※3月20日発で予定していたツアーの内容を変更し、3月25日から11日間の手配旅行として実施しました。
カメルーンの熱帯雨林に昆虫や生き物を求めて
4人でカメルーンの熱帯雨林にチョウや昆虫を見に行ってきた。以前に取材に出かけて、カメルーンの自然に感激したのでお誘いした次第。前に行ったのは乾期の12月末、雨期初めの3月がチョウの一番良いシーズンだと聞かされ、今回はその時期を選んだ。パリ経由カメルーンの首都ヤウンデに、およそ丸1日の移動。ヤウンデで1泊、次の朝、最初の目的地の一つ、エボゴに移動。2時間ほどで到着。
エボゴはエコツーリーズムの基地として、これから発展しそうな場所で、チョウがたくさんすんでいることで知られている、とても静かな村だ。今回はエボゴで3泊、まずはロッジの周辺で昆虫探し。敷地内から歩いて森に入ると様々な蝶が飛び出します。ここの蝶で日本でも見られるものは皆無ですから、見るものが皆珍しく感激の連続。
チョウの撮影には望遠レンズがあると良く、今回はぼくはマイクロフォーサーズのミラーレスカメラに300mmの望遠レンズ、Kさんは一眼レフに100~400mmのズームレンズ、Hさんはレンズ交換はできないけれど2000mm相当まで撮影できる高倍率デジカメ、Sさんは蝶より、小さな昆虫の生態を撮るので望遠ズーム以外に、マクロレンズやストロボなどの装備。他の方は、小さな虫のマクロ撮影には接写が得意なTG4というコンパクトデジカメ。濡れても落としても壊れないこのカメラは自然観察の必須アイテムだ。何人かでの撮影旅行では他の方の装備や撮影法も勉強になる。今回もプロ並みの昆虫写真を撮られるSさんが、100-400mmレンズをはじめてのぞいて、気に入ってしまったようだ。
宿泊したロッジは簡素だが、カメルーンとしては綺麗なロッジだ。とはいってもお湯はないし、水も出ない部屋があったり、停電などは当たり前。それでも、チョウが多い場所で安全にとまれる場所がカメルーンにあるなどとは、訪れるまでは知らなかったから、大いに感激。宿の前を流れるのはニョン川。手こぎのボートで1時間ほど遡ると、カメルーン1という巨木がある。樹齢1000年を超えるという地元の人の自慢の木でだ。幹まわりはどれくらいあるのだろうか、ともかくでかい。川にはナマズがいて、ここの名物はナマズ料理?
昼間は前にも頼んだ昆虫専門のガイド2名の案内で森に入る。眼が素晴らしく良いので、次々と昆虫が見つかる。昆虫ではないがダイオウ(大王)サソリという20cmもアル巨大な、大変珍しいサソリも見ることができた。サスライアリの行列にはびっくり。流れるように大群で移動するさまは見ているのは面白いが、巣を持たずに移動して暮らす狩人集団で大変攻撃的なアリだから襲われないように気をつける。
夜は、今回のために用意した水銀灯と白布を使って、2回、昆虫観察。夜に活動する昆虫は灯りに飛んでくる.その習性を利用すれば、昼間は見つけるのが難しい昆虫もいろいろと見ることができる。大型のヤママユガの仲間が何種類もやってきて、ここが自然度が非常に良好であることがわかる。
カメルーンの家は日干し煉瓦か、その土を塗り込めた土壁だ。ファーブル昆虫記でも有名なカリウドバチの仲間が壁に巣をたくさん作っていて、興味を引かれた。そんな家の中も見てみたいと、2人の案内人の家で1回ずつ夕食を頼む。家の中はとても綺麗でびっくりだ。こんな体験もそうそうできるものではない。ヤムイモとバナナが主食で、後はナマズと鶏肉か牛肉。ぼくの好物のナマズの卵の煮たものも出してくれた。今回の目的の一つであったアフリカのオオアゲハ、ザルモクシスオオアゲハは2度現れ、撮影できたのは2名だけだったが、その姿に感動する。エボゴでは車で1時間半ほど離れたファラシーへ虫さがしにもいった。たくさんのチョウや昆虫を撮影して、まる3日間のエボゴ撮影を終える。停電になったり,水が出なかったりということもあったが、無事に前半戦を終える。
エボゴで自然を満喫した後はジャー動物保護区に隣接したロミエへ移動。四輪駆動2台での移動だ。思ったよりヤウンデ周辺は道が良く、100kmぐらいの速度で3時間ばかり、そこから未舗装のダートを150kmほど走る。エボゴからは10時間の移動。昆虫案内人2人も同行、彼らにもはじめての場所だ。現地ではさらに現地の案内人1名を加える。スルーのガイドのダバラや運転手も入れると、我々4人で6人も人を使っていることになる。これがカメルーン流である。昆虫観察の旅なので、観光地に行くわけでないから、それぞれの場所で現地の人を使うことでトラブルなしで旅ができる。
ロミエ周辺は道沿いにも良い林が残り、道を横切る小さな川面もあるので、蝶の観察には最高だ。川と道が交わる場所ではチョウの集団が観察できた。撮影していたらアフリカ熱帯林の先住民であるピグミーのバカ族の夫婦と出会った。そこで思いついて、次の日はジャングルの中のキャンプを訪ねることにした。その日、急に行くことになったにもかかわらず、道路脇にあったバカ族の人の家を訪ね、ガイドのダバラが交渉してくれたようで、ジャングルの中の獣道のような小道を20分ぐらい歩くと、子どもたちの声が聞こえてきた。小川を渡るとジャングルの中にキャンプがあった。ピグミーの人たちは、森の中に果実が多い収穫期は、このキャンプで暮らすらしい。ピグミーの人たちの集団には歌と踊り、森の精霊の登場する儀礼があり、そのいったんを披露してくれた。
ロミエでは小さな川が道を横切る場所がいくつもあり、チョウが群れていた。ただ、どの川も、近隣の人の洗濯場になっていて、人がいることが多いので、思ったようには撮影ははかどらない。ロミエでは、一軒だけあるホテルに4泊して、毎日車で森へ出かける。人家があると、その裏にはジャングルに通じる小道がある。恐らくジャングルからいろいろな産物を得るための道だ。ある家では捕まえたばかりのセンザンコウを見せてくれた。すでに死んでいて可愛そうだが、はじめて間近で見て、その鱗のような皮膚にびっくりした。
森の中の日だまりに深紅のチョウがいた。ヒイロタテハである。たいへん美しいチョウで、この世にこんなチョウがいるかと、皆、眼を見張る。カマキリや小さな甲虫など、珍しい昆虫もいくつも見つかる。ホカケカメレオンも、道沿いの灌木で見つけた。
最終日は、途中で撮影をしながら夕方にヤウンデに戻る予定だったが、途中目星を付けて置いた場所はまだ時間が早く、チョウがいなかったのでそのままヤウンデへ。約8時間のドライブで、2時過ぎにはヤウンデに着く。撮影が足りないので、急遽思いついて、イギリスの自然保護団体が山でつかまってしまったゴリラを飼育しているところへ行くことにした。入場料は比較的高いが、それはゴリラの保護に使われるらしい。
森の中に作られているのでチョウも多い。そこで最後の撮影をして、ヤウンデで夕食をとり空港へ。短いような長いようなカメルーン昆虫探索の旅は無事終了したのである。
海野和男