ガーナのシャンティ族やアサンテ族の布のデザインに使われるヒョウタンのスタンプは今に残る貴重な伝統工芸といえる。アディンクラと呼ばれる衣装はもともと葬式の時に死者を弔うために着用したものであった。アディンクラの本来の意味は“さようなら”ということでもある。しかし、近年、鮮やかな色合いのものも作られるようになり葬式以外の儀式や余興時にも着られることが多くなった。この地域でアディンクラが着用されるようになったのは17世紀にも遡る。この部族に属する全ての人は少なくとも一着の手製のスタンプで作られたアディンクラの衣装を持つ必要があった。
今回紹介するスタンプはその布のデザインに使われるヒョウタン製のブロックプリントの道具である。1cm位の厚さのヒョウタンの殻がまだ柔らかい時に5mmほどの深さにデザインを彫り込み、裏側には4-5本のラフィア椰子の木切れを指し込んで布切れと糸で束ねてスタンプの柄にする。デザインの種類は2200にもおよびそれぞれに名前があり、ことわざや言い伝えに基づいた意味が込められている。私がアクラで2年間に収集しただけでも100種類を優に越えている。それぞれのデザインがなかなかおもしろくデザイン的にもとても洗練されている。できるだけ多くを紹介したいのではあるが、限られた紙面では難しい。小さな写真になってしまうが、一部の名称とその意味を説明して面白さを伝えたい。これらのスタンプは現在でもアディンクラの布制作の道具として使われている。
写真提供/小川 弘さん
小川 弘さん 1977年、(株)東京かんかん設立。アフリカの美術品を中心に、アフリカ・インド・東南アジアの雑貨、テキスタイルなどを取り扱っている。著書にアフリカ美術の専門書「アフリカのかたち」。公式ウェブサイト http://www.kankan.co.jp/