西アフリカの大国、ナイジェリアにお祭りを見に行ってきました。年に1度の大祭「オシュン・オショボ・フェスティバル」です。ナイジェリアは人口1億9000万人以上が暮らす超大国!!500を超える民族から成る人々が暮らし、そのうち3大民族と呼ばれるのが「ヨルバ人」「ハウサ人」「イボ人」です。今回はそのうちの1つ「ヨルバ人」の人々が暮らす地域「ヨルバランド」を訪問しました。
ヨルバの人々の多くは「ヨルバ信仰」と呼ばれる独特の伝統的宗教・自然崇拝を信仰している人が多いのが特徴です。といっても、おどろおどろしいものではなく、日本でいう「神道」と同じようなものを考えて頂ければ分かり易いでしょうか。キリスト教やイスラム教のように絶対的な一つの存在を神とするのではなく、草木や水、風、火、あらゆる自然の万象にそれぞれ神様が宿っているという考え方です。まさしく八百万の神々です。たくさんいる神様の事を『オリシャ』と言いますが、それぞれの神様には名前もあり、外見のイメージや各自が持つ神話などもあります。中には短気な神様や、浮気性のある神様、おっちょこちょいの神様など、とても人間味を感じます。そんなヨルバのオリシャ(=神々)の中でも1、2を争う人気を誇るのが、水の神様『オシュン』です。水、川、愛、官能、ヒーリング、美をつかさどる神様で女性の神様、女神様です。今回のツアーの最大の目的は、年に一度行われる、この『オシュン』を称えるお祭りに参加する事でした。
そして、いよいよ向かうのは、ナイジェリアの南西部。オシュン州と呼ばれる、水を司る女神様の名前が冠された地域です。オシュン州一帯はヨルバの人々が古代から文化を築いた地域で、かつてはオルバやオラングンと呼ばれる王たちが治める都市国家が繁栄していました。今でも、州内にあるイレ=イフェ、オケ=イラ、イラ、エデ、イレサといった地方都市は、古代の都市国家が由来となり、そのまま今に至ります。この「ヨルバランド」と呼ばれる地域一帯は、現代のナイジェリアの首都機能を持ったラゴスなどの大都市に比べて街の規模は小さいですが、歴史と文化が続いてきた古都が多いのが特徴です。日本でいうと、京都みたいなものですね。
さて、ヨルバランドの中心地オシュン州。その州都「オショボ」という小さな町の郊外に緑の深い森があります。その森の奥、流れる川がオシュン神そのものと考えられていて、このお祭りの時期は多くの人々がこの森に集まり、川の水を浴び、女神オシュンを称える為の儀礼を行います。日本も各地に土地の神様をたたえる祭りは多くありますが、特に古代から水の祀りは治水や灌漑の土木技術とも深く結びついてきたともいわれています。水の神様を称え、また鎮める事がその土地を守る事に繋がっていたのでしょう。祭りのハイライトは、その聖なる川への巫女の祈祷。そして人々が我先にと川へ飛び込み、聖なる川の水を浴びる瞬間です。
日本の祭りもヨルバの祭りも、必ず神様が中心にあり、その場所にあるのが神様が降りてくるための社、すなわち神社です。このオショボの森にも神社があり、すぐ目の前には女神オシュンの川が流れます。やっぱり祭りは土地の人々にとっての『ハレの日』、私は個人的にアフリカの人々にとっての『ハレの日』が大好きです。太鼓が打ち鳴らされ、着飾った人々が集まり、厳かな神事が取り行われる傍ら、集まった人々や子供たちは楽しそうに踊り、語らい、年に一度の神様への感謝を捧げます。そこには、日本各地のお祭りと同じように、とにかく『幸』のエネルギーが満ちている、その時だけの特別な空間です。
また2020年もお祭りの日が決まり次第、ツアーを企画する予定です。是非、年に1度のお祭り、ヨルバの人々にとっての特別なひと時に、私達も参加してみませんか。
さて、最後にちょっと話が脇道にそれますが、ナイジェリアの旅行で楽しみのひとつなのが、道中での食事。ナイジェリアの現地ローカル料理は、とても手の込んだ、「これぞアフリカ料理!」というものが多いです。ナイジェリアは500以上もの多くの民族の人々が集まる国なので、料理も民族の数だけ本当に多様です。ただ、大別すると主要な3民族の人々に分けられるので、料理もそれに倣います。北部に住むイスラム商人の「ハウサの人々」はトウモロコシやクスクスなどの穀物、豆類が中心。同じく北部の遊牧民「フラニの人々」は、家畜と共に移動する遊牧生活の為、トウビンジエのような保存穀物にミルクや家畜のお肉が主食。ナイジェリア南東部の「イボの人々」の主食はヤムイモ。また有名なのがエグシと呼ばれる瓜の種のソース、これは絶品です。そして今回の訪問先、南西部に暮らす「ヨルバの人々」の料理も同じようなヤムイモ、キャッサバ芋、野菜バナナ(プランテン)などの主食にどろりとしたソースを合わせて食べるスタイルが一般的です。注意してほしいのは、ナイジェリア料理は基本何を食べてもピリ辛です。辛い料理が苦手な人はちょっとツライかもしれませんが、是非一度は魅惑のナイジェリア料理を味わって欲しいと思います。
生野