2010.09.12発 南部エチオピア オモ・マゴ探索隊15日間 その1

日本の夏の終わりからシーズンを迎える南部エチオピア。現地の人々に“omo valley”(オモ谷)と呼ばれるその地域は、今なお、独自の伝統と文化を保ち続ける民族が多く住む、地球上で数少ない場所の一つです。今年もこれからシーズンを迎えるにあたり、昨年のツアーを振り返って、その魅力のほんの一部をご紹介させていただきます。
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首都のアディスアベバより4WDで走り続けて丸2日。南部最大の都市で、オモ川流域への起点である「アルバミンチ」にたどり着きます。アルバミンチとは現地のアムハラ語で、アルバ=40、ミンチ=泉 という意味。ここにある国立公園には、その40の泉が存在するという話も聞きましたが、それよりも、アフリカ大地溝帯に沿って点在し、町に隣接するアバヤ湖とチャモ湖が太陽の動きによって刻々と織り成す幻想的な風景と、その自然の恵みによってもたらされる新鮮な魚が印象的なリゾート地です。
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さて、ここからが本当のスタート、と気合が入るところですが、その前に、アルバミンチまでの長ーい道のりについて説明しなければなりません。もしかしたら、最初の移動の2日間は退屈なのでは?と懸念されるかもしれませんが、このツアーでは、同じ道を通ることを極力避けるため、往路はあえて遠回りをします。その最初の宿泊が「ジンマ」という町です。ジンマはカッファ州の州都で、イスラム教徒の多い町。キリスト教の片鱗を至るところで垣間見たアディスアベバとは違った雰囲気があります。
皆さんは“カッファ”という言葉から何を連想されるでしょうか?ちょっと強引かもしれませんが、 カッファ→ カフェ →コーヒー って思っていただけましたか?今や当たり前のように、世界中で毎日飲まれるコーヒーの発祥の地は、実はこのカッファ州という説が有力なのです。もちろん、コーヒーという呼び名もこの地名が由来。詳細は省きますが、今回、ここで正式にコーヒーを淹れていただくことができました。エチオピアではコーヒーを淹れる時に行われるしきたりがたくさん有ります。コーヒーを振舞うことは、飲んでくれる相手に対して、おもてなしと感謝の気持ちを表すこととされているので、その流れに順序があり、一つ一つの行為に意味があり、時間を要するのです。それを総じて、“ブンナ・セレモニー”と言います。“ブンナ”とはアムハラ語でコーヒーのこと。そう、コーヒーの儀式です。
正式に一通りの流れを行うと、周辺に青草を敷き、炭を起こし、お香(乳香)を炊き、鉄鍋で生豆を煎るところから始まるので、1時間半程度はかかります。煎った豆は冷まし、小さい臼と杵で潰して粉状にした後、専用の鉄瓶にその粉と水を入れて沸騰させ、粉が入らないよう上手に小さな専用のカップに注ぎます。コーヒーカップは通常、取っ手のついたものが想像されますが、このカップには取っ手がありません。台湾でウーロン茶をいただくようなタイプです。これに豆を煎った鉄鍋で煎られたポップコーンが添えられ、ようやくいただくことができました。ポップコーンは、お茶菓子のようなものですね。
この儀式の一連の流れを見ていると、一つ一つの行為やその意味、道具を含めて、日本の茶道に通ずるところがあるように思えるのです。こうして煎れてもらったコーヒーは、その舞台設定から、豆を煎った時の香ばしい香り、取り仕切る方の美しい身のこなし、もちろん肝心の味も含めて、五感で味わえる、気持ちがホッとできる美味しい一杯でした。コーヒーを淹れることができるのは女性だけ。エチオピアでは嫁入り前の女性が身に付ける作法の一つなのです。こちらの写真は今回のブンナ・セレモニーを取り仕切ってくれた女性。とても美しい方でした。
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そして、ジンマからアルバミンチまでの道のりは、エチオピアのダイナミックな大地が待ち構えています。もしかしたら、この国に関しては、“台地”という言葉の方がしっくり当てはまるかもしれません。なぜなら、道中、目にする山々は頂上部分が侵食され、平らなテーブル状になっていることが多いからです。その山々の連なりは男性的な切り立った険しい絶景。でも、その合間に広がる瑞々しい緑の田園地帯は、真逆のどこかホッとする女性的な優しい風景です。
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エチオピア人の主食、“インジェラ”の原料である“テフ”はイネ科の植物ですが、イネ科というだけあって、その畑?(田んぼ)はまさに日本の東北、上越地方で見られる一コマ。その他にも標高の違いにより、トウモロコシやソルガム(日本名:トウキビ 中国名:コウリャン)、エンセーテバナナ(別名:偽バナナ)、バナナ、パパイヤ、マンゴー、アボガド、イモ類、コーヒー、お茶・・・と色とりどり緑があちらこちらに。
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雨季が明けたこの時期に緑の大地を走っていると、心洗われるような、そしてどこかなつかしいよう気持ちになれるのです。
その2へつづく
今野