アフリカ絵日記その11 古代の航海を体験する

ザンジバルに行ってみたかった。一般的にはダルエスサラームからフェリーで渡るらしいが、地図を見るとバガモヨからのほうが近そうだった。でも、バガモヨに着いてみると、フェリーが着岸できそうな港なんてない。沖に小さな舟が停泊しているだけだ。夜、指定された舟に乗り込む。ざっと見渡してみたところ、エンジンが見えない。どうやって進むんだ?と聞いたら「ウインド」と船長はシンプルに言った。そう、フェリーではなくダウ舟だったのだ。ダウ舟とは、古代から西インド洋で利用されてきた木造帆船。今もなお、当時から変わらない姿で活躍している、シーラカンスみたいな存在の舟。大きな帆を張ると、舟はスーッと音も無く進みだした。思いがけない展開に、ワクワクした。まぶしいくらい明るい月が海に浮かんでいた。ちょうど中秋の名月が近づいていた。
数時間後。気が付くと舟は座礁していた。男たちが浅瀬の海に入り、舟を押し出そうとする。が、いくら押しても岩礁から逃れられない。男たちは「ダメだこりゃ」と仕事を投げ出し、眠りだした。誰も文句を言わない。いったいどうするのかと思っていたら、潮が満ちて舟が浮かぶのをただ待っていたのだった。やがて、すっかり夜が明け、太陽が昇ってくる。舟がぷかーっと浮かんできて、再び進みだした。帆が風を受けて膨らむ瞬間は最高だ。悠久の歴史とオーラを感じる、なんとものどかな舟の旅だった。
文・画 吉岡健一