道祖神にはいろんなキャンピングツアーがあるが、ボツワナ・キャンプには特筆すべき魅力がある。キャンピングは単にテントに泊まることではなく自然の只中に仮の住まいを設けることで、畏れ多くも野生動物たちの生活領域にお邪魔することだ。この感覚をより強く感じることができるのがボツワナ・キャンピングツアーだ。
トイレなどが常設され人間のテリトリーとして確立されたキャンプサイトではなく、このツアーのサイトにはそれを示す小さなサインが木に下げられているだけだ。必要なものはすべて持ち込み、去る時は何も残さない。プライベートキャンプなので他の旅行者とキャンプサイトを共有することもない。持続的な人間のテリトリーではないので当然動物がやってくる。夜間、ライオンやハイエナの咆哮が近くテントの中でかたずを飲む。ラーテル(アナグマ)がサイトを徘徊していく。ハイエナも食べ物の匂いにつられて時々やって来るがガイドが草履で追い払う。ゾウは昼間でもやってきて木をなぎ倒していくし、サバンナモンキーたちは木の上から我々の食料を狙っている。川辺でキャンプすれば水の中からカバが人間たちの生活を眺めている(その距離わずか)。
これらの野生動物たちと時々現れる人間との境はお互いの経験に基づいたもので、自分のコミュニケーションの仕方によっていかようにもなる。野生動物と自分の間には檻も車体もなく、生き物同士の共通の了解があるだけだ。旅のはじめは経験がないので野生動物の気配や接近にビビるのが当然だが、カバは水に入っているうちは平穏だとか、ゾウの威嚇の程度だとか、この鳴き声はどの動物のどういう心情のものかだとか、そういったことを知るにつれて野生動物との距離感が分かってくる。
野生動物を観賞の対象としてだけでなく、隣人として感じることができるかもしれない。そこがこのツアーの魅力だと思う。
有冨