弊社では、2012年から3年越しのプロジェクトとして、登山初心者の方がキリマンジャロ登頂にチャレンジする「キリマンジャロへの道―登山・トレッキング講習会」を続けてきました。そして、いよいよ今年の夏~秋に本番のキリマンジャロ登山にチャレンジ!という運びとなりました。「近所の低山」的な山歩き(散歩?)から始めた皆さんもずいぶん逞しくなり、コンディションが整い、高山病を克服できれば、キリマンジャロ・ウフルピーク5,895mに足跡を残すのも夢じゃない、というレベルに近づいてきました。現在は現地も雨期で、一般のキリマンジャロ登山客も減る時期なのですが、夏のベストシーズンに向けて、今回はキリマンジャロ登山直前のトレーニングと準備に関してお話ししようと思います。
◆直前の準備 ① トレーニング編
まずはトレーニング。直前と言っても、山行1カ月から2カ月程度前のトレーニングの話ですが、日常的に登山をされている方にとっては、体力はさほど問題ではないかと思います。最も気になるのはやはり高山病でしょう。日本国内の最高峰富士山や、手軽に登れる4,000m峰のマレーシア・キナバル山を登る際は、低酸素にそれほど強くない方でも高山病にかかるケースは少ないというのが実情です。標高の高い地点に留まる時間が少ないこともありますし、科学的根拠はありませんが、おそらく4,500mあたりに一つの壁があるのかもしれません。ですが、やはり4,000m近い山に登っておくのが高度順応の一助になるのは言うまでもありません。
富士山でももちろん効果はあります。ただし、普通に登るのではなく、できるだけ標高の高い場所で長い時間を過ごす(できれば宿泊する)ことが有効とされています。富士山が登れる夏の時期に近い日程でキリマンジャロ登山を予定しているのであれば、本番のチャレンジ前には一度登っておくべきでしょう。同じように形成された火山ですので、斜度や地面の様子も、両山はよく似ています。
「忙しくて…」という方には、お金は余計にかかってしまいますが“低酸素室”でのトレーニングという方法があります。低酸素室を利用する場合でも、できれば長時間(気持ちが悪くならない程度に)滞在し、一晩寝てみるコースなどもおすすめです。最終的には、高山病予防薬のダイアモックスを医療機関で処方してもらい、お持ちになれば充分でしょう。
◆直前の準備 ② 装備編
キリマンジャロ登山には、雪山やアルパインクライミング(ロッククライミングなど)の技術は不要です。装備は寝袋を除いて日本の夏山、服装は日本の夏山~冬山の準備があれば、これと言って必要なものはありません。寝袋は、高山病予防の観点からも-15℃仕様程度のしっかりしたものが必要になります。忘れがちなのは、アタック時の水筒の氷結予防(テルモスをお持ちになれば全く問題ありません)や、寒気で消耗が早くなるバッテリーの予備。それに、現地の食事が口に合わなかった場合の補助食や行動食、ホコリやのどの乾燥対策として飴玉やスカーフ(マスクをお持ちになる方もいらっしゃいます)の準備もしていた方がいいでしょう。
アフリカ最高峰の頂も、しっかりと準備をし、体調を整えて望めば決して夢ではありません。今年のベストシーズン(7~9月)も、多くの方々が安全に、楽しくアフリカで最も高い場所に立たれることを祈っております。
羽鳥