木の上で母親の帰りを待つヒョウの子。この手の写真は枝葉の隙間を狙って撮らねばならぬので、その都度ドライバーに細かな位置調整をしてもらう。
ボツワナ、マシャトゥ動物保護区はこれまでで私が一番多くツアーを案内してきた場所だ。
写真撮影という観点から見ると、マシャトゥの魅力は何と言っても歩留まりの高さにある。動物までの距離が近く、道に縛られないオフロード走行が許され、一箇所に車が3台までしか集まれないという規則が設けられているので、他人に邪魔されることなく自由なポジション取りができる。野生動物のポートレートを狙うにせよ、アクションを狙うにせよ、相手の向きや行動に合わせて自由に車の位置を決められることのメリットは絶大だ。そして現地ガイド/ドライバーたちとも15年以上にわたる付き合いなので、細かな説明をせずともこちらの意図を的確に読み取ってくれる。無駄なやりとりをせずに済む分シャッターチャンスをものにできる確率が上がるのだ。実際今回も動物たちの多彩な姿、そして雄大な風景など様々な写真を撮ることができた。ここでお見せするのは全て2026年2月6日〜15日の日程で開催したツアーの際に撮影したものだ。
サファリのハイシーズンは通常乾季と言われているが、雨季には雨季の魅力があり、写真を撮る上では外せない季節だと感じている。なぜなら雨で空気中の埃が洗い流されて空気の透明度が高くなるため、「ぬけ」の良い写真が撮れるし周囲の景色も瑞々しい緑になる。水と緑が潤沢にある時期というのは、草食獣たちの毛並みや色艶がよく活性も高い。加えてインパラなどにとっては繁殖期を意味し、肉食獣が獲りやすい小さな獲物が増えるためハンティングシーンに巡り合う可能性も高い。さらに、川に水があるとそこにゾウやライオンなどがやってきて、乾いた季節には見ることのできない水辺の光景を目にするチャンスも生まれる。また、2月のマシャトゥはヨーロッパやアフリカ大陸北部などから数多くの渡り鳥たちが越冬や繁殖のためにやってくるシーズンでもあるので、野鳥写真を撮る人間にとってはたまらない。
ところで、「雨季」と言っても日本の梅雨のように一日中じとじと雨が降り続けるようなことはないのでそこはご安心いただきたい。
私がガイドを務めるツアーはすべて写真撮影に主眼を置いているため、通常のサファリツアーとは違う点がいくつかある。一番の特徴は参加者人数の少なさ。大きなレンズをつけたカメラを車の上で取り扱うには十分なスペースの確保が必須となる。そのため募集人数は最大5名までのみとし、9人乗りのサファリカーを貸し切りにしている。二つ目は時間の使い方。撮影対象の選定は基本的にこちらで行い、よい写真が撮れそうと感じたり、目の前の動物が何か面白い行動に出る可能性があると判断した場合、その場に徹底的に居座ることも辞さない。じっくり観察すること、そして忍耐強く待つことが自然写真の世界ではとりわけ重要なのだ。そして連泊。複数の場所を短期間で渡り歩くと多くの時間を浪費するだけでなく、頻繁に荷造りをせねばならなかったりで体力をどんどん削がれる。体力に余裕がなくなると当然気力も減退し、それは写真の結果にも如実に現れてしまう。一箇所にできるだけ長く逗留することで体力に余裕が生まれ、目も周囲の環境に慣れてくる。そして同じエリアに通うことで、前日のフィードバックを踏まえてよりよい写真を目指すことが可能になるわけだ。
ちなみに「撮影ツアー」と銘打ってはいるが、撮ることが義務ではないので、写真をまったく撮らない方の参加も歓迎している。
携行する撮影機材の量と種類は悩ましい問題であり、一番よく受ける質問だ。
私がいつも推奨しているのはフルサイズのボディ2台にそれぞれ24-120mmと100-400mmのレンズを付けっ放しにするというものだ。これだけあればほとんどのシーンに対応できるし、フィールドではレンズ交換をしている余裕はない。センサーダストの問題もあるので極力レンズ交換は避けた方がよいという事情もある。マシャトゥでは動物たちとの距離が非常に近いので、望遠側は400mmもあれば大抵事足りる。ただし小鳥の類まで撮るとなると500mm以上の画角が欲しくなってくるのだが、マシャトゥで使用するサファリカーは屋根も支柱もないフルオープンタイプであり、撮影の自由度が極めて高い反面、被写体がどのアングルに現れてもおかしくないことも意味している。そのため一脚のようなサポートを使うとレンズを向けられる方向が限られてしまい、思うように撮影できないという問題が発生する。そのため撮影は基本的に手持ちで行わねばならず、大型レンズを使うのならば腕力/体力に相当の自信が必要となる。
「緑の季節のマシャトゥ自然写真撮影ツアー」次回は2027年2月5日出発予定となっている