ナミビア、砂と風と水を巡る旅

ナミビア、砂と風と水を巡る旅

2024年12月27日出発「ナミブ砂漠訪問 ナミビア・キャンプ 10日間」にご参加された、K.Ueno様からのレポートです。

ナミブ砂漠の起源は、遥かドラケンスバーク山脈からオレンジ川と大西洋の寒流により運ばれてきた砂で、大西洋から吹き込む南西風が内陸に砂丘を形成し長い年月をかけて風化した結果と言われています。あの、レソトホース&トレッキングツアーから5年。このような山―川―海、そして風の競演が生み出された砂漠の世界を、久々の“道祖神的な旅のスタイル”で楽しんできました。時は2024/25の年越し、長期休暇がとれる巡り年です。

旅は標高1655mに位置する首都・ウィンドフックから、カーゴトレーラーをハイエースがガタゴト引っ張る総勢10名のキャラバンで出発です。前半は、緑の残る高地からグレートエスカーブメントを超え、ナミブ・ナウクルフト国立公園内のセスリエム・キャンプサイトまで移動します。グレートエスカーブメントとは、太古の昔にゴンドワナ大陸から南アフリカ大陸が分離したときに形成された造山活動帯の残り。地下深部で形成された花崗岩や石英が露出する地質学的にも大変興味ある景観が広がります(写真1)。花崗岩(グラナイト)は圧縮強度が高いといわれており、そういえばウインドフックで見た教会もこの岩で構築されていました。半乾燥の大地にはところどころで地下水をくみ上げるための風車と貯水槽が建っています(写真2)。キャンプサイトでは強風と格闘しながらのテント設営となりました。砂まみれとなる事は覚悟していたのですが、このような強風は想定していませんでした。しかし、テントの組み立ては簡単で、準備されたマットレスも寝心地十分、清潔なトイレ・温水シャワーと冷えたビールが楽しめるバーが整う快適なキャンプサイトでした(写真3)。それにしても、午前中に見られるポコポコとした雲はアフリカ特有で写真映えします(写真4)。朝・夕の日差しを受けたデッドフレイの残る砂丘トレッキングには、国立公園内のこのサイトが便利との事。砂丘景観は多くのガイドに紹介されていますので省略しますが、午後から気温は急上昇し夕方には強風が吹きだしますので(写真5)、砂丘登攀の際は引き返せる十分な体力と熱中症への配慮が必要です。

写真1
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写真2
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写真3
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写真4
写真4
写真5
写真5

砂漠というと地上に目が行きがちですが、キャンプサイト近くには峡谷(英語ではgorge)があり、絶壁に囲まれた散策路に沿って半地下探検が楽しめました(写真6)。そして、数10mの谷底まで降りると、なんと水面が顔を覗かせているではありませんか。あの風車も、きっとこのような地下水脈から水をくみ上げているのでしょう。道理で、キャンプ場のプールは飛び上がるほど冷たかったです。それにしても、こんなに深い渓谷を抉るほどの水の流れはいつ生じるのでしょうか?この疑問は、旅の後半で解き明かされることになります。

写真6
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旅の中盤は、ビーチリゾートで有名な沿岸都市、スワコプムントへ移動します。南北に広がるナミブ砂漠を、かなりのガタガタ道で迂回です。そんな一面の岩石砂漠で、のそのそと走る黒い二本足の生き物に遭遇。ダチョウです(写真7)。彼らはこんなところで何をしているのでしょうか?遠方の車列を仲間だと思い近づいてきたのでしょうか?少なくとも我々の車列よりすぐれた高速移動で走り去っていきました。海岸に近づくと一気に気温は低下し、塩田の工場(写真8)やピンクの羽が美しいフラミンゴ(写真9)が車窓から見られるようになります。ウォルビスベイで4WDに乗り換え、ナミブ砂漠と大西洋が出会うサンドイッチハーバーに向かいます。この砂砂漠ではまったく予期していないアドベンチャーが待ち受けてました(写真10)。普通はGのかかる乗り物というとジェットコースターや飛行機なのですが、砂漠の斜面を利用してこんなに(過激に、、)飛び回る4WDに乗ったことはありません。ツアーのスタート前に海岸でドリンク休憩がありますが、くれぐれもビールなどをたしなまれないように。

写真7
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写真8
写真8
写真9
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写真10
写真10

サンドイッチハーバーの砂丘は純白で、海からの強風が吹き荒れています。大西洋上の高気圧が南西風を生じているのですが、セスリエムでも午後から特に強風が生じている事を考えると、もしかしたらこの風は日中に内陸が加熱されて寒流との気温差(気圧差)により生じる海風かもしれません。日変化を伴い定常的に生じるこの風が沿岸の砂を絶えず内陸に運び、風化して色が変色していくのでしょう。一方、寒流上では下層雲が起ちやすく(日本では釧路の霧や東北地方のヤマセが有名)、明け方はこれが霧となって海岸沿いに立ち込めます。実は、この霧水は生態系にとって重要な水資源のはずですが、雨量としてはカウントされないので、ガイドブックでは雨が降らない事になってしまいます。欧風の街並みを残すスワコプムントのホテルにはクリスマスの飾りつけが美しく残り、旅の疲れが癒されました。翌朝のハーバーは荒波と海霧にかすむ桟橋(写真11)が、カリフォルニアの海辺の町を彷彿させました。であれば、この海霧がどこかで消えて、あの灼熱の乾燥地帯の境界が存在するはずです。案の定、スワコプムントから内陸に車を走らせること1時間で、下層の雲が見事に消失する前線が現れました(写真12)。この先は灼熱の台地となることを知っている現地ガイドは車を止め、アウトドアキャラバンならではの昼食休憩が始まります。

写真11
写真11
写真12
写真12

旅の終盤は、エトーシャ国立公園でのサファリが目玉です。途中でヒンバ族の集落やサン族の残した壁画(写真13)を見学しました。砂岩に刻まれた絵は、昔この地域にも多様な動物が生息していたことを連想させ、その自然環境を生活の糧としていた民族が国政により観光業に従事せざるを得なくなった歴史を考えさせられました。これはアフリカに限ったことではありません。途中のガスステーションで、地元の黒人系労働者と会話する機会がありました。近くの高山でウランを採掘しているとの事。日本もその一部を輸入していますね。道祖神的な旅では、こういった地元の人(今回のガイドさんもスワコプムント在住だった)と話をするのも楽しいものです。さて、サファリの方はと言うと、水辺が拡大する雨季は動物たちの分布が散ってしまうらしく、大物に出会う事はできませんでした。しかし、ウインドフックへの帰路で思わぬ気象と遭遇します。前日からどうも空模様が怪しく、地平線が日中から暗かったのですが、ハイウェーを南下するうちに急に嵐が到来したのです(写真14)。最初は大粒の雨でしたが、急に風が強くなり視界が利かなくなりました。慌てて路肩に車を小一時間止めると、気温が急激に下がり、風雨が車を揺らしました。積乱雲からのダウンバースト(降雨とその蒸発に伴い上空から引きずりおろされる冷気が作り出す前線)が砂を巻き上げながら到来したのではないかと想像しています。あたりは一面の水溜まりと化しました(写真15)。これだけの水量があれば普段水の流れないワジを潤し、セスリエムでみたような峡谷も刻まれることでしょう。この嵐をもたらした多量の水蒸気も大西洋から流れ込んできたのでしょうか?世界各地の様々な風土を作り上げている自然の仕組みに興味は尽きません。

写真13
写真13
写真14
写真14
写真15
写真15

本レポート作成に当たっては、“ナミビアを知るための53章(明石書店、水野・永原編著)”を参考にしました。ツアーを安全に実施していただいた添乗員・現地ガイドの方と、毎日の旅を楽しく盛り上げてくれた参加者の皆さんにお礼を申し上げます。Baie dankie! (K.Ueno)

■ナミブ砂漠訪問 ナミビア・キャンプ 10日間