風まかせ旅まかせ Vol.28 鳥(酉)にまつわる些細な話

正月休みの間、軒下に転がっていた鉢皿と1mほどの塩ビパイプで、鳥用の小さな餌台を作った。早速庭の梅の木に縛り付け、ミカンを2つ半分に切り餌台にのせた。ついでに朝食のゴハンの残りを一握り入れておいた。その状態で室内に戻り、カーテンの隙間から覗いていると、10分もしないうちに小さな若草色の鳥が2羽やってきてミカンを啄み始めた。双眼鏡を取り出し覗き込むと目の周りが白い。メジロだ!メジロが住まいの近くに居ることが嬉しくなり、椅子を運び本格的に観察を始めた。
しかしものの数分で、メジロは大型の鳥に追いやられてしまった。甲高い鳴き声が仲間を呼んでいるかの様子、すぐに仲間の鳥が2羽やってきた。ヒヨドリだ。この鳥はよく自宅前の公園で見かける。盛んにミカンを啄んでいる。寒いこの時期には餌となる虫も少ないのだろう、と思う。
あらかた食べ散らかしたヒヨドリが飛び去ると、数羽のキジバトがやってきて、芝生に落ちたミカンの皮やゴハンをきれいに後片付けしていった。1時間ほどの間に3種10羽ほどの野鳥を観察することができた。新年早々得した気分だ。
ところがその少し後になって梅の木を見ると、周辺に鳥の羽が散らばっているではないか。高さ2mくらいの位置に設置したにも関わらず、どうやら地面を掃除していたキジバトが猫に狩られて…。正月早々の得した気分が、なんだかちょっとした罪悪感に変わってしまった。同時に、20年以上も前にナイロビの駐在員から聞いた話を思い出した。
駐在員が仕事を終え自宅に帰ると、当時雇っていたハウスガールが嬉しそうにやってきた。「今日はとてもいいことがあったのよ。私が朝、洗濯をしていると、リビングの窓から大きな白い鳥が飛び込んできたの」と言う。それで、その鳥はどうしたのって聞くと、
「もちろんお昼ご飯に食べちゃった。いつも神様にお祈りしているから、きっと神様からのプレゼントね。とてもおいしかったわ」。
今年は、私も年男。どうぞ、皆様にも神のご加護がありますように。
本年もよろしくお願い申し上げます。

道祖神

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道祖神