WIRED VOL.29 African Freestyle

WIRED VOL.29 African Freestyle

2017.09.11発行
先月、発行された季刊誌のWIRED Japanが、アフリカ特集だったのでご紹介します。たまに、ちょっと尖った雑誌がアフリカ特集を組むことがありますが、多くは旅行先としてのアフリカ、もしくは自然史/文化史、でなければ昨今は幾つかの国の経済発展やビジネス先としてのアフリカに焦点を絞ったものであることが多いです。



そんな中で今回の雑誌の特集は秀逸でした。幾つかの都市の現在進行形のアート・シーン。取材先に選んだ都市も、ヨハネスブルグ、キガリ、ナイロビ、ラゴス、アクラと目の付け所が良かったです。「今、アフリカの若い世代のアーティスト、建築家、写真家、デザイナー、そんな人たちからどんなムーブメントが誕生しているのか?」毎日どっぷりとアフリカ漬けの我々でも窺い知ることのなかった、各都市で今新たに生まれてくるアートや、90年代生まれの世代のクリエイティブ活動に焦点を当てた特集は非常に興味深く、勉強になりました。





例えば、ヨハネスブルグのヒルブロウ地区にあるpontecity、世界一治安が悪い最凶都市と呼ばれ続け、我々もその紋切り型のイメージから脱却できていなかったかもしれません。94年のアパルトヘイト撤廃以降に生まれた世代=フリーダム・ベイビーズと呼ばれる彼らの時代にとっての『アート』は、持たざる者が生業を獲得する手段として、はっきりと機能しています。キガリの若い写真家のアイディアから生まれた、ドローンで輸血袋を各地の病院に届ける医療ビジネス、丘だらけのこの国ルワンダでは車の10倍のスピードです。芸術大国のナイジェリアでも新たなムーブメントは生まれ続けていて、もはやノリウッド映画は既に単なる大衆娯楽の映画産業の場ではありません。実験的な映像アートや、ナイジェリア人が自らの手で民族的アイデンティティに迫るドキュメンタリー作品などが日々生み出される先鋭的なアートの世界へと姿を変えています。個人的には、あの漫画見たいなノリのチープ・ノリウッドも大好きなんですが。ナイロビのクリエイティブの発信地アルケミストBARが特集されているのも驚きました。ナイロビ在住時代に私も足繁く通っていたのを思い出します。この場所に人種・国籍を問わずいろんな人間が集まり、音楽、映画、文学、ペイント、料理、写真、夜な夜な話が飛び交っていたのが懐かしいです。ナイロビという街の良さを体現しているような場所でした。自分が「外国人」であることを意識しなくてもいい、わざわざ「多様性」なんて言葉にする必要もない、皆が違っていて当たり前の街でした。



インタビューの中で、「今」はアフリカの人達が自らのアイディア一つ、表現一つでアフリカを変える事の出来る時代になったんだ、と胸を張って答える若いアーティストの姿がいいです。アフリカの「今」を特集した雑誌が、普通に東京のコンビニの棚に並んでいる時代です。つくづく、世界が近くなったのを感じます。



by 生野