数年前、ボリビアのウユニ塩湖から、アタカマ高地を走りチリに抜けるルートを走破した。700キロ程オフロードが続く。チリとの国境までは約450キロ、雨季のため塩湖を横切る近道は使えない。かなり大回りをしなくてはならず、地図上では道が特定できないため、宿のオヤジに相談してガイドを雇うことにした。紹介してもらったのは20代後半の兄ちゃんジョニー、多少英語が話せる。国境までの約束で50ドル、帰りの交通費をプラス50ドル、計100ドルの約束だ。
ウユニの町でガスの入手や水、食料をサポートカーに積み込んで早朝出発した。我々のグループは車2台、バイク15台、30リッターのジェリカンを6本積んでいるので車450キロ、バイク500キロの走行が可能だ。途中2カ所のGSがあるとの事。午前中いっぱい走って最初のGSに入る。ところがディーゼル、ガソリン共に売り切れ、明日にはたぶんローリーが来るだろう…との返事。明日まで待つ訳には行かない。国境にもGSはあるが、ガソリンがあるかどうかは分からないという。しかし、ここまで来て引き返すわけにはいかない。
昨晩ジョニーに「国境までGSはあるか?」と聞いたとき、「2軒ある!」と答えたのでさほど心配せずにウユニの町を出たのだ。ジョニーに確認すると「あなたの質問はGSがあるか?で、ガソリンがあるか?ではなかった」との事。アホッ!ガスのないGSなんかいくらあってもしょうがねぇだろ!と言いたかったが、グッと我慢した。
夕方5時、バイクも車もガス欠寸前で国境着。標高3200m。人影も車もなく砂塵が舞ってるだけ、寒い。GSどころか店も民家も何もない。まずガスを手に入れなければ…。砂まみれの国境事務所に行き、山賊だか役人だかよくわからないヒゲのオッサンに聞くと、ジェリカンを持って俺について来いという。言われるままついて行くと、裏手の砂の上にドラム缶が4~5本置かれていた。オヤジは「1リッター2ドルだ!」(町ではその半値)と言い、ドラム缶のキャップを開け、ゴムホースを差込み、口で吸い始めた。これがGSか!?まぁでも助かった。捨てる神あれば拾う神あり。
30キロのジェリカンを2本両手に下げ、同行のメカニック小島と顔を見合わせ「へへへ…」と小さく笑った。しかしもうすぐ日が暮れる。手ぶらのジョニーはここからどうやってウユニの町に帰るのだろう?!ミネラルウォターと昼の食べ残しのパンを彼にあげた。ボリビアの旅も侮れない。
写真 : オフロードを行く