先月、私にとっては事件がありました。
ナイジェリアのアフロビートの二大巨頭『フェミ・クティ』と『シェウン・クティ』の2人が相次いで新作を発表したのです。
*フェミ・クティ『One People One World』
*シェウン・クティ『Black Times』
アフリカ音楽ファンには説明不要ですが、この2名はナイジェリア発アフロビートの創始者『フェラ・クティ』の息子たちです。
2人はそれぞれフェラ・クティの血を引く兄弟ですが、フェラ・クティの長男であるフェミは既に55歳の円熟期のベテラン。
末弟のシェウンは1982年生まれの35歳と20年の年齢差があります。長男フェミは早くからフェラ・クティのもとを離れ、父親のアフロビートのスタイルを受け継ぎつつも自身のバンドを率いて活動し、既に芸歴30年以上の大ベテランです。
対するシェウンも、幼少の頃から父親と同じステージに立ち、10代でフェラ・クティ自身のバンド『エジプト80』を引き継いだアフロビートの正統後継者です。
アフロビートは、故フェラ・クティが、元々のローカル音楽である「ハイライフ音楽」にジェイムス・ブラウンのファンクからの影響を受けて確立した独自のスタイルの音楽です。大らかでグルーヴィかと思えば、複雑な展開から過激なビート音が疾走するアフロ・ファンク・サウンド。今では、日本を含め世界中に波及している音楽です。
またそのメッサージ性にも特徴があり、故フェラ・クティは「闘う音楽家」として、政権に対して過激なメッセージで攻撃し続け、時の軍事政権下で抑圧され、度重なる不当な逮捕・投獄や軍・警察の暴力にも屈せず、民衆の代弁者であり続けました。かつて所有・出演していたラゴスのイケジャ地区のライブハウス「シュライン」は有名でしたが、軍部の襲撃を受け破壊されてしまいましたが、現在は替わって長男のフェミ・クティが建てた「ニュー・アフリカ・シュライン」が新たな名所となっています。
今回の新作は、どちらも聞きどころが満載。シェウン・クティの作品がポリティカルなメッセージ性に富んだ、まさに直接的なアフロビート作品なのに対し、年齢を重ねたフェミ・クティの作品が新しいスタイルも取り入れ、広がりのあるものになっているのが興味深かったです。
ラブソングまで歌っているのは必聴です。
個人的な感想ですが、アフリカのポップミュージックには、伝統的な音楽やリズム性を下敷きにしつつも、そこに必ず『今』の音楽性、『今』のメッセージが載るのが魅力ではないかと感じています。
2018年の『今』にしか生まれないレベルミュージックが立て続けに2枚。暫くは通勤中にもイヤフォンを手放せない日が続きそうです。
by 生野