先日、ケニアへのちょっと変わったツアーに同行させていただきました。北部にある『トゥルカナ湖』を訪れるツアーです。目的は1年に1度のお祭り『トゥルカナ・カルチャー・フェスティバル』へ参加する為です。そしてその道中に、ケニア北部を陸路で走る事そのものがもう1つの魅力でした。ケニア北部は10を超える少数民族の人々が遊牧をして暮らす土地でもあります。普段なかなか出会うことのないケニア北部の少数民族を訪ねる旅へと行ってきました。
ケニア北部は、かつては『北部辺境州』とも呼ばれ、殆ど人が住むことのない荒涼とした土地が広がります。赤道を越え、北へ上がれば上がるほど苛烈な環境になり、雨がほとんど降らず、昼間の気温は40度近くにまで達するという『熱と渇きの大地』です。この辺りからがこの旅の本番。首都のナイロビでは、あまり出会うことのない少数民族の人々の暮らす土地へお邪魔します。
目的の『トゥルカナ湖』は、琵琶湖の10倍もの大きさを誇る世界最大の砂漠にある湖です。周囲も含めて火山性の土壌の中に存在し、湖の中央の島ニャブヤトムは活火山です。トゥルカナ湖は1888年にオーストリア=ハンガリー帝国の探検家テレキ・サミュエルとルートヴィヒ・フォン・ヘーネル海軍中尉によって発見されました。彼らは皇太子ルドルフの名にちなんでこの湖をルドルフ湖と名付けましたが、1975年に湖の西岸に居住するトゥルカナ民族 (Turkana) の名前を取って、トゥルカナ湖に改称されています。主に湖の周辺地域に居住している民族は、ガブラ民族、レンディーレ民族、トゥルカナ民族の3民族です。近年のエネルギー開発による風力発電の建設や、オイルの採掘問題など、地元の人々にとっては外からの人やモノの流入が激しく、今まさに大きく揺れ動いているエリアです。
この『トゥルカナ湖』は人が暮らすには非常に過酷な土地です。昼間の気温は40度超え。夜間は25度前後までは下がりますが、湖からの激しい風が吹き付け、夜ごとに静けさとは無縁の乱暴な夜が襲ってきます。
現在でも、この過酷な土地には10を超える少数民族が、遊牧や漁猟の暮らしをしていますが、古来より続く民族間の争いがあるうえに、近年の石油採掘や風力エネルギー開発など、人々の暮らしが大きく揺れ動いている土地でもあります。今回参加した『カルチャー・フェスティバル』は、観光局や地元政府などの後援の元、ケニアの最辺境に暮らす人々が直面している様々な問題や課題を共通のものとして認識し、衣装や装飾品、生活様式などを通じてお互いを知り、伝統文化を称え合い、平和的な共生関係を築いていくことを目的としてスタートしました。
フェスティバルの最中は、トゥルカナ湖周辺の村々の訪問も見逃せません。ケニア北部に暮らす人々、『トゥルカナ』『エルモロ』『レンディーレ』『ガブラ』『ポコト』『デサネッチ』『ボラナ』など、今までケニアを何度か訪れたことのある方々でも、あまり耳馴染みのない名前ではないでしょうか。それぞれの人々の暮らし、生活様式、歌や煌びやかな伝統衣装、踊りなどが披露され、滅多に会うことの出来ない人々に会い、その暮らしぶりに触れさせてもらうことの出来た旅でした。
また約1週間、キャンプをしながら訪問した北部ケニアは、とても『豊かな大自然』とは言い難い苛烈な土地でしたが、訪問者にとって全く優しくないその自然環境は、厳しく、乱暴であるからこそ、美しいとも思える場所でした。そんな土地で生きる人々と垣間見えたことは、皆さんが抱いていた『野生動物の王国ケニア』のイメージが根底から覆されたのではないでしょうか。気軽に遊びに行く場所ではありませんが、だからこそより多くの人に訪問してもらい、自分自身の身体で体感していただきたいと思います。現在、訪問しやすい時期を選んで、この『北部ケニア』のさらに奥まで訪問するツアーを計画中です。ご期待ください。
生野