カバをよぶ太鼓

アフリカの太鼓というとアフリカンダンスを思い出すが、
狩猟のための太鼓というものに出会った。

ボツワナとナミビア(カプリビ街道)を隔てるクワンド川流域、川での漁を主としてわずかな家畜と雑穀で細々と生きるマフウェ(Mafwe)の人たちの村にお邪魔した。
魚は町に売りに行けば現金収入になるが、丸木舟(モコロ)を操って小さな網で魚を取るだけなのでわずかなもの。放牧や農業に適した土地ではなく、モパネワーム(南部アフリカでタンパク源として一般的な蛾の幼虫)や蝉、野生のカボチャやマンゴーの採集に依存する、自給自足的に生活している人たちだ。
村を歩いて色々な生活道具を見せてもらった。一見オモチャのようなネズミ罠やマングース罠などを見せてもらい感心していると、いよいよ弓矢が登場。矢尻の先に毒を塗るという話はブッシュマンのそれと一緒だなーと思いながら、「何を獲るの?」と聞くと、「カバ」という。
そんな大物をどうやってとるのか、まして警戒心が強く日中は水に潜んでいるものを獲るのは想像が難しい。集団でうまくやるのかな、毒も凄いのかななんて考えながら、弓矢と一緒に置いてある太鼓を手に取りポコポコ叩いていると、「そうやって使うんじゃない。こうだ。」と片面に張られた皮を、外側から叩くのではなく、筒の反対側から手を中に差し入れてなにやら手を前後に動かすと、「ブオッ、ブオッ、ブオッ、ブオ~」という信じられないような音が響き渡った。
これは間違いなく、あの不気味な高笑いのようなカバの鳴き声。
これでカバを呼び寄せて矢で仕留めるのだと、村のおじさんがニヤリ。
太鼓の皮の内側には竹の棒がくっついており、濡れた手で棒をこすると摩擦音が筒の中で反響するという代物だった。
太鼓はあくまで外からの見た目であって、その正体は打楽器ではない。
では何楽器かと聞かれるとちょっと思いつかない。
とにかくこの初めてみた楽器によって、あのデカいくせに臆病なカバが縄張りを侵されたと勘違いしてすごすごと出てくる、そしてこの小さな弓矢で巨躯を倒し、皆で腹一杯食べるというドラマティックな展開を思い描いた。
「カバって美味しいの?」と聞くと、目を丸くして「そりゃあ美味しいさ。油がのってるからね」とのこと。ううむ、、食べてみたい。
大阪営業所 有冨