マリの昔話

昔昔、マリの田舎にはいたるところに川や池があってたくさんのワニが棲んでいました。ところが雨が降らなくなって数年のうちにほとんどの川や池が干上がってしまいました。

途方にくれていたワニのところに村人が通りがかりました。
村人「ワニさん、どうしたんだい?」
ワニ「水が全く無くなってしまって、どうしていいかわからないんだ。」
村人「可愛そうに。それならこの先の川まで連れて行ってあげてもいいよ。ただし、危ないからその大きい口と尻尾はヒモで縛るらせてもらうよ」
ワニは同意して、口と尻尾をヒモで縛られ、村人はよっこらしょと
ワニを頭にかついで、川まで運びました。
川に到着すると、ワニを川岸で下ろそうとします。
するとワニは、「おいおい。水のあるところまで連れて行っておくれよ。」と言うので
水の中に少し進み、ワニを下ろそうとすると、「ここじゃまだ水が十分じゃないよ。もう少し深いところまで連れて行っておくれ」。
素直な村人は自分の体が上半身まで浸かるところまでワニを運んであげました。そこで村人がヒモを解いたとたん、ワニが言いました。
「ずいぶんと長いこと、水のないところにいて何も食べてなくてお腹が空いて仕方ないんだ。どうか食べさせておくれよ」
村人は怒って、そこでワニと議論になりました。
そこへ水を飲みにやってきたウサギが話しかけました。
これまでの経緯をウサギに話したところ、ウサギが言いました。
「うーん、人が自分より大きなワニをこんなところまで運んできたなんてとうてい考えられない。それを証明するために、もう一度運んでいるところ見せてくれないか」
ワニも村人も同意し、ワニの口と尻尾にもう一度ヒモを縛り、同じ場所まで村人はワニを運びました。
到着すると、ウサギは村人とワニに言いました。
「さあ、これでおしまい。村人よ、ワニを大切な食糧として村に持って帰るがいい。ワニよ、お前は助けてもらった恩を忘れて、村人を食べようとした罰だ。」
ヒモを縛られて動けなくなったワニは、もうどうすることも出来ませんでした。村人はワニは食べましたが、これ以降ウサギを食べることは一切なかったそうです。
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