2021.07.24発 林さんと行く夏の尾瀬でバード&ネイチャーウォッチング 1泊2日

7月24日(土)~25日(日)で尾瀬のバードウォッチングに同行させて頂きました。首都圏の猛暑を避けて、爽やかな気候の中で尾瀬の豊かな自然を満喫してきました。今回は鳩待峠から尾瀬ケ原を散策した後に、尾瀬沼へ向かい大清水に下山するコースです。

今回歩いたルートマップ

午後には天気が崩れる予報のため、当初の予定より1本早い新幹線に変更して尾瀬に向かい、10時半には鳩待峠に到着しました。尾瀬ケ原に向かう途中の道では樹林帯や河原に咲く花々や花に集まる昆虫などを観察しながら下ります。草花ではツクバネソウやモミジカラマツ、マルバダケブキ、オニシモツケなどで、オニシモツケの花にはハナカミキリが集まっていました。また、森の中からは姿は見えないものの、コマドリ、コルリ、ミソサザイなどの声が聞こえ、川原にはカワガラスの姿も見られました。

クルマバツクバネソウ 中心の花が黒い実に熟した姿が羽子板のつくばねに似るため名がついた
モミジカラマツ 線香花火の様な花が唐松の葉に似ており、葉はモミジのような五葉である
オニシモツケとヨツスジハナカミキリ オニシモツケの花は蜜や花粉が多いのか、沢山の昆虫が集まる

1時間程度下ると尾瀬ケ原の入口の山の鼻に到着します。休憩は密を避けて研究見本園のベンチにして、植物を観察しながら休みます。キンコウカの群落とコバノギボウシ、トキソウ、コバノトンボソウなどが見られました。

キンコウカ 今回一番見られた湿原に大きな群生を作っていた
コバノトンボソウ ランの仲間で、花が飛び交うトンボを想像させる

休憩を終えたら尾瀬ケ原に出発です。山の鼻周辺の草花ではカキツバタや池塘の中にヒツジグサ、オゼコウホネが見られ、水辺ではナガバノモウセンゴケは花をつけていました。鳥はノビタキが湿原を移動しながら餌を探し、上空ではイワツバメが飛び交っており、周辺の森からはカッコウ、ホトトギス、ツツドリの声が聞こえてきます。他には珍しいトンボも多く、日本最小のトンボであるハッチョウトンボのオスが鮮やかな赤い姿で水草にとまっている姿も何度か見られました。また、池塘の底にはイモリも見られました。

カキツバタ アヤメの仲間で花弁の根元に白い筋が入る
ヒツジグサ スイレンの仲間で羊の刻に開花するためこの名がついた
ナガバノモウセンゴケ 北方系のモウセンゴケで、食虫植物としても有名
ノビタキのオス 夏鳥で本州では山の高原や湿原で繁殖し、冬は東南アジア等に渡る
ノビタキのメス
ハッチョウトンボのオス とても小さく、羽を除くと大きさは1円玉程度である
カオジロトンボ 高山の水辺のみで見られるトンボで顔が白い
コサナエ 山の渓流で見られるトンボ
アカハライモリ 池塘で見られ、背中は黒いが腹部は鮮やかな赤で黒い斑紋が混じる

牛首の分岐からは東電小屋の方に進み、ニッコウキスゲ群落のポイントに向かいます。実はここまでの道でほとんどニッコウキスゲは見られませんでした。ようやく群落が見えてきたと思ったら鹿除けの柵が設置されており、その中のみ咲いている状態でした。かなり鹿の食害による深刻なダメージを受けている模様です。この周辺ではアオヤギソウやカキラン、トキソウなども見られました。

ニッコウキスゲの群落 鹿侵入防止柵の内側には群落が見られた
カキラン 花弁の上部が柿の実に似た色の可愛い蘭
ミズチドリ 高原の湿原で見られ、白い花が飛ぶ千鳥を連想させる
アオヤギソウ 花が淡黄緑色で目立たないが、よく見ると可愛らしい

ところが、この頃から天気予報の通りに雲行きが怪しくなって来て、雨が降り出して本降りになってしまい、ヨッピ橋から竜宮経由で宿泊する小屋がある見晴までは雨の中での歩行となってしまいました。ヨッピ橋近くの河原では昼だというのにニホンジカの姿が見られました。

小屋に到着して濡れた服を乾燥室で乾かしながら、ひと風呂浴びた頃には雨は上がりました。尾瀬の小屋ではお風呂に入れる事も魅力のひとつです。ビールを飲んで一息入れたら、温泉小屋のある赤田代方面に散策に出掛けました。

赤田代には尾瀬でもここでしか見られない草花があり、今回はクロバナロウゲ、コアニチドリ、サワヒヨドリが見られました。湿原ではホオアカのつがいが見られ、上空にはノスリが飛んで、小屋へ戻った時には手前の広場の木にはニュナイスズメの群れが集まっていました。夕食後には再度、木道を歩いて蛍狩りを楽しみます。あまり知られていませんが、7月下旬から8月上旬まで尾瀬ケ原ではヘイケボタルが見られます。

キンコウカの群落と至仏山 雨が上がり暮色がかった至仏山が見られる
クロバナロウゲ 本州中部以北の湿原で見られるいかつい花で、漢字では「黒花狼牙」と迫力がある
コアニチドリ マタギの里である秋田県上小阿仁村で発見されたのが名前の由来で、絶滅危惧種の蘭
マイサギソウ 湿原で見られるサギが舞っているイメージの蘭
オタラコウ フキに近い仲間で水が流れる場所で見られる
ホオアカ 夏は高原で繁殖し、冬は日本南部で越冬するホオジロの仲間

翌日は朝から快晴です。あわただしく夜明けの風景を撮影して、5時半には朝食を食べて出発です。見晴から尾瀬沼までの道は樹林帯が大半で、最初はブナの原生林で標高をあげるにつれてアオモリトドマツとシラビソの針葉樹に替わっていきます。ここではメボソムシクイやエゾムシクイ、ウソを期待しましたが、声は聞こえましたが姿を見る事は出来ませんでした。ゆるいけど長い登りを歩いて白砂峠を越え、白砂湿原で休憩しました。ここは針葉樹林に囲まれた湿原で、久しぶりの解放感に浸れます。池塘ではイモリやツチガエル、マツモムシの背泳ぎやゲンゴロウの仲間が見られました。ここからはゆるい下りを少し歩くと尾瀬沼の沼尻に着きます。尾瀬沼をあふれた水は沼尻から尾瀬ケ原に下り、他と合流して只見川となり、三条の滝を経由して日本海にそそぎます。ここは以前小屋とトイレがありましたが火事で焼失してしまい、今は休憩するスペースのみ残っています。この周辺は標高が高いので、サワランが咲き残っていました。

沼尻からは尾瀬沼北岸の道を歩いて大江湿原を目指します。針葉樹林と小さな湿原が交互に現れる道で、途中でヒガラの群れや高山性のトンボであるエゾイトトンボなどを観察しながら歩きました。

夜明けの尾瀬ケ原と至仏山
ミヤマバイケイソウ 山道の沢沿いに咲く大型の花
サワラン 色は鮮やかであるが、これ以上蕾が開かない蘭
エゾイトトンボ 高山性のトンボでブルーと黒が鮮やか

大江湿原へは鹿除けのゲートを開けて入ります。今年のニッコウキスゲは裏年でやや少なめでしたが、コオニユリ、オタカラコウ、ヤナギランなども咲いて眼を楽しませてくれます。更に花が多いので蝶もよく見られました。

大江湿原入口にある鹿柵の扉
ニッコウキスゲ群落と尾瀬沼及び三本唐松
ニッコウキスゲ 別名ゼンテイカ(禅庭花)と呼ばれ、朝方に開花すると夕方にはしぼんでしまう
コオニユリ 湿原で見られるユリの仲間
ヤナギラン 日当たりのよい草原を好む大型の花
ウラギンヒョウモン 山地性のヒョウモンチョウの仲間
アキアカネとニッコウキスゲ 実はこのトンボが一番多く見られた

その後、長蔵小屋のベンチで尾瀬沼を眺めながら昼ごはんを食べます。水辺にはアオサギやカワウが見られました。昼食後は沼沿いの道をしばらく歩いた後に三平下で尾瀬沼と別れて三平峠までの山道を登り、峠から一ノ瀬まで下ります。下りの道ではでは再びニホンジカに至近距離で遭いました。その後一ノ瀬からシャトルバスで大清水へ行き、路線バスに乗り換えて尾瀬戸倉に戻って温泉で汗を流してから上毛高原駅で解散しました。

尾瀬沼と燧ケ岳
ニホンジカ 見た目は可愛いが、植物への被害は深刻

今回は姿を見た鳥は少ないものの、声を含めると22種の観察となりました。しかし、尾瀬の魅力は湿原と山の風景とそこに咲く草花や動物全てであり、ベストシーズンの初夏に見られる動植物はほぼ網羅したと思います。自身で記録したリストでは、植物82種で、動物は鳥以外では哺乳類1種、両生類3種、魚類2種、昆虫18種でした。特にトンボは北方系や高山系の珍しい種類が見られて興味深かったです。今後も動植物層の豊かな地域へのツアーを企画して皆さんをご案内したいと思います。

◆道祖神的!?国内ツアー特集

道祖神