2024年11月16日発のハネムーン手配旅行でケニア、ジンバブエ、ナミビア、南アフリカに行かれた、ポニョ様からのレポートです。
私はかねてから、「アフリカで朝日と夕日が見てみたい」、「大地を感じたい」、「砂漠の静けさを感じたい」と思っており、新婚旅行の候補にアフリカを希望していた。旦那の友人が2名も(それもハネムーンで!) 道祖神さんにお世話になったと聞き、リモートで打ち合わせをすることに。休める時期、日数を相談しつつ、見たい動物や行きたい場所の話までみっちりと。気づけばアフリカ以外考えられなくなっていた。夫婦の希望を詰め込んだ旅行を企画して頂き、今でも思い返す貴重なハネムーンとなった。
1日目
関空からナイロビ空港へ。長時間のフライトに身構えていたが、エミレーツ航空の手厚いサービスのおかげで快適に過ごすことが出来た。飛行機の天井に星空が登場する遊び心に旅のテンションは高まる。経由地のドバイには4時間ほど滞在できたので、空港内を散策。1億ドルが当たる宝くじに惹かれたが、一口500ドルと聞き断念……。どなたか挑戦してほしい。
ナイロビ空港では、フェスタスさんとジョンさんが出迎えてくれた。心なしか強く感じる日差し、沢山の車と人でアフリカに到着したことを実感。お二人は英語と日本語を交えて、ホテルまでの道中でケニアのことを紹介して下さった。途中、スーパーマーケットによってケニア産のお酒やチョコレートを購入。ウガリの元になる粉の大きな袋を見たり、惣菜コーナーを覗いたりと早くも現地の食文化に触れることができた。オレ・セレニ・ホテルは非常に清潔で食事も美味しく、快適だった。館内のインテリアが気に入り、この旅のお土産探しのヒントにしよう、と夫婦で盛り上がった。


2日目
ジョンさんのお迎えでマサイ・マラ国立保護区へ。長時間のドライブも、町の様子やサファリのことを話していたらそれほど気にならない。空港からホテルまでの景色から一変して、いわゆるアフリカっぽい景色(牛を追う子供、カラフルな建物、路上に溢れる人など)が見られケニアの多彩さに気づかされる。

途中のトイレ休憩で立ち寄ったお土産屋で気に入ったものを見つけ、価格交渉に挑戦。日ごろ値段が付いたものしか買わないので何が正解か分からない。悪戦苦闘しながらお会計を終えると結構な時間が経っていた。夕方にサファリが控えているのだから時間管理をしなくてはいけなかったな、と反省。
保護区に入ってすぐにシマウマやガゼルに遭遇し、「とうとうサファリに来たんだ!」と感動。と同時に、無心で草を食べる彼らにとってはこれが日常なんだな、と思うなど興奮と冷静さが同居する不思議な感覚を持った。サファリの草むらは日本と同じ匂いがした。ロッジで昼食後、少し休憩して夕方のサファリへ。大本命のチーター(しかも家族)を見つけて、出来るだけ近づいてくれるジョンさん。我々しかいないため、見たい動物は飽きるまで見せてくれる。車の天井を持ちあげてイスの上から望遠鏡で覗くと、毛づくろいをしている様子が良く分かる。その後はライオンも夕日も見られて大満足の1日だった。

3日目
この日はお弁当を持って夕暮れまでみっちりサファリを楽しんだ。せっかくだからBIG5を制覇しようとなり、ヒョウを探しに。ヒョウは木の上にいることが多く見つけるのが難しいそうだが、子供が母親とじゃれて木の下から川辺あたりを行ったり来たりしていて見つけることができた。チーターよりも大柄で肉厚な、セクシーな印象。ゾウの親子の水浴びやヌーの大移動で有名な川も案内してもらった。川にはワニがいて、大移動でやってきたヌーを食べるそう。1匹食べれば1年越せると聞いてワニの生命力の高さに驚いた。お昼は木の下にテーブルを出して、お弁当を広げた。サファリに足を着けられる日が来るなんて、と興奮。そして何よりも、ジョンさんと仕事や家族について話した時間がとても有意義で忘れがたいものだった。ケニアに今ある価値観、それに対するジョンさんの考えを聞いてどう感じたか話して、また話が広がって、とガイドとお客の関係を超えて人として繋がることができたように感じた。広大なサバンナを見ながらこんな話をしてるなんて人生って感じだな~と思ったのをよく覚えている。


午後はクロサイを狙って移動。道中で水牛の群れにも遭遇した。クロサイは従来の慎重な性格と、乱獲によって数が減っているため滅多に見られないそう。無事目撃したのだが、サイ自体をあまり見た記憶がないからか見つけた感動よりも、あれがクロサイかという新たな知識を得た感が強かったのも個人的には面白かった。

夜はロッジのバーの方が勧めてくれたダワー(スワヒリ語で薬という意味らしい)というカクテルを頂く。レモンと蜂蜜をウォッカで割ったもので、この旅で一番お気に入りのドリンクとなった。
4日目
今日でサファリは最後。あわよくばチーターが走る姿を見て、ライオンの鳴き声が聞きたいと伝えるも、狩りは早朝や夜中が多く、ライオンが吠えるのも縄張りの主張のためなので夜中のことが多く難しいだろうね、とのこと。少々落ち込むも期待するのはタダだしな、と思っていたところジョンさんのおかげでどちらも奇跡的に遭遇することができた。昨日とは別の場所にいたチーター親子を見つけ、見やすい位置に車を停車。何度見ても美しいモデルのような小さな頭、すらっとした肢体。草むらにごろりと横たわる様子は一見可愛くも見えるが、ひとたび目が合えば印象はガラリと変わる。射すくめられるような迫力があるのだ。しなやかに変化するチーターの表情や動きに目を奪われ観察をしていると、どうやら2匹が移動するらしいぞ、今から狩りをするかもしれない、と言われ後を追う事に。慎重に獲物との距離を縮める2匹。こちらも注意深く見ていないと見失ってしまうほど草木に溶け込んでいる。パッと飛び出して獲物へ一直線――残念ながら失敗に終わった。意外だったのが、チーターも狩りに失敗するのだという事。インパラは歩幅も大きく、十分な距離があれば逃げ切れるようだった。あきらめが早いのにも驚いたが、これは体力を温存するためとか。効率良く無駄なく生きている姿が印象的だった。肉食動物は草食動物の群れを観察して、年老いたものや病気があるものに狙いを定めるとジョンさんから聞いた。命を次世代につないでいくことが最も大事な野生動物において、老い先短いもの・繁殖能力の低いものから狙われ死んでいくことは、群れにいる他の命を助ける、意味のある死でもあるんだな、と感じた。ただ生きてるだけに見えた動物たちの世界が合理的な秩序の上に成り立っていると知って、自分の世界が少し広がった気がした。



5日目
初日のホテルに向けて朝から移動。ティピリクワニ・マラ・キャンプとはお別れ。食事はどれも美味しく(メインをケニア料理か西洋料理どちらにするか選べたのも良かった)、最終日まで飽きることはなかったし、部屋も隅々まで快適で想像以上にリラックスできた。帰り道の路上には子供が多くいるように感じられ、進学率や出生率について話した。妊娠、家の手伝い、周りの友達につられて通学を辞めてしまうなどで、大学進学率は1%程度だそうだ。一方で大学に通って都市部で働く人々は段々と子供を持たなくなっているらしい。日本と違うところと似ているところ。ケニアはこれからどんな運命を辿るんだろう、と思った。ホテルに到着すると疲れていたのかすぐに寝てしまった。

6日目
早朝にホテルを出発し空港へ。ジョンさんとの別れは意外とあっさりで拍子抜けしたが、これが旅だよな、と思った。ここからヴィクトリアフォールズ空港へ。到着してもなかなか人が降りず後方席の我々も座って待つことに。清掃員が来て掃除が始まったので、海外は乗客が降りる前に掃除を済ませるんだな、効率が良いのか悪いのか分からないなと思っていたところ、急に添乗員に名前を呼ばれ訳も分からず飛行機を降りた。よくよく話を聞くと、我々が載っていた飛行機はケープタウンが最終目的地でヴィクトリアフォールズ空港では4名しか降りないそうだ。そんな電車みたいに途中下車する前提の飛行機があるなんて、と人生で初めての出来事に驚くとともに、とてつもない海外旅行っぽさにわくわくした。早く仕事を終えたいのであろう税関職員のプレッシャーも気にならないほど新鮮で面白い出来事だった。
その後は送迎車に乗ってホテルへ。非常に高級感のある素敵なホテルで、ユーモラスなマネージャーがチャーミングだった。お祝いのシャンパンも冷蔵庫の飲み物も全部飲んで良いよ!という太っ腹ぶりに感動。ヴィクトリアフォールズから立ち上る水煙をベランダから眺めながら身支度をして滝へ。久々の歩いての観光、運動に充実感を覚えつつ、徐々に火照る身体。滝のゴゴゴという音を聞きながらビュースポットを巡り、所々で滝の水蒸気を浴びる。昨日までとは違うアドベンチャーにときめいて、残り2つの滝も見に行こうね、と約束した。滝を見た後はホテル裏にあるアートマーケットを散策したり、観光客でにぎわう店で夕食を取ったりした。夕食を注文した後に大雨と雷が落ちて店が停電。いつ復旧するかも分からないと言われ、ろうそくの炎の中で食事をすることなったのも、停電でも作れるメニューに変更してくれと言われたのも面白くて海外旅行の醍醐味が凝縮された一日だった。


7日目
朝食後に昨日のアートマーケットをふらふらしていたら、運命的な出会いをしたので思い切って絵を購入。玄関に飾って毎日眺めるほど気に入っている。飛行機でウィントフックへ。これまでの2か国よりも建物や道路が整っている印象。ホテルはこの旅の中で一番質素でザ・ホステルという感じ。ホテル近くなら歩いても大丈夫とのことだったので、近くのスーパーへ。虫のお菓子が売っていて驚いた。土曜日は午後からお酒の販売が出来なくなるらしく、泣く泣く購入を断念。ホステルに併設されたレストランでラグビーの試合を観戦しながら夕食を取ったが、気づかぬうちにエスカルゴを頼んで完食していた……。


8日目
ナミブ砂漠のガイドとロビーで待ち合わせ、出発。ダメ元で有名な高台にあるホテルを見たいと言ったら立ち寄ってくれた。レンガ造りの精巧な建物が多く、全体的にヨーロッパ色が強いと思っていたら旧ドイツ領とのこと。占領国の特性が出るのは興味深いと思う反面、生活の隅々にまで根付くほどの支配だったのかと思うと複雑な気持ちに。ロッジまでの道中は後半から映画でしか見たことがないような岩と砂ばかりの道で、アップダウンも激しく、ジェットコースターのようなスリルを味わえる。(乗り物酔いのしやすい方は注意)

ロッジは砂漠にあるとは思えないほどお洒落で快適。空調もWi-Fiも問題ない。水道をひねった直後は水が熱くて驚いたがしばらくすれば冷水に変わる。日中は40℃以上になるので出歩けないが、ホテルのプールで泳ぐのもまた一興。砂漠のプール!なんて贅沢!と思いながら出たり入ったりを繰り返した。夕方ごろから夕日見物へ。ガイドに砂丘のふもとまで連れていってもらう。初めて登る砂丘の感覚に四苦八苦しながら、展望の良さそうな場所を目指す。日の入りの方角的に地平線に沈む夕日は見られなかったが、砂丘を自由に探索できただけで大満足。少ししっとりした赤茶色の砂。砂嵐。風で出来た波打つような砂の模様。憧れていたものが沢山溢れていて胸がいっぱいだった。ロッジに戻って日没の空を観察してから夕食を食べた。時間とともに変わる空の色がどれも美しかった。夕食はビュッフェで、色々な動物の肉をその場でBBQ調理してくれる。虫のおかずもあって恐々挑戦。味は……ぜひ現地でお確かめください。砂漠に面したテラス席をゲットしたので、満点の星を見ながらのディナーとなった。砂漠の夜は冷えるのでフリースとダウンベストが欠かせなかった。




9日目
日の出を見るために早朝にデッドフライへ。朝日に染まる砂丘がピンク色に見えた。デッドツリーという立ったまま枯れている木を鑑賞。時間が経っても立ち続ける木もさることながら、全ての音が消え去ったような静かな空間に圧倒された。木からは香木のような良い匂いがした。いくつか砂丘を見学したあと、デューン45に登った。砂に足を取られないように足元を見ながら歩いていると、気づけばかなり高いところまで登っていた。歩幅程度の広さしかない道なき道、勿論手すりもなく踏み外せば砂の斜面を滑り落ちるかもしれない。一気に怖くなって固まる私。降りたくても方向転換ができない。震える気持ちを奮い立たせて、90度回転しながら景色を目の端に捉える。本当に砂しかないんだ。あと半回転。ビューっと吹き付ける風の音が聞こえる。へっぴり腰でなんとか地上に戻ってきた。砂丘を乗り越えて反対側から戻って来る人もいて、私にもう少し勇気があれば、と残念に思った。




ウィントフックへ戻る間にガイドのMCと同い年だと判明し、一気に打ち解けた。もっと早くから自己開示したらよかったな、と反省しつつ気づけば夕食を一緒に取ることに。観光客に一番人気というレストランに連れて行ってくれるという。動物のはく製や昔の地図などが所狭しと並んでいて、さながらテーマパークのよう。料理はサラダにBBQ(シマウマやワニなど変わり種あり)もハンバーガーもなんでもあった。まずは生ビールで乾杯。仕事や恋愛のことを話して、文化や当たり前の違いに驚いて……学生時代の留学生との飲み会を思い出す楽しいひと時だった。ビール1杯くらいならこの国では飲酒運転にならない、という彼の言葉を信じてホテルに送ってもらった。別れは寂しかったが、それ以上に良い出会いに恵まれたことが嬉しかった。
10日目
最後の目的地ケープタウンへ出発。あいにくの強風でテーブルマウンテンまでのケーブルカーが休止しており、ウォーターフロントとタウンの散策に変更した。ウォーターフロントにはお洒落なレストランやお土産屋が立ち並び、今までとは違う都会的な雰囲気に新鮮さを覚える。肉料理に飽きていた私は、念願のシーフードと白ワインのマリアージュに早くも夢見心地。港に泊まるヨットや美術館を楽しんだ後は、ボカープ地区まで散歩した。街中も比較的安全そうだったが、所々緊張感のあるエリアもあったため人通りの多い大通りを選んで歩く。ボカープ地区には色とりどりの壁をした家が立ち並んでいて、どこで写真を撮っても絵になった。パレスチナ問題に対する主張が書かれた壁もあり、しばし国際問題に思いを馳せる。ウォーターフロントは夜間も出歩けたので、夜景を見ながら久々の夜遊びを楽しんだ。



11日目
最終日は、ケープ半島を堪能できる乗り合いツアーに申し込んだ。我々以外の3組は、偶然にも全員イギリスから来ているとのことだった。アットホームな雰囲気に日本のバスツアーとは異なる空気を感じながら、近くの老夫婦とおしゃべり。日本のことやハネムーンのことを話したのだが、むこうの方々のつかず離れずのコミュニケーション能力にはつくづく感心した。お互いの人となりを知って、楽しいツアーにしようとする姿勢がとても新鮮だったし、実際ツアーは楽しくて別れる時は少し寂しくなってしまった。私もあんな風になれたらな、と思いながら日本で生活しているほど衝撃的だった。喜望峰からは美しい海が臨めて大航海時代に思いを馳せられたし、砂浜でのびのびと過ごすケープペンギンはとても愛らしかった。極め付けはカーステンガーデンボッシュ国立植物園だ。とにかく広大で見どころが沢山あり、全然時間が足りなかった。国花であるプロテアの花が見たくて、園内を縦横無尽に駆け巡ったのも良い思い出だ。時間が許せば1日中散策できたと思う。大充実の半日ツアーを終え、最後の晩餐を楽しんだ。



翌日は日本へ向けて出発。空港へ向かうタクシーからは綺麗なテーブルマウンテンが見えた。
生命の神秘もアドベンチャーもリゾートも海外らしさも感じられるアフリカ。一生忘れられないハネムーンになったのは言うまでもなく、必ずまた訪れると決意するほどの魅力にあふれた大地だった。