2014年9月3日から12日までの日程で、私が撮影ガイドを務める「マラマラ&マシャトゥ自然写真撮影ツアー」が催行された。いずれの場所もこのコーナーで既に紹介しており、素晴らしいサファリになるという自信はあったので、「究極のサファリ」と銘打って宣伝させてもらったが、結果は究極を通り越して超絶とでも言うべきものとなった。
9月4日早朝、ヨハネスブルグに到着したその足でマラマラまで陸路を移動し、午後のサファリに間に合うタイミングで現地入りした。夕方ゲームドライブに出ると、早々に河辺でくつろぐライオンのプライド(群れ)と遭遇。日没後には最初のヒョウにも出会った。ロッジへ戻る直前の夜7時半、河辺で見たライオンがインパラを捕えたとの一報が入り、現場へ急行すると、メスライオンたちが獲物を巡って争っている最中だった。のっけから凄いことになったものだと思いつつも、内心では大したものが現れない静かな日もあるだろうと見ていた。ところが、私の予想に反して連日怒涛のようにシャッターチャンスは訪れた。
今回のツアーで特に際立っていたのが肉食獣の多さで、ヒョウ、ライオン、リカオン、チーター、ブチハイエナという、大型肉食獣たちを短期間で見られたことは特筆に価する。とりわけヒョウに関しては、生後3カ月弱の子供2頭を連れた母親を含め11頭もの個体に会い、ヒョウを見ていない日が全行程を通して一日もないという、とんでもない結果となった。チーターも小さな子供5頭を連れていたし、ライオンもほぼ毎日現れた。さらにマシャトゥでは、ヒョウがインパラを食べているところにブチハイエナたちがやってきて獲物を奪い、大騒ぎするという大迫力の場面を目撃した。
それ以外にも、ヨコスジジャッカルやタテガミヤマアラシ、カワイノシシといった、普段のサファリではあまりお目にかからない動物を含め、全部で33種もの哺乳類を見るに至った。アフリカで野性動物を撮るようになってかれこれ20年以上になるが、このような密度の濃いサファリは初めての経験だった。
写真のヒョウは、2日目の夕方、マラマラで撮影したものだ。メスの首に噛み付くオスと、噛み付かれるメスの形相は、およそ交尾とは思えぬ凄まじいものだった。しかもヒョウはこれを数分置きに繰り返していた。このようなシーンを目の前でゆっくりと観察・撮影するという贅沢を体験できるのも、動物の数が多く、自由度と完成度の高いサファリを提供する南部アフリカの私営動物保護区ならではだ。
撮影データ:ニコンD4、AF-S VR 80-400mm f4.5-5.6G、1/160秒 f5.6 ISO1600
写真・文 山形 豪さん
やまがた ごう 1974年、群馬県生まれ。幼少期から中学にかけて、グアテマラやブルキナファソ、トーゴなどで過ごす。高校卒業後、タンザニアで2年半を過ごし、野生動物写真を撮り始める。英イーストアングリア大学開発学部卒業後、帰国しフリーの写真家に。南部アフリカを頻繁に訪れ、大自然の姿を写真に収め続けている。www.goyamagata.com