2017.4.28発 インドネシア・ネイチャー・アイランド・トリップ 9日間

ゴールデンウィークに企画している、アフリカ以外の地域でのワイルドライフツアーのうちの一つ、インドネシアのツアーに添乗させていただきました。目的はカリマンタン(ボルネオ島)のオランウータンと、コモド島のコモドドラゴンという、インドネシア野生動物界のBIG2。今期のバージョンは、マレーシア航空のクアラルンプール経由を利用することにより、現地での日程が1日伸び、その分カリマンタンのタンジュン・プティン国立公園滞在が1日増え、加えてコモド島海域での宿泊を大型動力帆船「ピニシ」のキャビンに船中泊することによって、単なる移動に費やす時間を節約でき、より中身を濃くすることができました。飛行機の乗り継ぎの関係で、ジャカルタの旧市街(オールド・ジャカルタ、かつてのオランダ統治時代に「バタヴィア」と呼ばれていた場所)の観光も、短時間ながら楽しむことができました。

オランダ統治時代の旧バタヴィア市庁舎
植民地時代の建物を使った名物レストラン、カフェ・バタヴィア

オランウータンを見るのは、ボルネオ島のインドネシア領部分の南端にあるタンジュン・プティン国立公園。海に注ぎ、汽水域の広いクマイ川から、更に支流のセコニエル川を遡上して、森の中、川沿いに建つロッジを目指します。寝泊まりもできる伝統的リバーボート「クロトック」でゆったりと川を進んでいくと、ニッパヤシが川沿いによく繁る汽水域から、パンダナスが繁殖する水域へと、徐々に植生も変わっていき、樹冠も高くなり、ロングテイル・マカク(カニクイザル)やテングザルを川沿いの木々に見かけるようになっていきます。オランウータンの生息域は、この川の上流に向かって右手に広がる国立公園がメインになっています。

カリマンタンではこんな川船を使って熱帯雨林の川を遡上します
安定のインドネシア料理、美味しいです
川沿いの木々に見かけるテングザル
カニクイザルも比較的よく目にします

初日は拠点となるロッジへの移動で終了。翌日・翌々日と舟で川を遡上し、両岸の木々に見られる鳥やサルの観察をしつつ、タンジュン・ハラパン、ポンドック・タングイ、キャンプ・リーキーと、森の中に3カ所ある研究施設兼餌付け場への訪問を繰り返します。
餌付け場というと「簡単に見られる」と思ってしまいがちですが、森に食料が豊富な時は餌付け場に姿を現さないこともあり、通常は単独で行動する野生のオランウータンですので、全く姿を現さないこともあります。
野生のオランウータンは、野生に近ければ近いほど、地上に降りるリスクを承知しており、ボルネオでの好敵手となる「ウンピョウ」が生息している地域では、餌付け場といっても地面に降りてきてその場で食料を食べ始めることはしません。一旦木から降りて食料となる果物等を掴み、樹上に戻って食べます。見事に木から木へと移動し、スルスルと上り下りを繰り返す様も観察できます。今回は森歩き中に熱帯らしいスコールに見舞われ、ずぶ濡れの中オランウータンを観察するようなこともありましたが、雨に濡れたオランウータンや、手近にある葉の付いた枝で頭を覆い、雨よけを試みるオランウータンも見ることができました。
今回のツアーではこの森の滞在に時間的余裕ができたため、ペサラットの森林保護センターにも訪問し、森の回復活動を見学、ご参加者全員でひと株ずつ苗を植えさせていただきました。

二次林と原生林の間のような森を歩きます
梢を透かして見るオランウータン
貫禄ある子連れのママさん
子供は表情がユニークです
腕を頭上に挙げているのは雨除けのためです
雨の中でも旺盛な食欲を見せる親子
公園内唯一のリンバ・オランウータン・エコ・ロッジ
雰囲気あるロッジの佇まい
レセプションにはオランウータン関係のDVDや書籍も揃っています
ペサラットの森林保護センター
焼き畑やプランテーション化によってダメージを受けた森を回復させる活動を行っています
多くの異なる種類の森の樹々の苗
森で暮らすダヤク人のレンジャーのお話を聞きながらの森歩き
参加者全員でひと苗ずつ植林してきました
幻想的な雨上がりの森と川

オランウータンの森に3泊した後、空路カリマンタンからジャカルタを経由してバリ島へ。バリ島で1泊した翌日、さらに国内線でコモド諸島への入り口となるフローレス島へ移動します。コモド諸島での目的はもちろん地上最大のトカゲ「コモドドラゴン」。主に生息しているコモド島とリンチャ島へ、こちらは海上を船に泊まりながら移動して訪問します。
このツアーの裏のテーマは「船旅」。特に、コモド海域で利用したスラウェシ島発祥の伝統木造帆船ピニシを使って美しいコモドの海域を旅することでした。船内は設備が整い、普段はダイビング・トリップに使われている船ですので、真水も積んでいますし、ホットシャワーも浴びることができます。もちろん、キャビンは個室でトイレもシャワーも付いています。サービス精神に溢れたクルーやコックさん達との船旅は、短いながらも旅に鮮やかな印象を残してくれました。

プロペラ機でバリ島からフローレス島へ
フローレス島の港町、ラブアン・バジョー。港の真ん中に乗り込む船が停泊しています
コモド海域での旅の足兼ホテル、ピニシ・レディ・デノック号
カッターボートを曳航し、このボートに分乗して各島に上陸します
キャビンの内部、清潔なベッド
デッキにはベッドが設えてあり、海を眺めながらのんびり読書などもできます
キッチンとダイニングテーブル
舳先からは広々とした海と島々を眺められます

コモド島を含むコモド国立公園は世界遺産にも指定されており、希少なコモドドラゴンの生息する陸上のみならず、ウミガメやイルカ、マンボウなども生息している海面下の豊かな自然でも知られており、ダイビングスポットとしても世界有数の海。
のんびりとした海上移動を楽しみつつ、美しい海でのシュノーケリングを行い、何と今回はシュノーケリングでマンタ(イトマキエイ)を見ることもできました。その他、夕方のリンチャ島周辺では数万匹のオオコウモリ(フライング・フォックス)が餌を探し求めねぐらの島を飛び立っていく圧巻の光景も堪能できます。

ケロール島に上陸、小さな山に登り景観を楽しみます
リンチャ島のバジャウの人々の村を散策
漁村らしい、懐かしい家並み
特徴的な高床式の家屋
子供たちはみな人懐こく、元気
訪問する外国人も多いため、気軽に挨拶してくれます
人懐こく、チャーミングなリンチャ島の少女
日本でも見かける干し魚ですが、より素朴な方法で干されています
同じく干されている小エビ、美味しそうです
穏やかな漁村のサンセット、村の人々も桟橋で夕涼み
ねぐらの島を飛び立っていくオオコウモリの大群、
島影に停泊して夜を明かし、迎える朝日
シュノーケリングで見られたマンタ(林弘道さん撮影)
全部で6匹のマンタに遭遇しました(林弘道さん撮影)

現在生息しているコモドドラゴンは、生息地の4つの島の合計で6,000匹未満。オスの方がメスより個体数が多く、いずれの島でもシーズン中はほぼ間違いなくコモドドラゴンが見られるのですが、変温動物でかつ大きな体を持つコモドドラゴンは、エネルギー効率を考えて、よほど狩猟の成功率が高くない限り捕食行動はせず、食料の匂いのする国立公園施設のキッチン周辺に集まっている様子がよく見られますが、今回のツアーでは、最初に訪れたリンチャ島に上陸後すぐに朝の涼しい中活発に動いている個体をはじめ、数多くの個体を見ることができました。
オスのコモドドラゴンは最大で体長3m以上、体重は100kgを超えますが、この時見た個体も、そのくらいの大きさはあったのではないかと思います。唾液中のバクテリア(なんと52種類!)を使って噛みついた動物(バッファローやイノシシなど)に敗血症を起こさせて弱らせ、捕食すると考えられていましたが、最近の研究でバクテリアとは別の毒も持っていることが知られるようになりました。いずれにしても噛まれると大変なことになるため、レンジャーが二股になった杖をもって同行し、近づいてもせいぜい3m程度の距離で観察・写真撮影を行います。

リンチャ島のコモドドラゴン生息地への入り口
朝の快適な気温の中、活発に動き出したコモドドラゴン
5キロ先からの匂いを嗅ぎつけるという嗅覚を使って様子をうかがう個体
巨体でのしのし歩く様は迫力があります
太く、強力な尾と四肢
感情が全く読み取れない、不思議な黒い瞳
活動が活発な個体は舌を頻繁に出し入れします
巨体を支える強靭な足
皮膚の質感も独特で、触ってみたくなるほど
唾液には52種類の危険なバクテリアを含んでいます
コモドドラゴンの主な獲物になってしまうスイギュウ
骨ごと食べて消化してしまうため、コモドドラゴンの糞はカルシウムを含んで白く見えます
美しい入り江を持つコモド島の景観
波のない、穏やかなコモド海域のサンセット

インドネシアと言えば、ジャワ島の仏教遺跡やバリ島があまりにも有名ですが、島々それぞれに特色があり、人々も大らかで明るく親切、その意味でも楽しめたインドネシアの島々の旅でした。アジアとは言え、熱帯で気温も湿度も高く、日本の夏前のこの時期にインドネシアを訪問するのは暑さになれていない分少々ハードで、体調を著しく崩された方もいらっしゃいましたが、何とか皆さん元気に帰国できました。
東南アジアで野生動物を見る旅は、アフリカとはまた違った体験ができ、異なる自然や文化に触れることもできますので、まだ足を運んでいない方は、是非足を延ばしてみてください。
羽鳥

道祖神