ンドキの森 -アフリカ最後の原生林-

著者:三谷雅純
出版:どうぶつ社
発行:1996年11月20日
コンゴ共和国にあるヌアバレ・ンドキ国立公園は、4,000㎢の面積を持つアフリカ最大の熱帯雨林地帯。アフリカ大陸で最も豊かな森と言われており、多くの野生動物が驚異的な高密度で生息しています。アフリカの最奥部ともいえる大陸中央部の森林帯は人類の介入のない「最後のエデン」とも言われてきましたが、近年、森林伐採をはじめとする資源開発により、動物たちの危機が叫ばれています。この森が冠する「ンドキ」という名は、現地の言葉で「悪霊」という意味があります。
この本に記されている記録は、「ンドキ=悪霊」しか住んでいないと信じ恐れられ、地元の森に暮らすピグミーの人々すら足を踏み入れなかったがために長い間奇跡的に残っていた「原始の森」の話です。
今から約30年前、文字通り処女地だったこの森に初めて足を踏み入れたのは1人の日本人の動物学者でした。本書は、著者の三谷雅純先生が1988年に初めて訪れた際の研究調査の記録ですが、その記録内容はもはや「探検」の域に達しています。周囲をバジエール(底なし沼)に護られて人を寄せ付けなかった「ンドキの森」、現地のピグミーの人々の協力を得て丸木舟をつくり、頭まで泥まみれになりながら蔓や板根にしがみつき「ンドキの森」の最奥部を目指します。著者がそこで体験した「ンドキ=悪霊」の正体は何だったのか?記録的な文章の行間から漂ってくる息遣いが、かえって臨場感に溢れる、これこそノンフィクションの醍醐味です。
30年近くの月日が流れ、弊社のように日本の旅行会社が現地を訪問するツアーを催行できるまでに、「ンドキ」への距離は近くなりました。当時と変わらない姿がそこにあるわけではないかもしれませんが、今でもここを訪問することはある意味で「究極」のアフリカ旅行の1つかもしれません。
冒頭、本書の紹介に著者自らの言葉として、「これは原始の森にヒトの手垢を持ち込んだ張本人「ミタニ」の躍動と懺悔の手記である。」とあります。その言葉と対になるようにして、本書の最終章に、著者がある研究者に言われた言葉が記されています。
「ミタニ、ンドキの森がそれほどすばらしいところなら、そのすばらしさを声高に喋らないことだ。声高に喋れば、必ず泥まみれの森になる」。言葉は小さな針となって、今も著者の体内に残ったままだと記されています。
アフリカを「観光」することで職を得ている私達も避けては通れない言葉です。ずっと紹介したいと思い続けていたお勧めの一冊です。
by 生野