2015年10月 セーシェル視察報告

添乗ではありませんが、2016年に新たにツアーを作るにあたって、その下見も兼ねてインド洋の島国セーシェルに行ってきましたので、ご報告します。
「セーシェル」と聞くと、第1に「大リゾート地」というイメージが浮かび、まずその時点でご旅行先の候補から外れてしまうという方もいらっしゃるかもしれませんが、実は海以外の見所も多く、リゾートとは少し違った切り口からこの島々を眺めれば、別の意味で非常に魅力的な訪問地ともなり得ます(と、いうことに重々気付いてはいましたが、長らくツアー化せず放置しておりました)。
セーシェルは118の島々から成り立っていますが、その多くは同じインド洋の島国(レユニオン、モーリシャス、コモロなど)と違って、プレートテクトニクスで移動したかつて大陸の一部だった大地のカケラで、火山活動によってできた「若い島」ではありません。ですので、島々を形作っている大地も特徴的な花崗岩の一枚岩が多かったり、生息している動植物も他の島々とは異なる固有のものが多かったりします。早い話が、「特異な自然」という面での見所がまずあります。
次いで文化。西インド洋の他の島々と同様に、古くから続いた民族移動を反映して、セーシェル国民の先祖はアラブ系、インド系、アフリカ系、ポリネシア系、フランス系、中国系と多岐にわたり、加えて各民族集団同士の交流が進んだ結果、人種・文化ともに複雑に混淆(クレオール化)しました。このいわばハイブリッド文化とも呼べる「クレオール文化」は世界各地様々な場所にありますが、ベースとなった文化と移入した文化の配合?具合で、それぞれ少しずつ異なり、ある意味その土地独特の文化となっています。主に表面に現れ、観光客が触れることができるのは、言語、生活様式、建築、そして食文化などとなりますが、特に面白いのはやはり食文化でしょう。「海のリゾート&シーフード」的な画一的イメージを覆して別の色を添える、非常に興味深い見所の一つになっています。
今回の旅では、一般的な観光客の方々の多くが訪問する3つの島、
①首都ビクトリアと国際空港のあるマヘ島

ビクトリアのランドマーク「クロック・タワー」

②「世界一美しいビーチの一つ」と評される特徴的なビーチがあるラディーグ島

世界で最も美しいビーチの一つといわれる「アンス・スース・ダルジャン」

③セーシェルの代名詞「ココ・デ・メール(巨大なフタゴヤシの実)」を産する世界遺産、ヴァレ・ド・メ国立公園のあるプララン島

ヴァレ・ド・メ国立公園の自然歩道入口

に加えて、セーシェル諸島の最北端に位置し、西インド洋に生息する海鳥達の最大の繁殖地になっているバード島を訪問しました。

面積6平方キロメートルの小島、バード・アイランド

実は最大の目的がこのバード島訪問で、私が最後に訪れたのが20年近く前ということもあって、現状どうなっているのかを見て、情報をアップデートしておきたいところでした。バード島には客室24部屋のロッジが一軒しかなく、マヘ島からの往復にはチャーターフライトを利用する必要がありますが、プロペラ機で有視界飛行になるため、片道約1時間のこの移動時間は美しいセーシェルの海を上空から眺めるまたとないチャンスとなります。飛行機で降り立って驚いたのは、かつてに比べてずいぶん島が小さくなっていること。波の侵食により海中に没してしまった部分も多いそうです。反面、鳥達は以前よりもはるかに増え、島で保護しているアルダブラゾウガメの個体数も増えていました。2000年代に入ってからは特に力を入れて海鳥の営巣地とウミガメの産卵場所の保全に努めているそうで、お陰で以前よりも更に「鳥達が主人の島」という印象が強くなりました。
鳥達が繁殖のために多く集まるのは5~10月の6カ月間ですが、特に巣立ってから次に島に舞い戻るまでずっと飛び続けている(なんと1、2年の間、陸上や水面に降りて休息をしない)と言われるセグロアジサシは、数百万羽が集まるといわれています。その他、シラオネッタイチョウ、クロアジサシ、ヒメクロアジサシ、オオアジサシ、シロアジサシ、グンカンドリ、カニチドリ、メダイチドリ、ベニノジコ、キョウジョシギ、セイシェル・ルリバト、バンなどを見ることができました。そして、島にいる生き物の最年長(恩年推定170歳以上!)のオスのアルダブラゾウガメ「エスメラルダ」(なぜか女性名?)も、健在でした。

シラオネッタイチョウ

シロアジサシ

セグロアジサシ

飛翔するセグロアジサシ

セイシェル・ルリバト

キョウジョシギ

クロアジサシ

マダガスカルでもよく見かける、ベニノジコ

メダイチドリ

ヒメクロアジサシ

オオアジサシ

グンカンドリ 大きな翼を広げ、気持ちよさそうに飛んでいます

白くて華奢な身体が青い海に映える、カニチドリ

バン

アルダブラゾウガメのエスメラルダ、恩年170歳以上!

鳥を含めた自然がお好きな方には最高の訪問地の一つだと思う反面、空を見上げるとものすごい数の鳥が飛んでいますし、夜も鳥の鳴き声は止みませんので、ヒッチコック監督の映画『鳥』を観てリアルに恐怖を感じるような方には全くおすすめできない場所です。島に一軒のみのロッジも、窓はなく(陽を遮る跳ね上げ式の板戸はあります)、ドアに鍵もなく(物を盗る人はいませんが、セーフティーボックスはあります)、部屋の上部は壁がありませんので、日没後も長く電気をつけておくと結構な量の虫が入ってきます(蚊帳がありますし、刺す虫=蚊は少ないのですが)。そして、その虫を狙ったヤモリも。「ロマンチックな絶海の孤島、ハネムーンに最適の行先」的なイメージで行かれると痛い目にあうのは間違いありません。ある意味ロマンチックなのは確かですが。ただ、人工のものは最低限しかない島で、ゆったりと流れる時間に身をまかせ、読書に飽きたら鳥たちを見回って散歩したり、暑くなったと感じたらシュノーケリングがてら穏やかな海に入り、近海に生息するタイマイ(ウミガメ)を探したり、そんな風に気ままに時間を過ごせる最高の島であるのは確かです。

バード・アイランド・ロッジの部屋内

風が抜ける、スッキリしたダイニング

もう一つ、今年の8月にツアーでレユニオン島とモーリシャスを訪問して以来、「以前訪問した時は気にしなかったけど、おそらくセイシェルにも面白く、そして美味いクレオール料理があるはずだ・・・」と感じており、美味しいレストランと料理探しも目的の一つだったのですが、何も気にせず予約して泊まったビクトリア市街外れのホテルの前が、20年近く前に足を運んだクレオール料理の名物レストランだったことはラッキーでした(このレストランのことはすっかり記憶の彼方に行ってしまっていました)。一般的な、リゾート三昧の内容の旅行では、まずビクトリアの街には泊まらないのですが、治安も良いですし、買い物も食事も楽しめます。ツアーには是非含めたいと考えていたのですが、あのスタンレーが滞在したこともあるというクレオール建築文化財に指定されている建物を改装したレストランに再び出会えたのは幸運でした。もちろん、美味しいクレオール料理も健在でした。

クレオール建築を代表する建物で、文化遺産でもあるレストラン「マリ-・アントワネット」

セイシェル・クレオール料理フルコース!

私の思い入れのせいかもしれませんが、島旅は他の旅とはまた少し違った旅情にあふれていると感じます。
この下見を元に、2016年は一風変わったセーシェルのツアーを作りますので、ご期待ください!
羽鳥

道祖神