アフリカには木で作られる彫像の他、土で作られた土偶や壺にとても面白いものがたくさんある。それらは木彫品と同じく部族ごとに独特な造形を持つ。そのひとつトーゴの“ブードゥー”として知られる祭礼、儀礼用に使われる土偶を取り上げてみた。

エウェ族(トーゴ)の祖先像 素焼きの上に石灰石(H61cm)

ガーナからトーゴにかけて分布するエヴェ族、アジャ族、フォン族およびその同系の文化圏に属する人々は“ブードゥー”として知られる宗教を持っている。ブードゥーとは彼らの住むすべての世界に存在する、生命を支配する神秘的な力を表す言葉である。ブードゥーに関するもっとも良く知られる工芸品は、王家の主人のために作られた金属製の洗練された彫刻や、真鍮や金などで覆われたり、包まれたり、また結びつけられたりした木製の彫像である。
(H71cm)

しかし土製の焼き物の塑像も儀礼に使われる重要な役割を担っている。特有のかたちを持つテラコッタの器や塑像は、個々の神々と関連があり、主に神殿や祠に置かれている。かたちとしては底が開いて空洞になっていて、本来は上下逆の壺である。明らかに陶工によって作られたものである。生贄の供物の体液が頭部から滴りその線が腰のまわりまで染みになっており、その腰の部分から下は土の中に埋められていたものである。
(H50cm)

トーゴの首都ロメから20km位北にドライブした時、フェティッシュマーケットと呼ばれる市場に遭遇した。占いに使うあらゆるものを売っている。牛、猿の頭蓋骨、カメレオンの干からびたもの、蛇、鳥、蛙などあらゆる動物の死骸。その市場に近づくと何とも異様なにおいが漂う。そんな中にまだ儀礼をおこなっていない新品のテラコッタの像が並んでいた。新品の土偶はまだ本当に生命が吹き込まれていないようで少々かわいらしい。これがいったん祠に安置され何度かの生贄の儀式を経るとこの写真のように神秘的な力が宿るように見えるのは暗示に掛けられた気のせいなのだろうか?
像は命を吹き込まれて力強く面白い作品に成長していくように思える。
写真提供/小川 弘さん

小川 弘さん
1977年、(株)東京かんかん設立。アフリカの美術品を中心に、アフリカ・インド・東南アジアの雑貨、テキスタイルなどを取り扱っている。著書にアフリカ美術の専門書「アフリカのかたち」。公式ウェブサイト http://www.kankan.co.jp/
道祖神

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