African Art 24 西アフリカの真鍮の装飾品

African Art 24 西アフリカの真鍮の装飾品

西アフリカには真鍮で作られた数多くの装身具がある。指輪、ペンダント、ブレスレット、お守りなど部族ごとに個性があり、形態的にも素晴らしいものである。これらの真鍮細工は様々な書籍で紹介されているが、今回はその一端を私の持っている作品でお見せしたいと思う。ほとんどは各部族の土着信仰に由来していて、動物のデザインについては信仰上重要な意味合いがあり、とても興味深い。

①人物像のペンダント(セヌフォ族)
①人物像のペンダント(セヌフォ族)

①人物像のペンダント(セヌフォ族):人物像が1人の場合と、2人、3人、まれに4人の場合もある。一般的には多くが2人で、双子の場合も多い。大地の守護神を表わすと信じられていて、厄災から身を守るお守りのような意味合いを持っている。通常はペンダントとして使うが、小さなものは、腰や足首、腕に付けられる。
②毒蛇に対するお守り(ガン族)
②毒蛇に対するお守り(ガン族)

②毒蛇に対するお守り(ガン族):占い師たちがパイソンなどの毒蛇から身を守るためのお守りとして農夫たちに渡した。これらのお守りは通常足のくるぶしに付けられた。複数の頭を持つ蛇はガン族の精霊“tvrifa”を表わす。この精霊は15世紀ガン族がガーナから移住した時一緒にやってきて、日常の行ない“sim nyaaba”の間に顕れた精霊に属するという。
③カメレオンのペアペンダント(ボボ族)
③カメレオンのペアペンダント(ボボ族)

③カメレオンのペアペンダント(ボボ族):ブルキナファソでは、占い師たちは上下に並んだペアのカメレオンを護符としてよく使う。子供たちは1匹のカメレオンのペンダントを付けることが多い。この部族社会では、カメレオンの原初の性質は宇宙の時間に関連付けられていて、出産の瞬間に近づいた女性たちには、悪い予兆を排除するために多くのペンダントが渡される。この世に生れ出る際の危機に直面した子供と占い師の交感を通じて魂は胎児に入ると信じられている。その瞬間の異常事態をペンダントが警護するのである。ボボ族はこれらを“魂のモノ”という意味の“Sabin a fre”と呼んだ。このような生れ出るときの護符は全てのボボ族の人たちに与えられ、生涯大切にされる。
④カメレオンの指輪(セヌフォ族)
④カメレオンの指輪(セヌフォ族)

④カメレオンの指輪(セヌフォ族):カメレオンの指輪は男性にのみ使用される。使用する形は年齢層によって通過儀礼の段階を表わす。セヌフォの社会ではカメレオンは賢明さを表わし、それを付けることは自身を賢明にすると信じられている。カメレオンは創造神から創られたものなので、たとえ偶然であろうと殺すことは大変な厄災が降りかかる。その危険を避けるためにも人々はカメレオンの付いた指輪、ブレスレット、ペンダントなど常に身に付けている。カメレオンはまたいろいろな病気などの厄災除けのシンボルでもあり日常生活から切り離せない。
このほか、ドゴン族にも真鍮の装飾品は多い。
⑤ドゴン族の水連をモチーフにした指輪
⑤ドゴン族の水連をモチーフにした指輪

⑥穀物庫をモチーフにした指輪。牝牛と女性の乳房を表わしているともいわれ、富と豊穣を表わす
⑥穀物庫をモチーフにした指輪。牝牛と女性の乳房を表わしているともいわれ、富と豊穣を表わす

⑦ドゴン族の指輪と思われていたが、馬具の紐と一緒に発掘されたことで馬具に属する何かではないかと考えられている
⑦ドゴン族の指輪と思われていたが、馬具の紐と一緒に発掘されたことで馬具に属する何かではないかと考えられている

⑧アシャンティ族の“アサンテヘナ”王の指輪。通常は金製
⑧アシャンティ族の“アサンテヘナ”王の指輪。通常は金製

写真提供/小川 弘さん

小川 弘さん
1977年、(株)東京かんかん設立。アフリカの美術品を中心に、アフリカ・インド・東南アジアの雑貨、テキスタイルなどを取り扱っている。著書にアフリカ美術の専門書「アフリカのかたち」。公式ウェブサイト http://www.kankan.co.jp/