毎年1月から2月にかけて、アフリカ大陸の東側、インド洋を南西に向かって季節風が吹きます。『カシカジ』と呼ばれるこの風に乗って、古来よりアラブのムスリム商人たちはアフリカ大陸の東海岸と交易をしていました。そのインド洋交易に使われていたのが『ダウ船』と呼ばれる三角帆の船、そして交易によって栄えたアフリカの東海岸を総称して『スワヒリ・コースト(海岸地域)』と呼びます。アラブとアフリカの文化がブレンドされたこの海岸地域の歴史は古く、内陸部のイギリス植民地文化の影響が色濃いケニアとは大きく趣が異なります。人々の佇まい、食事、建築、音楽などすべてが独特です。そんなスワヒリ海岸地域の文化の真髄とも言えるのが『ダウ船』です。『ダウ船』の歴史は古く、紀元1世紀ごろには書物にその名前が登場します。今回のツアーは、そんな古来から製法の変わる事のない『ダウ船』を一艘貸し切って、『スワヒリ・コースト』を航海することそのものが目的でした。
今回のツアーのメインとなるのは、ケニアの『ラム島』からタンザニアの『ザンジバル島』までの8日間の航海です。出発地のラム島は、ケニアで最も古い港町の一つで、かつてはヨーロッパ、インド、アラブ、そして中国をも結ぶ東アフリカ有数の港として栄えました。とても小さな島で、島内を走る車は車は地方長官の乗用車1台のみ、人々の移動手段はロバと徒歩が中心です。アフリカとは思えないようなイスラム風の町並みが残る旧市街は、ユネスコの世界遺産にも指定されています。薄暗い細い路地を歩けば、時間が止まったかのような中世イスラムの世界に浸ることができます。往時の繁栄を偲ぶものはほとんど残されてはいませんが、昔ながらの素朴なのんびりした雰囲気を感じることが出来る島でした。そして、今回のツアーの相棒ともいえる『ダウ船』と航海の仲間たちはラム島に暮らす船乗りたちです。
『ダウ船』の特徴は何よりも徹底的に木造帆船であること。1枚の大三角帆(ラテンセイル)を持ち、外板を固定するための鉄や釘を一切使わず、ココヤシの繊維で作った紐や瀝青(タール状の粘土)で組み立てることが特徴です。木材を紐で縛って組み上げる事から、ダウ船は「縫合船」とも呼ばれます。主な動力は三角帆で受ける『風』そのものですが、現在では小さなヤマハの船外機を付け、風とエンジンの2つの動力を使って走るのが一般的です。外洋に出てからの航海中の一番の魅力は風に吹かれる船上で過ごす時間そのものでした。
道中の港町に寄りながら、夜は各港町の宿泊施設に泊まり、また翌朝からは外洋へと出発。船上では毎日釣り上げた魚を料理し、お腹いっぱいになったら甲板で風に吹かれながら昼寝。ケニアからタンザニアへと海を渡り、国を超え、目指すゴールはタンザニアのザンジバル島です。
航海も中盤を乗り越えました。シモニ半島でケニアの出国手続きを終え、海を渡っていよいよ国境越え。タンザニアの沖に浮かぶザンジバル諸島へと進みます。まずは大きくインド洋を横切りペンバ島へ。果たして無事に海上の国境越えが出来るでしょうか。(後編に続く)
■インド洋・スワヒリ・コースト航海~ダウ船で巡る島旅~ 14日間
2020年2月7日(金)出発 748,000円
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生野