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2019.4.26発 エチオピア歴史街道ダイジェスト 11日間

旅行期間が長すぎて日本人のお客様には合わない、といわれることもありますが、弊社のこだわりが最も表れているツアーでもあるため、変わらず企画し続けている「エチオピアの大自然と民俗、世界遺産、ゆったり・たっぷり 15日間」。今年のGWは10連休ということで、この日程に合わせて金曜夜出発の11日間特別短縮版を企画・催行し、添乗員として同行させていただきました。
15日間との相違点は、前半のアディスアベバからラリベラまで、後半のバハール・ダールからアディスアベバへのそれぞれの陸路移動を日数短縮のために空路移動に変え(この変更で、バティとサンバティ2か所の定期市訪問がカットされるため、生活文化的な見どころが減ります)、世界自然遺産のシミエン国立公園訪問をカットし(この変更で、より歴史・宗教面へのフォーカスが強くなります)、代わって有名なラリベラの岩窟教会よりも古い時代、6世紀にティグレ州のあちこちに築かれた岩窟教会への訪問を組み込み、更に歴史と宗教面の見どころを強化した内容になりました。
見どころの1つは超有名な世界文化遺産のラリベラの岩窟教会群。12世紀、ザグウェ王朝の王ラリベラ(のちに聖人として聖列)の指示で、イスラム教徒に奪われたエルサレムに代わる第二のエルサレムとして築かれた11の教会です。教会の多くは固い花崗岩の上に載った、削りやすい凝灰岩を彫って築かれましたが、モノリシック(底部のみ天然の岩盤と繋がった、完全な一枚岩のもの)とセミモノリシック(底面と天井部など、複数の面が岩盤と繋がったもの)の2種類があり、それぞれ正確な数学的計算・設計の上に、当時の石工の技術の粋を集めて作られています。エジプトのピラミッドほどではありませんが、メディアへの露出が多いため、ご覧になる前から見たような気分になってしまう方も多いかもしれませんが、実際に目の当たりにすると迫力が段違いです。添乗員としても個人的にも何度も足を運んでいますが、あかり取りの窓の周辺に施された彫刻など、見るたびに感慨を新たにする素晴らしいものです。

ラリベラの教会群で最古と推定されている聖マリア教会

天然の岩を刻んで造形したとは到底思えない教会内部

色も鮮やかに残る天井装飾

巧みなノミ捌きで刻まれたあかりとりの窓の軽やかな装飾

女人禁制の聖ゴルゴダ教会内部、ラリベラ王の墓所はこの部屋の奥にあります

傑作建築の一つ、聖エマニュエル教会

アッバ(神父)の服装と儀礼用の十字架も、教会によって一つ一つ形状が異なります

ラリベラにある11の教会中の最高傑作、聖ギオルギス教会

水平は完璧に出していますが、上への線は垂直ではなく上に行くにしたがって内側に絞られています

光の入り具合も計算されている至聖所前の祭壇

丸顔にアーモンド形の目を描くエチオピアスタイルは変わりませんが、歴史を感じさせる内壁の絵

西洋のイースター(復活祭)は、今年は4月21日の日曜日でしたが、異なるカレンダーとそれに合わせた祭礼を行うエチオピアでは、今年はラリベラ滞在中の4月28日がイースターでした。ということで、街でもあちこちに緑の草を敷き詰め(場を清浄化するため)、人々は同じ草を鉢巻のように頭に巻き、この日から遡ること2カ月前から始めた断食(イスラムと異なり、断つのは肉や魚などで、牛乳や卵の入らないパン、野菜とマメのシチュー、サラダなどは食べてよい)の明けとキリストの復活を祝います。私たちが宿泊していたホテルでも、従業員の方々がコーヒーセレモニーで祝っていたのですが、たまたまホテルに居合わせた私たちもご相伴に預かりました。このイースターが過ぎると、少しずつ雨が降り始め、6~8月のエチオピア北部の雨季到来の雰囲気が濃くなっていきますが、ツアー中に雨に降られることはほとんどなく、高原の国エチオピアとは思えないような暑い日が続きました。
イースターということもあってホテルではコーヒーセレモニーに招かれました

生豆を炒って挽き、ジャバナと呼ばれるポットの中で煮立てたものが供されるコーヒー

雨季前で、降雨があった場所では緑が美しい土地が広がります

そしてもう1つの見どころは、日本からのツアー客がほとんど訪れない担当者である私イチ押しの場所、ティグレ州の岩窟教会群です。ラリベラの教会群建造から600年ほど遡った6世紀に、それまでの弾圧からキリスト教が公認、国教化されたローマ領のあちこち(アンティオキア、アレキサンドリア、コンスタンティノープルなど)からエチオピアにやってきた9人の聖職者(9聖人)によって築かれたとされる教会・修道院の他、彼らが持ち込んだ修道という修行の形態を実現するために、険しい山の上や人跡未踏の岩壁に横穴を穿って築かれたよりシンプルな構造の穴倉のような教会が、140カ所を超える数存在しています。まだ世界遺産登録はされていませんが、近いうちに間違いなく登録されるだろうこれらの教会への訪問を難しくしているのは、その立地する場所の険しさです。今回訪問を選択したいくつかの教会・修道院の中には、ほとんどロッククライミングのようなスタイルで岩を登り、やっと到達できたものもありました。少々ハードで、麓の村人たちがサポートしてくれるとはいえそれなりのリスクもありますが、訪問できてよかったとご参加者の皆さんからも感想をいただけました。
ティグレ州の岩窟教会を代表するアブーナ・イェマタへの山道

教会の入り口は登り口から約300mの位置にあるため、上からの眺めは抜群

半ばロッククライミングのような登りを慎重に続けて到達します

壁画が美しい、アブーナ・イェマタ修道院の内部

アブーナ(教父)・イェマタ以下、シリアからエチオピアに到来した9聖人の絵

至聖所への入り口には、守りとして天使ガブリエルとラファエルの絵が

修道士はこのキャンドルに火をともして毎日の勤行を行います

アブーナ・イェマタ入り口への細い道、右手は崖ですっぱり切れ落ちています

時たま里に下りるものの、修道士は多くの時間をここで祈りに費やします

現存するエチオピア最古の教会の一つ、4世紀創建のアブレハ・ワ・アツベハ教会

ユダヤ教徒の女王グディトによる焼き討ちの跡が残る天井

ポルトガル絵画の影響を受けたといわれる聖母子像

そして後半戦は、エチオピア最古の都アクスム、次いで16世紀に都があったゴンダールへと続いていきます。アクスムではおなじみのステッレ(アクスム王国時代に建てられたオベリスク)やシェバの女王の宮殿といわれる遺構、そしてモーゼがシナイ山で神から受け取った十戒の石板を収めたアーク(聖櫃)が安置されているとされるシオンの聖マリア教会の礼拝堂などを見学。アクスムは地中に埋もれているだろうと想定される遺構の9割は未発掘で残されているとされており、これからの発掘と発見が楽しみな場所でもあります。
どのような手法で運ばれ、建てられたかわからない、アクスムの巨大なステッレ

「失われたアーク」が安置されているといわれる、シオンの聖マリア教会の礼拝堂

シオンの聖マリア教会内、ファシリダス帝によって築かれた女人禁制の修道院内部

シェバ王国時代の宮殿跡と推測されている遺構

ゴンダールではこちらも多くの方がご存知であろう、ゴンダール朝のファシリダス帝以下6人の皇帝・皇妃によって築かれた、交渉のあった様々な国の建築様式が融合したゴンダール様式の城跡と、イスラム教徒勢の焼き討ちを生き延びた奇跡の教会「デブレ・ブレハン・セラシー教会」を見学しました。堂内の天井には有名な天使の絵が描かれています。
16世紀当時の都だった、ゴンダールに築かれたファシリダス帝の城

ヨハンネス1世、イヤス1世、ダウィト3世、バカッファ帝、メントゥワブ妃の5人によって築かれた城や建造物が点在しています

ティムカット祭ではハイライトの聖水浴びが行われるファシリダス帝のプール

イスラム教徒勢の焼き討ちから、ミツバチの群れによって守られたといわれる奇跡の教会、デブレ・ブレハン・セラシー教会

有名な天使の天井画

毛皮の衣服をまとってライオンとヒョウを従えた聖ゲブラ・マンファス・ケッドゥスと片足を失った代わりに6枚の翼を背に得た聖テクレ・ハイマノウトの壁画

そして、首都アディスアベバを除いた最後の訪問地、タナ湖畔のバハール・ダールへ。水量は少ないものの、それなりに迫力のある青ナイル滝と、エチオピア最大の湖で、青ナイルの源流の一つでもあるタナ湖上をボートで遊覧、ゼゲ半島に位置する修道院を訪問しました。修道院があるウラ村と「聖母マリアの契約の赦し」という名前を冠したウラ・キダネ・メレット修道院を訪ね、文盲の信者にキリストの物語や教えを語るために描かれた、新しいものではありますが見事な壁画が楽しめます。
水量は少ないものの、迫力ある青ナイル滝

国民食インジェラを焼くデモンストレーションを見せてくれた村人

タナ湖をボートで遊覧し、ゼゲ半島の修道院へ

至聖所は二人の熾天使の絵によって守られています

戴冠する聖母マリア

磔刑に処されたイエスと、12使徒の殉教を描いた壁画

この後、アディスアベバへ空路移動し、国立博物館や名産のコーヒーなどを目当てのショッピングを済ませ、ツアーは帰路につきました。久々に同行させていただいて改めて実感したのは、やはりエチオピア北部を巡る際に、旧約・新約双方の聖書の知識があるのとないのとでは、ずいぶん楽しみの深さが異なるという点です。歴史についてはガイドからの説明で何となくお分かりいただけるのですが(スーダンやエジプト、ローマと絡むので、そちらの歴史をご存知であればなお楽しめます)、宗教面については知らない物語をベースに説明を聞いてもいまいちピンとこないことが多いだろうと思います。まだ未訪問の方で、これから北部エチオピアを訪問してみようとお考えの方は、聖書を読むまではいかずとも、映画等でイエスの一生やそのエピソードを知っておくことをお勧めします。
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