砂漠に棲むデザート・ライオン

砂漠に棲むデザート・ライオン

アフリカに生息する野生動物たちのうち、主なものは熱帯から温帯の気候帯とそれが作り出した自然環境の中生活しているわけですが、彼らから枝分かれして進化した別種、あるいは亜種(あるいはまったく同一の種)として、全く異なる環境に暮らしているものもいます。
例えば、ヒョウはかなり異なる気候帯にも順応して生息できることが知られていますが、その仲間にはイランやイスラエルなどの乾燥地帯や半砂漠地帯に生息する全く同じ種から、ユキヒョウのように標高4,000mを超える高山の低気温&低酸素の中で暮らしているものもいます。意外にネコ科の動物たちは環境適応能力が高いのか、チーター(弊社のエジプトツアーのガイドは、エジプト西部の砂漠地帯で1990年代に何度か見かけたそうです)やライオン(中央部アフリカでは密林に生息しているものもいます)、トラ(シベリアから熱帯のスマトラ島まで生息)も人間によって生息地を狭められなければ今でもかなりの広範囲に広がって生息していたであろうことが推測できます。
そんな環境に適応した種の中で、是非見てみたいと思っているのが、ナミビアの極度に乾燥したカオコランドと呼ばれる地域に暮らす、砂漠ゾウとデザート・ライオンです。いずれも亜種ではなく、同種のうち「砂漠に適応した(Desert Adapted)」個体群、あるいは群れとされているようですが、いずれも個体数が極めて少なく、綿密にリサーチを行ったうえでの保護が必要とされています。
特にデザート・ライオンは餌となる動物が少ないため、生息域に隣接する牧場の家畜を襲って捕食してしまうことから、牧場主に駆除の対象とされてしまうことも少なくないようです(国立公園などの保護区の中ではなく、私有地のため駆除を禁止する法律もありません)。

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ご存知のように、ある種の健全な保存のためには、ある程度の多様性を持った遺伝子の保存が必要になります。ある一定の血縁の個体(引き継がれてきた遺伝子も大きな差はない)ばかりを保護し、数が増えても、偏った遺伝子の特徴としてある特定の病気に弱かったりし、何かのきっかけで一気に数を減らし、絶滅に近づいてしまう可能性もあるからです。
加えて、オスの数が極めて少ないデザート・ライオンに関しては、オスを守ることが急務とされ、民間の保護団体が現在も精力的にリサーチを続けています。ですが、残念なことに少しずつ数は減っており、資金集めのために「VANISHING KINGS-LIONS OF THE NAMIB-」(消えゆく王たち-ナミブのライオンたち-)というドキュメンタリー映画も制作されました。本来彼らのテリトリーは非常に広く(狩りの対象となる動物の数が少ないため、テリトリーを広げ、テリトリー内の餌の数を一定に保つ必要があります)、遭遇もまれなはずなのですが、保護団体のリサーチ内容や報告は彼らのWEBサイトに日々詳細にアップデートされているため、観光客でもその過酷な環境に足を運ぶことさえできれば、その情報を元にかなり高い確率で遭遇することができるといわれています。

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こんな環境で暮らしているライオンたち、ご覧になりたいとは思いませんか?

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by 羽鳥
Photo from Desert Lion Conservation, Namibia.