タッシリナジェールはサハラ砂漠の中央部におよそ800kmにわたって連なる黒い台地です。あたかも月面を思わせるその荒涼とした世界の隅々に先史時代の壁画が残されています。
風と水に激しく浸食された台地上では、奇岩が森のようになっています。または果てしなく岩の絨毯が広がり、断層がむき出しにされ、涸川がいくつもの谷を形作っています。この生き物にとって過酷な世界にはかつては氷河が覆っていた時代があり、熱帯雨林が広がった時代があり、草原だった時代があり、多くの人の賑やかな声が聞こえた時代がありました。
壁画は古いもので新石器時代まで遡るものも見られますが、数千年もの間、壁画は描かれ続け、気候の変化にともなう動植物の変化、生活様式の変化、感性(デザイン)の変化を辿ることができます。
肉体美や装飾を描いたもの、戦争を描いたもの、家族の愛を描いたもの、あるいは神のようなもの、ひどく抽象的で分か らないものと、、テーマは本当に様々。
一時期よりトゥアレグの祖先が登場し始め、ガイドの説明に熱が入ります。ターバンを巻いて昔ながらの姿をしているガイドの姿を見ていると、数千年の時間なんて自分たちの思っているほど長い時間ではないのではという気がしてきます。街から遠く離れて彼らと寝食をともにしていると、壁画に描かれた世界に迷い込んだような錯覚に陥ります。これぞまさにタイムスリップです。
自然の移り変わり、人の繁栄と衰退を目の当たりにする壮大な時間旅行、これは面白いです。
大阪営業所 有冨
世界遺産 タッシリ・ナジェール岩画トレック 11日間