ランチはブッフェスタイルだが、新鮮な野菜が多く用意されているのが嬉しい。食後は部屋でのんびり過ごすのも良いが、併設されているバーで洒脱な会話を楽しみたい。
夜はバーとなる場所では、日中もドリンクをサービスしており、ソファやデッキに座ってゆったりと午後のひと時を過ごすのは、とても豊かな時間である。

なお、このロッジは小高い丘の自然の地形を上手に利用して作られており、ロッジからダイニングなどの移動はそこそこの距離がある。特に夜間は懐中電灯は必携(各部屋に備え付けてある)で、ヘビなどもいるため足元には注意したい。日中はハイラックスが部屋まで遊びに来ることもあるが、ヤモリ、トカゲも非常に多く、部屋の中まで訪問してくる。この手の生き物が嫌いな人には向かないかもしれない。小規模なロッジならではの行き届いたサービス。高級ロッジながら過剰なサービスもなく、宿泊客の心を豊かにしてくれる「心に贅沢な」ロッジである。
かつて「野生のエルザ」の原作者、ジョイ&ジョージ・アダムソン夫妻 がキャンプをしていた場所の近くにあるロッジだけに、内部にはエルザの絵や写真が多く飾られ、また、洒落た調度品も多く置いてあり、質素な雰囲気の中にほどよい上質感を感じることができた。言うまでもなくロッジ名”Elsa’s Copje”の”Elsa”は野生のエルザのことであり、”Copje”はこのロッジが建っているような「岩の丘」という意味である。
まとめ
マサイ・マラのようにあちこちに動物を見ることができるような場所ではない。そういう意味では「とにかく動物をたくさん見たい」という人には不向きだろう。だが、マラから移って来たというドライバーが「これが本来のサファリだ」と強調していたように、野趣溢れるサファリを楽しみながら、大アフリカをゆったりと満喫することができる。
野生動物の保護に尽力したアダムソン夫妻とエルザに想いを寄せながら、 悠々たる時間の中に自分の身をサバンナに同化させる・・・。それがメルー国立公園の楽しみ方のように思う。サバンナにいるだけで幸せ、と思える人に勧めたい、美しい国立公園である。
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道祖神