Categories: 山形豪 WILD AFRICA

WILD AFRICA 30 ロッジ選びの難しさ

「早起きは三文の徳」と古くから言うが、動物写真を撮る人間にとって、早起きは絶対条件だと私は思っている。動物たちの活性が最も高いのは、日の出直前から直後のわずかな時間帯だし、光が一番きれいなのも早朝だ。とにかく地平線上に太陽が顔を見せるころにはフィールドに出ていなければならないのだ。
ところが、サファリロッジに滞在していると、ロッジごとのタイムテーブルに従わねばならず、もどかしい思いをすることがある。2015年11月下旬、私はボツワナ、オカバンゴ・デルタ南東部の某有名ロッジにいた。そこでは、日の出が5時15分前後という時期に、ウェイクアップコールが5時半、6時から朝食で、サファリの出発は6時半だった。1日のうち、撮影/観察条件のもっともよい大事な時間帯に、悠長に朝飯を食うなぞ冗談ではないと思った私は、スケジュールの変更はできないのかと聞いたが、無理だと突っぱねられた。しかもロッジは動物の多いエリアまで車で15分程度の距離にあったため、実際撮影に至る頃には日の出から優に1時間半は経過している計算だった。それでは太陽光はもはや強烈すぎるし、動物たちの活性も落ち始めている。案の定、結果はまったく納得のできないものとなった。
一連の残念な体験の後、数年来通い続けているボツワナのマシャトゥ動物保護区を訪れた。こちらのロッジの時間割りは、季節ごとの日の出の時間に合わせて変わる。11月はウェイクアップコールが4時45分、5時にコーヒーやマフィンが用意されたラウンジに集合、5時15分には出発となる。しかも出発時間は客の意向次第となっている。私は出発時間をさらに30分早めてもらい、日の出までには撮影ポジションにつけるようにした。そのような注文にも応えてくれるのがマシャトゥであり、とにかくベストな時間帯にとことんまで動物たちを観察/撮影できるよう努力してくれるのだ。おかげで撮影内容は非常に満足のゆくものとなった。しかもそこまでやってくれて、オカバンゴの某ロッジよりも料金が安いときている。
撮影や動物の生態観察に主眼を置くならば、融通の利かないロッジではなく、とことんサファリを重視してくれるロッジを選ばないと、高い金を払った上に嫌な思いをする結果となる。しかし、インターネットの情報もあまりあてにはならず、客の要望とロッジのスタイルとのマッチングがうまくいかないケースは少なくないようだ。納得できる旅行にするためには、各ロッジの運営スタイルをよく把握している旅行代理店を選ぶことをお勧めしたい。
撮影データ:ニコンD4、 AF-S VR 80-400mm f4.5-5.6、1/1600秒  f5.6  ISO800
早朝、マシャトゥで出会ったブチハイエナの子供
写真・文  山形 豪さん

やまがた ごう 1974年、群馬県生まれ。幼少期から中学にかけて、グアテマラやブルキナファソ、トーゴなどで過ごす。高校卒業後、タンザニアで2年半を過ごし、野生動物写真を撮り始める。英イーストアングリア大学開発学部卒業後、帰国しフリーの写真家に。南部アフリカを頻繁に訪れ、大自然の姿を写真に収め続けている。www.goyamagata.com
道祖神

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