ここ数年毎年企画・催行されている、南アフリカとボツワナの国境地帯にまたがって設置されているカラハリ・トランスフロンティア・パークのツアーに同行させていただきました。2018-2019年の南部アフリカは記録的な旱魃に見舞われ、特にナミビアでは100年に一度もといわれる大旱魃を経験した年となりましたが、二十数年ぶりに再訪したカラハリは、滞在中少々季節外れの遅めの雨に降られることもあり、砂地に灌木が点在する原野は緑に変わり、花々に彩られて瑞々しさを見せていました。日中は雨雲と空のコントラストや雲が多い空ならではの夕日の照り返しなどの美しい風景も堪能、遠くに煌めく夜の稲光を眺め、遠雷の音を聞く、カラハリらしい夜を過ごすことができました。反面、水が多いということはそれだけ野生動物が散ってしまうこともあり、例年に比較して野生動物の数が少なめで、少し寂しいサファリとなったのは否めません(乾いていれば水場近くに多く集まって見やすくなる)。雨のおかげで通常よりは少し涼しかったですが、それでもサファリ中は暑かったです。
毎日気温が高くなり、熱せられた地面は上昇気流を生んで、午後には空のあちこちに積乱雲ができ、園内のそこかしこで雷雨が降るという毎日でしたが、滞在中半分ずつで宿泊予定だった園内の南北に離れて位置する2カ所のロッジのうち、北側のポレンツァの部屋が強風を伴った雷雨で破壊されてしまい、何とか部屋を用意してもらって1泊はできましたが、その他の滞在は全て南部のルーイポッツへの宿泊に変更となり、どちらかというと南部中心のゲームドライブとなりました。印象としては猛禽類が異常に多く、そのせいかジリスやミーアキャット、マングースなどの小型の哺乳動物をほとんど見かけることはありませんでした。ここでは頻繁に見られるはずのオオミミギツネが少なかったのも、それが理由かもしれません。それでも、立派な体躯とオスの黒いタテガミが有名なカラハリライオンや、チーター、リビアヤマネコ、ブチ&チャイロハイエナ、珍しいところでは夜行性のアードウルフも見ることができ、総合的にみればまずまずのサファリだったのではないかと思います。
カラハリは東アフリカのサバンナのように見渡せばあちらこちらに動物が眺められる、というような場所ではありません。何時間も何も見かけない砂の道を走り続けることもあります。そのため野生動物に、特にお目当ての野生動物に出会えた時の感動は大きく、動物の方も厳しい環境の中で「研ぎ澄まされた生」を生きているからか、どれもこれも美しく見えます。彼らが纏う張り詰めた緊張感のようなものがそう感じさせるのかもしれません。確かに他の地域では見られないような少しユニークな野生動物に出会える場所で、そういった目的で訪問する方が多い公園ではありますが、日々を生き延びることが楽ではない環境に暮らす、野生動物の持つ美しさや輝きのようなものを見るというのも、ここに足を運ぶ大きな理由になるのではないかと思います。今回ご参加いただいた7名様のうち、4回目がお一人、3回目がお一人、2回目が4名様いらっしゃいました。皆さんサファリ目的でアフリカに何度も足を運ばれている方々ですが、そういった方々を惹きつける魅力は、やはりそういった部分なのかもしれません。
羽鳥