カメルーンのティカール、バムン、バミレケ、グラスランド地域に住む人々は大変魅力的な帽子で身を飾る。最も古い帽子の形は“tall cap(長めの帽子)”である。これはコットンのかぎ針編みであるが、フェルトなどの異素材を部分的に使う場合もある。帽子の両側には玉飾りや房のついた布を縫い付けたりもする。このタイプの帽子はバムンやバミレケの彫刻に表現されているものと同じである。1914年にはこの種の帽子を被っているティカールの族長やバムンの王の姿が確認されている。
帽子は王族だけではなく高位の男も被ることができた。低い身分の男は帽子全体が玉飾りや房で覆われているものを被った。現在バミレケのマーケットでよく見られるのは円錐形で、幾何学模様をかぎ針編みした綿のものである。ヤマアラシの針を表わすような短い房を規則正しく配列した帽子もある。
グラスランドで最も典型的な帽子は“Ntamp”と呼ばれるトップが平らな形のウールのかぎ針編み帽子で、公の場や儀礼の際に特別なガウンとともに着用する。”Ntamp”は輸入の糸に強度を増すためにラフィアの繊維を混ぜて男が作る。


①の帽子はパリのアフリカンアートギャラリーで見つけて購入したものであるが、はじめは儀礼用のオブジェかと思い、帽子には見えなかった。木の実でできていて触るとその鋭い棘が痛い。現代アートのオブジェとしても十分通用するだろう。その後、カメルーンのバフサン市のマーケットに行った折、フェティッシュ(呪い)の素材や道具を売っている店で同じタイプのものを見つけ、この木の実がバミレケ族の人達にとって何らかの薬用効果があり、儀礼素材として使われるものと知った。帽子というより何か魂のこもった力のあるオブジェに見えてくる。


②③は王族や身分の高い人が身に着けたもので、とても細かくタイトに編んである。バムン、バミレケの彫像にもこの種の帽子をかぶった王の像をたくさん見かける。非常に細い糸で作られていてとても美しい出来栄えである。

④は比較的に身分の低い人達が被ったもので、現在でもマーケットに行けば見つけることができる。しかし現在はラフィアやコットンではなく太い毛糸で作られることが多い。儀礼の時などダンス衣装と共に着用する。このデザインは現代の若者、特にミュージシャンなどが実際に自分の地毛を編んで髪型にしている。これも帽子というよりアート作品として通用する存在感を持つ。

⑤はとても美しい色合いとデザインで作られた帽子でハリネズミの針が上側面についている。デザイン、色合い完成度共に素晴らしい一品である。



⑥⑦⑧はダンスの時にも被るが日常的にも普段使いで使われている。網の質、形とも美しい。
この他にダンス衣装にのみ使われる鳥の羽根を編んだ直径70cm位の大きな物もある。真っ赤な羽根の帽子は現代美術のオブジェとして十分通用する美しいものである。
写真提供/小川 弘さん

小川 弘さん
1977年、(株)東京かんかん設立。アフリカの美術品を中心に、アフリカ・インド・東南アジアの雑貨、テキスタイルなどを取り扱っている。著書にアフリカ美術の専門書「アフリカのかたち」。公式ウェブサイト http://www.kankan.co.jp/
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