登山・トレッキングと聞いて、未経験の方はちょっと怯むかもしれません。長い間敬遠されてきたのは、「登山=キツイ」というイメージがかなり強固に植えつけられてしまったからだと思うのですが、キツイのは早すぎる歩行ペースや、重すぎる荷物が原因で、実際は汗を少しもかかずに登れるペースもありますし、散歩レベルで登れる山もあります。と言っても、景観の素晴らしさは流した汗の量に比例し、いい景色を見るにはキツイ登りが伴う、という面もあります。
登山・トレッキングの基本は「歩く」ということ。ロッククライミングや冬山を除けば、登山とは日常の「歩き」の延長でしかなく、それぞれその場所にあった歩き方はあるものの、場所を街やアスファルトの道から自然の中の土や石のゴロゴロした道に変えるだけです。それは、キリマンジャロも同様で、歩き方のコツやペースを間違えなければ、あと問題になるのは高山病対策くらい。そう考えた上で、自分の体力や経験の未熟さをカバーするのが道具であり、技術であり、同行するガイドや経験者であると理解していただけると、山はより身近な存在となるのではないかと思います。
反面、矛盾しているようですが、古くから人の出入りが多かった里山と違い、かつて深山と呼ばれた奥深い山々は、足を運ぶ人々もマタギや杣(ソマ)、修験者などに限られ、彼らは非常に厳しいルールを自分達に課して、赴いていました。人里離れた山奥は神の領域で、何が起こるかわからない場所だったからです。個人的には、この「気軽に楽しむ」精神と、「自然と真摯に向き合う」精神の両方を持って山歩きをするのが理想的なのではないかと思っています。
変化のある自然の中を「歩く」ということを基本的に考えると、自ずと装備すべきモノは限られてきます。要は「いかに歩くことを快適に行うか?」ということ。歩きやすい靴、背負いやすく疲れないザック、汗をかいても暑くても寒くても雨が振っても快適な服装などが、まず中心になります。初めから最新の服装や装備を揃えてしまうと、かなりのお金がかかります。個人的に、登山靴、カッパ、ザックの3点にはお金をかけて、自分にあったものを用意すべきだと思いますが、その他のものは普段使いのものでも一向に問題はありません。最近のブームでどんどん高機能化し、種類も増えた装備が、「登山には特別な装備がいるのでは?」と初心者の方に思わせてしまう要因なのかもしれません。
最近では、山道具レンタル屋さんもでき、弊社もコラボレートさせていただいています。こんなところを賢く利用して、皆さんにも気軽に登山を始めていただけると良いですね。
羽鳥