7月12日から9月19日までの約2カ月間、撮影のために南部アフリカを訪れた。今回は約1万5千キロを車で走り、8月一杯をカラハリ砂漠で過ごした他、クルーガー国立公園やケープタウン、ナマクワランド、リヒタースフェルト国立公園といった場所で撮影を行った。
そんな中でも特に面白かったのが、以前この連載でも紹介したボツワナのマシャトゥ動物保護区だ。2泊3日の短い滞在だったが、非常に密度が濃く、大変満足のいく結果となった。ヒョウの多さも相変わらずだったが(2日間で計4頭のヒョウに出会った)、何と言っても今回はアフリカゾウを、手を伸ばせば触れるほどの至近距離から観察・撮影できたことが印象に残っている。あの巨大な動物たちを見上げながら広角レンズで撮影するというのは、私にとって全く初めての体験で、実に新鮮だった。
このような撮影が可能になったのは、今年新たにエレファント・ハイド(Elephant Hide)と呼ばれる撮影小屋がオープンしたことによる。半地下になっている小屋の中に座ると、目線が地面と同じ高さにくる設計になっており、そこから水を飲みにやってきた動物たちを撮影できるのだ。この施設は、私の10年来の友人でもあるシェム・コンピオン(Shem Compion)という南ア人写真家の発案によって建設された。彼は、シーフォー・イメージズ・アンド・サファリズ(C4 Images & Safaris)という、写真サファリ専門の会社を経営しており、他にはない写真撮影の機会をクライアントに提供すべくマシャトゥ動物保護区との交渉を重ねた末、エレファント・ハイドの実現に至った。
実は、私もシーフォー・イメージズ・アンド・サファリズのガイドを務めており、マシャトゥを訪れたのも日本から来た友人夫婦をクライアントとして案内するためであった。我々がエレファント・ハイドを利用したのは7月27日の朝7時から3時間程度だけだったが、アフリカゾウの群れ以外にもグレータークドゥー、インパラ、チャクマヒヒ、10種以上の鳥などがやってきた。ライオンやヒョウ、チーターなどがここから撮影できるようになるのも時間の問題だろうと言われている。
マシャトゥのエレファント・ハイドは、野生動物を撮る者にとって、正に夢のようなセッティングであり、今後の展開が実に楽しみだ。
撮影データ:ニコンD7000、 AF-S 24-70mm f2.8G、1/1600 f9 ISO1600
写真・文 山形 豪さん
やまがた ごう 1974年、群馬県生まれ。幼少期から中学にかけて、グアテマラやブルキナファソ、トーゴなどで過ごす。高校卒業後、タンザニアで2年半を過ごし、野生動物写真を撮り始める。英イーストアングリア大学開発学部卒業後、帰国しフリーの写真家に。南部アフリカを頻繁に訪れ、大自然の姿を写真に収め続けている。www.goyamagata.com