アフリカの山に登ろう! recommend 4 夢のロングトレイル ~ドラケンスバーグ山脈~

第4回は「いつか歩いてみたい夢の山旅」と題して、南アフリカ・ドラケンスバーグ山脈の山々をご紹介します。山の“登頂”ではなく、自分のペースでの山“歩き”をテーマに掲げると、その先には夢のような「アフリカの山旅」の世界が待っている、かもしれません。

南部アフリカ最大の山脈

「ドラケンスバーグ」は、竜の山々という意味の名前で呼ばれる南部アフリカ最大の山脈です。標高3,000mを越える峰を7つ擁し、竜の背中、あるいは並べて立てられた槍の穂先のように、南アフリカ東部にレソトとの国境も含めて南北に連なっています。ズールー語では「ウクハランバ」、槍の障壁という意味の名前で呼ばれています(個人的にはこの呼び名の方が好きです)。

落差世界2位のトゥゲラ・フォールズ

ドラケンスバーグ山脈は本来の「アフリカ高原」が浸食によって崩された後に残った残滓で、砂岩の基盤岩の上に厚さ1,500m以上の玄武岩層が載っており、削り落とされた山腹は非常に急峻で、硬さゆえに残った部分が尖峰となり空に向かって屹立しています。山脈は南アフリカ側の16の国立公園、保護区、国有林等と、レソト側の1つの国立公園を合わせて世界遺産「マロティ=ドラケンスバーグ公園」として登録されています。
庭園のような風景の中を歩く

この公園・保護区の区分けとは別に、南アフリカではこの地域を11のエリアに分け、それぞれ名前を付けて呼んできました(例えば「MONK’S COWL(聖職者の頭巾)」など)。11のエリアは、どれも素晴らしい景観を誇る山々を有し、半日、日帰りから4泊5日のロングコースまで、全部で75~120もの様々なトレッキング&ハイキングルートが設定されています。

景観、植物、虫、動物、野鳥、歴史&文化遺産…尽きぬ見どころ

壁のように立ち塞がる山腹と尖塔、茶色の砂岩と緑の草原、世界第2の落差を誇る滝や美しい小川の数々、そして天然のプール…。まさに「絶景」と呼べる景観が、ドラケンスバーグではいたって普通の景観として次から次へと現れます。そんな絶景の中を歩けること自体が幸福極まりないのですが、この山々の魅力は他にも数多くあります。

エランドの群れ

まず、多くの固有種を含む2,000種を超える植物、その中には美しい花を咲かせる高山植物もあります。そして哺乳類48種、鳥類296種を含む豊富な動物相(歩いて見かけるのはヒヒとエランド、野鳥はよく見ます)。さらに特筆すべきは、サハラ以南で最も集中して分布する古代の岩絵です。南部アフリカの先住民であるサンの人々と彼らの祖先が描いたもので、最も古いものは2,400年前、新しいものでは20世紀初頭に描かれたとされています。600カ所の洞窟や岩陰に約35,000点という途方もない数が残されています。いずれの洞窟・岩陰も、おそらく獲物がすぐに目に入るよう眺めがよく、大荒れの天気でも雨がしのげるような場所(シェルター)ばかり。そこに立ってみると、かつての彼らの暮らしぶりが易々と想像できます。岩絵のある洞窟・岩陰はガイドなしで訪問することができず、もちろんかつてのサンの人たちのように火を起こして夜を明かすこともできません。が、泊まることが可能な岩絵のない洞窟は無数にあるので、数日かけてのトレッキングではこういった洞窟に宿泊します。
ゲーム・パス・シェルターのサンの岩絵

山を歩き、山に泊まり、山そのものを楽しむ

私はお客様個人の手配旅行以外にツアーの企画を担当し、いつも旅の予定ばかり考えています。そのせいか、眠っているときに「旅の夢」を見て、夜中に目覚めることも多々あります。ここ数年で最も多く見る夢は、景観がドラケンスバーグそのものの山々を、大きなバックパックを背負って歩いている、前にも後ろにも絶景、空気は清々しく、空はどこまでも青く広がっている、という内容。目覚めた後も足の裏の地面の感触や頬をなでる風、パッキリとした日差しの感覚がありありと残っていて「もう少し見ていたかったなぁ」と思います。

山中の洞窟や岩陰に宿泊

細切れのルートを何度か歩いてはいるものの、夢に見るくらいですから、いつかは北のカテドラル・ピークから南のブッシュマンズ・ネックまでベストなルートを選んで、スルーで歩きたいと思っています。洞窟に泊まるのでテントは不要、沢水はきれいで美味しいので水も必要なし、シャワーは天然のプールで十分です。問題は食料くらいでしょうか?アフリカ大陸で最も歩きごたえのあるロングトレイルになることは間違いありません。
夢から覚めると真夜中にもかかわらず本棚をあさり、ドラケンスバーグのトレイルを網羅したガイドブックを眺めることもしばしば。行きたい気持ちは募るばかりですが、南北をスルーで歩くには、ひと月近くかかります。さすがに弊社でも1カ月の休みはもらえないだろうということで、荷物を各自で背負ってともに歩いてくださるお客様がいらっしゃらない限り、やはり「退職後の夢」ということになるのかもしれません。

道祖神

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