映画「風に立つライオン」ケニアロケ

映画「風に立つライオン」ケニアロケ

かなり前の話で申し訳ありませんが、昨年11月上旬から約1ヶ月間、現在公開中の映画「風に立つライオン」のケニアロケに同行させていただきました。
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ご存知かもしれませんが、映画はさだまさしさんが1987年に発表した楽曲、「風に立つライオン」が元になっており、この歌の世界に惚れ込んだ俳優の大沢たかおさんが小説化を熱望、さださんに依頼、大沢さんの熱意にほだされたさださんが、楽曲の発表後26年を経て小説化し、その小説を元に大沢さん主演で映画化という運びになりました。
この映画のプロジェクトはずいぶん前に始まっており、当初は実際に物語の舞台になったケニアで撮影をするのかはっきりは決まっていませんでしたが、6月に三池監督はじめプロデューサーさん、美術監督さんら、製作陣の主だった方々がケニアへロケハンで訪問し、三池監督が「ケニアで撮るしかない!」と即決、ケニアで約1ヶ月のロケを敢行することになりました。弊社では、ロケハンの前の段階から情報提供を通じて協力させていただき、ロケにも同行させていただきました。

エンケレイヤン小学校に作られたロキチョギオ赤十字病院のセット
エンケレイヤン小学校に作られたロキチョギオ赤十字病院のセット

撮影は主に、ナイロビの農業研究所(長崎大学熱帯病研究所の研究室を再現)、MGMスタジオ(ケニアに映画用のスタジオがあるなんてご存知の方いらっしゃったでしょうか?)、マチャコス病院(クリニックを再現)、ナイロビ近郊のンゴングヒル周辺エンケレイヤンにある小学校(ロキチョギオの赤十字病院を再現)、マサイの村、マイマヒュー(マサイマラへ向かう途中の大地溝帯ビューポイント下の町)のトゥルカナ人の村などで行われました。

エキストラ出演した本物のトゥルカナのエルダー。私はトゥルカナランドに暮らしていたことがあるので、懐かしい雰囲気でした。
エキストラ出演した本物のトゥルカナのエルダー。私はトゥルカナランドに暮らしていたことがあるので、懐かしい雰囲気でした。

普段は普通の格好をしているマイマヒューのトゥルカナの人々ですが、髪形を整え、伝統衣装をまとうと、やっぱりトゥルカナ人そのものです。
普段は普通の格好をしているマイマヒューのトゥルカナの人々ですが、髪形を整え、伝統衣装をまとうと、やっぱりトゥルカナ人そのものです。

最も多くの時間を過ごしたのは、ナイロビから片道約1時間の場所にあるエンケレイヤンの小学校。ここは校長先生に頼み込んで夏休み中の小学校をお借りして、スーダン国境に程近いロキチョギオの病院を本物そっくりに再現し、30℃を超える炎天下、連日撮影を行い、時には現場で朝まで撮影して翌日は終日撮影お休み、なんていうスケジュールの日もありました。俳優さん、マネージャーさん、同行の私などは、撮影休みの日は完全にお休み(その代わり、買い物などに俳優さんをお連れします)になりますが、スタッフの皆さんはお休みといっても完全なお休みなどなく、データの整理やら衣装作りやら、ほぼ不眠不休で1ヶ月を駆け抜けたという感じです。映画製作というのはずいぶん大変な作業なんだな、と思うとともに、スタッフの皆さんのプロ根性というか、職人魂というか、そんなものを見せつけられた一ヶ月間でした。

夜を徹して続けられる撮影。
夜を徹して続けられる撮影。

また、ロケに参加された俳優の大沢たかおさん、石原さとみさん、石橋蓮司さん、萩原聖人さんも、慣れない環境での撮影で大変な思いをされたと思いますが(石原さんがインタビューで話されていたように、サバンナはハエが多いですからシリアスな場面で顔にハエがたかって、それは特に大変だったと思います)、日本とは全く違った環境下での撮影を楽しまれていたようにも思います。大沢さんは何度目かのアフリカ(ケニアは2回目だそうです)、石橋さんはウガンダに続いて2回目のアフリカ(辺見庸さん原作の「もの食う人々」のテレビドラマに辺見さん役で出演されています)ということで、リラックスしてお仕事をされていたようにも感じました。ケニアにいるにもかかわらず、サファリにいけるような余裕のあるスケジュールではありませんでしたが、出演俳優の皆さんはお帰りの際に空港で、口々に「また来たい」とおっしゃっていたのが印象的でした。
今回のケニアロケは、日本側のスタッフとともにナイロビ大学で映像製作を学んでいる学生さんたちもインターンとして参加し、エキストラその他の面で現地に研究施設を置いている長崎大学(主人公のモデルになった柴田柴田紘一郎先生の母校)の強力なバックアップを受け、最後まで事故・トラブルなく終了し、映画は完成、現在も公開中です。
役者さんも大半はケニアの一般の人たち(アフンディ役の方はケニアの有名なコメディアンですが)でしたし、スタッフの皆さん、俳優さんたち皆、外国人とともに仕事をする、慣れない環境下で仕事をすることは、日本側、ケニア側双方にとって大変だったと思いますが、お互いにケニア人・日本人との仕事を通じて何かを、お互いに将来の仕事にとって有益な何かを得ていただけたらいいな、と思います。
まだ映画をご覧になっていない方、まだ絶賛公開中ですので、是非映画館に足をお運びください!
羽鳥