2023.04.06発 山形豪さんと行く カラハリ・トランスフロンティア公園写真撮影ツアー 11日間

2023.04.06発 山形豪さんと行く カラハリ・トランスフロンティア公園写真撮影ツアー 11日間

日本ではようやく新型コロナ関連の規制が撤廃されたばかりだが、海外はだいぶ前から” ポストコロナ” の日常に移行しており、アフリカ各地のサファリロッジも通常営業に戻っている。海外旅行がほぼ元通りにできるようになったタイミングで南アフリカとボツワナに跨るカラハリ・トランスフロンティア公園への自然写真撮影ツアーを催行した。砂漠の野生動物たちはいつも通りの強烈な命の輝きを放ち、素晴らしい撮影機会の数々をもたらしてくれた。

カラハリ・トランスフロンティア公園は、南アフリカとボツワナに跨る総面積38000平方キロメートルの巨大な保護区であり、南部アフリカ内陸部に広がるカラハリ砂漠の西部に位置している(ボツワナ中部に位置するセントラル・カラハリ動物保護区とはまったく別の場所なので要注意)。砂漠とは言っても比較的草木の多い環境であるため動物が多く、特に大小様々な肉食獣たちとの遭遇率が高いことで知られている。そんなカラハリへのツアーを4月6日から16日までの日程で開催した。実に3年ぶりとなる、待ちに待ったツアー再開であった。

カラハリの環境は厳しい。極度に乾燥した大地には日中情け容赦なく太陽が照りつけ、夏場( 12月〜2月)の気温は45℃を超えることもある。そうかと思えば夜は放射冷却のために気温はぐんぐん下がってゆく。以前、真冬の7月にキャンプをしていたとき、あまりの寒さに目を覚ますとテントの中の気温がマイナス7℃にまで下がっていたことがあった。寒暖差は一日の中でも激しく、24時間で春夏秋冬が巡ってくるようなものだ。しかしその厳しさ故に、そこで生き抜く動物たちは美しく、強烈に輝いて見える。そして4月は秋にあたり、気候的にもっとも極端な時期を避けるという意味でサファリに適した季節とも言える。

真昼の砂漠をゆく子連れのチーター。カラハリはチーターの数が多いことでも知られている。
真昼の砂漠をゆく子連れのチーター。カラハリはチーターの数が多いことでも知られている。

カラハリを代表する動物はいくつかいるが、目玉の一つはライオンだ。この地域のオスたちは歳をとるに従ってたてがみが黒くなってゆくことで知られており、その迫力と美しさは見た者を圧倒する。そんなカラハリライオンのオスに三日目の朝出会った。明け方3時半、一つ目の宿泊先であるロイプッツ・ロッジで眠りについていた我々は、突如「ウオォォォッ!、ウウオオォォォッ!!」という凄まじい咆哮で叩き起こされた。ライオンの縄張り宣言だった。ほどなくして声の主は一頭から三頭に増えた。しかもそのうち一頭はロッジの部屋のすぐそばを歩きながら鳴いたので、空気がビリビリと震えるのを感じられるほどだった。

満点の星空に包まれる夜のロッジ。そこにライオンの咆哮が響き渡る。
満点の星空に包まれる夜のロッジ。そこにライオンの咆哮が響き渡る。

ロッジは水場を見下ろす砂丘の上に建てられており、草食獣がよく集まってくる。そのような場所は肉食獣にとって格好の狩場となるので、当然ライオンの縄張りとしては最高の立地条件であり、むしろそういう場所だからこそロッジが作られているわけだ。縄張り宣言は明け方まで続いたため我々は完全な寝不足状態に陥ったが、一方でライオンが自らの居場所を知らせてくれていたわけで、これは絶好のチャンスでもあった。夜が明けると私はすぐさまガイドのベンジャミンと相談し普段より早くロッジを出発、太陽が昇りきる前に相手を見つけることにした。陽が昇る前に撮影対象を発見できれば、光の来る方向を見定めた上で事前に車をベストポジションに配置しておくことができるのだ。

目算は当たった。相手はロッジから車で3分もかからない距離にある砂丘の西側斜面中腹にいた。そしてそれは私が今まで見てきたどのライオンよりも美しかった。しかも向こうは東を向いてくれていたので、最高の撮影チャンスになることは間違いなかった。私は車を相手よりも少し下の斜面に停めてもらい光を待つことにした。やがて太陽が砂丘の上から顔をあらわすと、威厳に満ちた巨大なオスライオンの姿が光に浮かび上がり、参加者一同夢中になってシャッターを切り続けた。「撮影ツアー」と通常のサファリとの違いの一つは、いい写真を撮れる可能性があると私が判断した場合、それに合わせてサファリのスケジュールや行動パターンを柔軟に変えてゆく点にある。

朝日を浴びる巨大なオスライオン。カラハリ砂漠の大自然を象徴する存在だ。
朝日を浴びる巨大なオスライオン。カラハリ砂漠の大自然を象徴する存在だ。

カラハリは訪れる者にいつも数々の驚きや感動を与えてくれる。それは今回も例外ではなかった。1週間弱の滞在期間中ライオンに出会わない日はなく、子連れのチーターやヒョウ、セグロジャッカルの狩り、ミーアキャット、そしてリクガメを捕食するラーテルという、極めてレアなシーンなども撮影することができた。これらの結果は運ももちろんあるが、ベンジャミンのようなこちらのわがままに快く応えてくれる現地ガイドや、ロッジでの快適な滞在を支えてくれるスタッフたちの存在に依るところが大きい。そして彼らは私たちが戻ってくることを心待ちにしている。

夜、ロッジの水場に姿を現したヒョウ。サファリでは宿にいるときも撮影機会が訪れる。
夜、ロッジの水場に姿を現したヒョウ。サファリでは宿にいるときも撮影機会が訪れる。
水場でハトを狙うセグロジャッカル。このような場面に出会えるのもカラハリならでは。
水場でハトを狙うセグロジャッカル。このような場面に出会えるのもカラハリならでは。
写真撮影に大忙しのツアー参加メンバー。カラハリは遮蔽物が少ないため撮影条件が非常によい。
写真撮影に大忙しのツアー参加メンバー。カラハリは遮蔽物が少ないため撮影条件が非常によい。

コロナパンデミックの影響でアフリカのサファリ産業も大きなダメージを受けた。欧米同様、2022年後半ごろからサファリの現場はほぼ「通常営業」に戻ったが、職を失った人々や廃業したサファリロッジも決して少なくないのが実情だ。サファリでの動物たちとの素晴らしい出会いも、それをサポートしてくれる人々がいなければ実現しない。日本のコロナ規制もようやく撤廃されたことでもあるし、より多くの人にアフリカを訪れサファリを楽しんでもらいたいと願う次第だ。

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