アフリカ旅行を専門とする道祖神にとって、原点とも言うべきツアー。それが、アフリカをトラック1台で旅する、オーバーランドツアーでしょう。古くは、1932年にアフリカ大陸の最南端である南アフリカのアグラス岬からエジプトのカイロまで、トラック1台で8ヶ月かけて旅をしたというウェストン一家の旅が記録されています。そしてこれまで、長い年月を経て、多くの人々が色々なルートでオーバーランドに挑戦してきました。ある人はこう述べています。「オーバーランドの目的地は、他ならぬ、旅をするということである。」
2024年の道祖神のオーバーランドツアーは、2023年のルートを踏襲し、ジンバブエのビクトリアフォールズを起点に、ボツワナ、ナミビア、南アフリカという南部アフリカ4か国を巡る、総距離約5,200㎞の旅です。
道中には、野生動物との遭遇や、地元の人々との出会いがありました。また、トラックの故障などのトラブルもありました。こちらのレポートでは、今回の旅で見えたもの、その一端を主に写真を通してお伝えしたいと思います。
Day 1~Day 3:成田(日本)~ビクトリアフォールズ(ジンバブエ)
日本を出発し、まずはジンバブエのビクトリアフォールズへ。ここが今回のオーバーランドの出発地点です。元々、モシ・オ・トゥニャ(雷鳴轟く水煙)と地元の人々により呼ばれていた滝。それが、奴隷解放に向けて尽力した人物としても名高い、イギリス人探検家デービッド・リビングストンに西洋人として初めて発見されたのが1855年。水量が多い時期には、街のホテルからも高く巻き上がる水煙が観察できます。その景色を見ていると、遂にビクトリアフォールズに到着したのだ、という実感が沸いてきます。



Day 4~Day 8:カサネ(チョベ国立公園)~マウン~クワイ/モレミ動物保護区
ジンバブエのリビングストンを出発し、ボツワナとの国境を越え、チョベ国立公園への玄関口と知られるカサネを目指します。国境では、トラックのタイヤの消毒や旅行者の靴の消毒など、陸路国境越えならではの手続きが待っています。チョベ川のボートクルーズでは有名な象の川渡りにも遭遇。鼻を水面から突き出し、潜水艦の様に進む姿はチョベならでは。また、ボートクルーズの帰りには、綺麗な夕日を見ることができました。このカサネから、キャンピング生活が始まります。



カサネを離れ、かなり迂回しつつ、動物衛生検疫ポイントなどを通過しながら、マウンに移動します。ここでトラックを離れ、サファリカーに乗り換えて、モレミ動物保護区の足元、クワイに向かいます。




クワイでは、サファリ三昧の数日です。ヒョウ、ライオン、ゾウはもちろんのこと、リカオンやラーテル、アフリカン・ワイルド・キャットまで、本当に多くの動物を見ることができました。宿泊は、旅行者の滞在に合わせて大自然の中に事前にキャンプを設営する、常設型のキャンピングとなります。電気やインターネットなんてものは、もちろんありません。昼は燦々と輝く太陽の下、夜は満天の星空の下、大自然を満喫します。時々、キバシコサイチョウ等の野鳥や、さらにはゾウがキャンプ地を通過することも。これぞアフリカという体験をします。炊事や洗濯、シャワーのお湯の準備まで、クルーが一生懸命働いてくれました。





Day 9~Day 11:オカバンゴ・デルタ~シャカウェ(ボツワナ)~ルンドゥ(ナミビア)
今度は一転、小型飛行機でオカバンゴ・デルタの上を飛び、パン・ハンドルと言われる湿地の入り口のエリアに向かいます。空からオカバンゴ・デルタの壮大な景色を眺めることができました。そして、到着後、ハウスボートに宿泊しながら、オカバンゴ川を遡上していきます。ハウスボートから眺める景色は美しく、ビール片手に何時間も物思いに浸ける人、美しい景色を前に昼寝を楽しむ人、思い思いに時間を過ごします。



オカバンゴ川の旅を終え、ここで再度トラックと合流です。トラックのクルーとも5日ぶりの再会で、かつ、この数日がとても濃かっただけに、かなり懐かしい印象。ここから、まずはカラハリ西部に位置し、「砂漠のルーブル」との異名を持つツォデロ・ヒルズに向かい、サン人が描いたとされる岩絵を見学します。その後、ボツワナ最後のキャンプ地、シャカウェへ。脇を流れるオカバンゴ川にはワニの姿も。そして、ここのキャンプサイトから見た朝日が、この旅全体を通して、1番美しい朝日だったかもしれません。真っ赤に燃える様にオレンジ色に輝く朝日と、それを目の前に、テーブルを囲んで取る朝食。まさに最高の瞬間でした。



そしてナミビアへ入国します。歩いて国境を越え、まずは、ディヴンドゥの町に買い出しへ。その後、次のキャンプサイトのあるルンドゥへ移動します。ここでは夕方のサンセット・クルーズがお勧めです。雲一つない空の中、完全の形で夕日が彼方へ沈んでいきます。


Day 12~Day 14:エトーシャ国立公園
そのままナミビアを西に進み、次なる目的地は22,270㎢もの敷地面積を誇る、アフリカでも有数の動物保護区、エトーシャ国立公園です。ここに、キャンプ地を変えながら3泊します。ライオンのみならず、ヒョウやサイなど、多くの動物を見ることができました。特に夜間、キャンプサイト近くの水場でじっと待っていると、小さな子供を連れたサイの親子が水を飲みに現れました。サイの子供は比較的長く、2~4年程、母親と一緒に過ごすと言われています。こんな環境ですから、日々、命をかけて暮らしていることでしょう。暫くして、暗闇の中にすっと消えていく親子の姿を見て、自然と涙が溢れてきました。




Day 15~Day 16:オプウォ~エプパ
そこから、オチョやオプウォといった町を経由しつつ、ナミビアの北西、アンゴラとの国境にあるエプパまで進みます。オチョではスーパーなどを回って買い出しを行い、オプウォでは小高い丘で一泊しました。ここも夕日が美しく、オレンジ色に輝く夕日が大地や木々を照らしていました。そして、エプパでは、ヒンバの人々の村を訪問します。トウモロコシの粉や料理油などをお土産に持参します。同じくヒンバ人のガイドが村を案内し、ヒンバの伝統や文化、人々の暮らしを説明してくれました。





Day 17~Day 19:パームバッハ~メディーサ
ここから、ナミビアを一気に南下します。この日は調子よく走行中、突然、車体後部から異音が…。停車し確認すると、なんと車輪がバーストしていました。時には、こういうトラブルも起こりますが、みんなで協力して対処していくのがオーバーランドです。無事、タイヤ交換完了。



続いて、パームバッハに到着。ここにはライオン、ヒョウ、チーター等の大型肉食獣も生息していますが、砂漠に住むゾウ、砂漠ゾウや、アフリカでも有数のクロサイの一大生息地としても知られています。今回は残念ながら、砂漠ゾウは見られませんでした。しかし、キリンやスプリングボック、スティンボック等を度々見ることができましたし、さらに、サイを徒歩で追いかける、ライノ・トラッキングに挑戦することもできました。車を降り、大地に立って、動物たちと同じ目線でサイを見る。とてもワクワクする体験でした。また、中には2,000年を超えて生きるものもいるという植物、まさに生きた化石、ウェルウィッチアも観察することができました。



パームバッハを離れ、次の目的地、世界遺産トゥウェイフルフォンテーンへ。ここには、西暦1000年頃までに削られたとされる、岩石線画が残ります。キリンやゾウ、サイといった動物もさることながら、人間からライオンに変形するシャーマンを描いたとされるライオンマンが一番の見所でしょう。宿泊は、裏手の岩山から絶景が楽しめるキャンプサイトで。




Day 20~23:スワコップムント~セスリエム
ナミビアの南下を続け、いよいよナミブ砂漠観光の拠点、スワコップムントへ。ここでは、参加者の皆さんは、それぞれお好みで現地発着のオプショナル・ツアーに参加し、砂漠ならではのアクティビティを楽しみます。砂漠の小動物や昆虫を探すツアーから、砂漠を4WDで駆け抜けるドライビング・ツアー、そしてスカイ・ダイビングまで(天候に恵まれず、残念ながらスカイ・ダイビングはキャンセルになってしまいました)。なお、スワコップムント到着前には、20万頭以上のミナミ・アフリカ・オットセイが生息するというケープクロスも訪問しました。オットセイを間近で見ることができ、皆さん大興奮だった様子。





いよいよ、セスリエムに到着。ここを拠点に、最深部ソーサスフライを目指します。キャンプサイトにはオリックスの訪問もあり、また、木にはシャカイハタオリが巨大な巣を作っており、キャンプサイトにいるだけでも、砂漠滞在を堪能できてしまいます。しかし、やはりナミブ砂漠観光の一番のハイライトは何といっても最深部ソーサスフライでしょう。いつ来ても砂漠は美しい姿で出迎えてくれます。






Day 24~Day 25:ホバス(ナミビア)~ヴィオールズドリフト(南アフリカ)
そして、ついにナミビアでの最後のキャンプ地、ホバスに到着です。ホバスのすぐ近くには、アフリカ最大の渓谷、フィッシュ・リバー・キャニオンが位置しており、当然我々も渓谷を訪問しました。朝早かったせいか、渓谷には他の観光客の姿はなく、壮大な景色を自分達だけで楽しむことができました。あまりの雄大さに、ずっとここにいられそうな気さえしてきます。しかし、旅のゴールはもうすぐです。このまま、国境を通過し、いよいよ最後の訪問国、南アフリカに向かいます。



そして、ついに南アフリカに到着しました。オレンジ川沿いにあるキャンプサイトが、今回のオーバーランドツアーの最後のテント宿泊地となります。ここまでくると、テントの設営も撤去も流れる様にできるようになります。ヴィオールズドリフトでは、オレンジ川をカヌーで下るアクティビティも用意されています。しかし、添乗員の心に一番強く残っているのは、このキャンプサイトのシャワー・ルーム。掘っ建て小屋の様な簡素なシャワー棟ですが、そこから見られるのは、正に絵画のような景色。本当に素晴らしかったです。



Day 26~Day 31:シトラスダル~ケープタウン~日本
オリファンツ川の流れる渓谷沿いに位置し、南アフリカを代表する柑橘類の産地であるシトラスダルを経由し、旅の終着地、ケープタウンに向かいます。長旅を共にしたThe Beast IIですが、ナミビアを出た所で一度洗車し、また、南アフリカに入ってからは舗装路が続くので、すっかりリフレッシュした様子。それでも、ケープタウンの街中に着くと、やはり目立ちます。ケープタウンでは、もちろん喜望峰を訪問しました。こうして、一か月にも及ぶ長旅、「南部アフリカ オーバーランド 31日間 2024」は無事終了しました。色々なトラブルがありましたが、それらを乗り越えつつ、参加者全員で最終地点まで辿り着くことができたのは、ひとえに参加者の方々のご理解とご協力があったからだと思います。
通常、旅行には目的地があり、そこにある自然や文化遺産を訪問しながら、景色や風景、史跡等を見て楽しむことが多いかと思います。しかし、オーバーランドツアーは少し違い、トラック1台に乗り込み、参加者やクルーが協力しながら、時に困難を克服しながら旅を続けていきます。この旅の過程に、オーバーランドの意義があるのかもしれません。



